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第三十四話 海竜レヴィアターノ

みっつー!!

やり遂げたぞー!!

三回更新じゃー!!\(◎o◎)/!


 俺たちは城へ〝招かれた〟。

 丁寧な態度を見れば、公王が俺たちに対して敵対する気がないことはよくわかる。ま、俺たちに何かすれば詰みとなるのはこの国のほうだからな。海竜に加えて帝国と問題を起こしたら間違いなく詰む。

 それならば俺たちを丁重に迎え、海竜に対して協力してくれるように説得するほうがいい。

 大きさにもよるが大抵、竜はS級扱いだ。冒険者ギルドが対応するならば、S級やAAA級冒険者がパーティーを組むか、SS級冒険者に依頼が回る。

 軍で対応するならば相当な準備と兵士が必要になるだろう。

 少なくともアルバトロ公国だけで討伐するのはほぼ不可能だ。


「こちらです」

「ありがとう」


 道案内をしてくれた騎士に礼を言いつつ、俺は玉座の間に入る。

 すると公王は玉座にはいなかった。赤い絨毯の先で深く頭を下げていたのだ。

 その周りにはおそらく重臣だろうと思われる人たちも頭を下げていた。


「お初にお目にかかります。レオナルト皇子殿下。アルバトロ公王、ドナート・ディ・アルバトロと申します。此度の一件、すべて我が国の浅慮ゆえに起きたこと。巻き込んでしまい申し訳ございませんでした。そして、我が子供たちを含め多くの生存者を助けていただいたこと、深く深く感謝申し上げます。ありがとうございました……」

「レオナルト皇子に感謝申し上げます!!」


 公王に続いて重臣たちも口々に感謝の言葉を発した。

 それは稀に見るほど異常な光景だった。

 いくら国の規模に差があれど、相手は王で俺は皇子だ。基本は相手が上で、俺が下。状況にもよるがあっても対等くらいしかありえない。

 同じ位置に降りてきて頭を下げるなんてどうかしている。

 さすがに固まってしまった俺はマルクを見るが、マルクはマルクで固まっていた。

 どうにか膝をついているが、自分はどうすればいいのか迷っていると言った感じだ。完全に自分のことで精一杯だな。

 仕方ないと思いつつ、俺は公王の下まで歩いていき、両手を掴んで立たせる。

 四十代中盤ほどの公王は、エヴァやジュリオ同様、色素の薄い茶色の髪と緑の瞳を持ち、顔立ちはジュリオよりだ。

 優し気ではあるが、細すぎる印象があるためやや不健康そうに見えなくもない。

 そんな公王に俺は膝をついて喋りかけた。


「公王陛下。お初にお目にかかります。帝国第八皇子、レオナルト・レークス・アードラーと申します。此度の一件でお騒がせしたこと深くお詫び申し上げます。また、お礼は不要でございます。目の前に漂流者がいたので助けただけです。我が帝国の船が沈めば、貴国は同じことをしたでしょう。あなた方は海の怖さをよく知っているからです」

「し、しかし!」

「ですが、義理堅い貴国のこと。それだけでは納得はされないでしょう。ですので我が船に食料と水を頂けないでしょうか。あとは少しばかりの財宝があれば文句はいいません。我が船はロンディネに差し入れるはずだった財宝を海に投棄してしまいましたので」

「な、なんと! そこまでしてくださったのか! もちろんだ! 言われるまでもない! 我が国がすべて負担しよう!」

「ありがとうございます。そしてもう一つ。貴国の抱える悩みをお話しいただきたい。この問題、長引けばおそらく大陸全土に波及いたします」

「……承知した。もはやあなたも無関係ではないのだ。知っておいてもらわねばなるまい」


 俺はそういう公王を玉座に促す。

 頷いた公王は玉座に登り腰をかけると沈痛な表情で語り始めた。


「お気づきだろうが我が海域には……海竜がいる」

「薄々は感じていました。あまりにも不自然な嵐だったので、我が船の船長も噂に聞く海竜では、と」

「そうか……あの竜の名は〝レヴィアターノ〟。二百年以上も前から眠っていた竜なのだ」

「二百年? 竜の休眠にしてはあまりに長いですね」

「休眠したのではない。眠らせたのだ。古代の魔導具を使ってな。あれを」


 そう言って公王は侍女に何かを持ってこさせた。

 そして侍女は壊れた杖を持ってきた。

 根本から完全に折れている。造り自体はあまり変わった点はないが、先端には巨大な宝玉がついていた。おそらく魔力を貯めこんでいた宝玉だ。今でも強い魔力を感じる。しかし、それでも半分程度のようで元の大きさを考えればとんでもない魔導具だったんだろう。


「二百年前、この南部は統一国家によって統治されていた。しかし、海竜レヴィアターノが活動期に入って周辺を荒らしまわったため、それと戦うこととなった。結果、どうにかこの魔導具を使って眠りにつかせたものの、王家は衰退しそれから戦国時代となってしまったのだ。我がアルバトロ公国は元々、この杖の守護を任された家が始祖だ。レヴィアターノの伝承もロンディネよりは正確に伝えられている」

「なるほど。それでその杖が壊れたので、急いで調査をしたというわけですね?」

「そのとおりだ。巻き込んでしまい誠に申し訳ない。嵐に巻き込まれたということは、あなた方の船が沈没していてもおかしくはない状況だったのだろう……すぐに冒険者ギルドに連絡するべきだった」

「もう済んだことです。それに竜の討伐となれば法外な報酬を支払わねばなりません。しかも大陸全土に情報が回ってしまいます。海洋貿易を中心とする貴国が独自で調査したことを僕は責めることなどできません」

「……ご理解に感謝する」


 そこで説明は終わる。

 状況は理解した。次は対策だ。

 どうするべきか。冒険者ギルドに連絡し、対応するにしても即対応というわけにもいかない。竜と戦える冒険者なんて大陸全土でも一握りだからだ。

 まぁ俺もその一人ではあるんだが、基本的に帝都を動かないシルバーがいきなりここに現れるのは不自然すぎる。なにか理由が必要になるだろうな。


「公王陛下はどのような対応手段をお考えですか?」

「……冒険者ギルドに頼るしかないと思っている。すぐに対応はしてくれないだろうが……」

「それしかないでしょう。我が帝国もお力をお貸ししたいところですが、竜が相手でしかも海となると艦隊を派遣して終わりというわけにもいきません。モンスター退治のプロに任せるべきかと。ただ、一つ提案があります」

「教えてほしい。どのような提案だ?」

「ロンディネ公国と対竜同盟をお結びになるべきです。向こうも事情を知れば争っている場合ではないと察するでしょう」

「それは私も考えたが……ロンディネとは長年争っている。すぐに同盟を締結できるような国交はないのだ」

「ですからご提案と申し上げました。その同盟案を僕が持っていきましょう。帝国の全権大使が間に入ったとなれば向こうも無下にはできないはずです」


 俺の提案に公王は少し狼狽した。

 あまりに自分たちに都合のいい提案だったからだ。

 しばし考えたあと、公王は無難な返答をした。


「大事ゆえ重臣と相談してからでもよいだろうか?」

「もちろんでございます。ですが、なるべく急がれたほうがよいでしょう。事情を知らないロンディネですが、今は貴国が混乱しているという漠然とした情報は掴んでいるはず。攻め入ってくるやもしれません」

「たしかに……」


 まぁそうはいいつつもそれはないと踏んでいた。

 向こうにはレオがいる。たとえ俺のフリをしていたとしても、傍にはエルナがいる。

 どうにか誤魔化しつつ、ロンディネの動きを牽制するはずだ。到着しない以上は俺がアルバトロ公国にいると考えるだろうしな。

 とはいえ、時間が空くのはこっちとしても助かる。

 考える時間もほしいし、あれなら帝都にいくのもありだとすら思っている。ただ、問題は行くだけで二度。行き帰りで四度も転移魔法を使わなきゃ駄目だという点だ。行く瞬間は見極めないといけない。

 そう思いつつ、俺は一礼して玉座の間から去ったのだった。

 

 

 

というわけで海竜回でした。

これからうまくアルが立ちまわっていくことになるかと思います。思い通りにいくかはさておき。


ちょっとさすがに疲れたので活動報告はまた今度にします。

感想返しも今日は多いので笑

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