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第三百七話 後方かく乱

これで第八部終了!

お知らせが後書きにあります!

見てね!( *´艸`)



「それじゃあ行くぞ」


 そう言って俺は三人のSS級冒険者たちと転移した。

 一人一人、目的地に送っていたら面倒すぎるため、まとめて送ることになった。

 まずはリナレスだ。


「ついたぞ」

「あー、いい空気だわ。肌や髪が痛んで大変だったのよね」

「場所が変わった程度で痛むならそれは年だろ」

「ジャック~? このまま王国まで吹き飛ばされたいのかしら?」


 リナレスに対して年は禁句だ。

 エヴォリューション・スライムと対峙したときより、よっぽど殺気に満ちた笑顔をジャックに向けている。

 さすがのジャックもまずいと思ったのか、リナレスから距離を取る。


「早く転移門を開け! シルバー!」

「あらあら? もう行くの? 私とお茶していきましょう?」

「お断りだ! クソジジイも何とか言え!」

「この酒は美味いのぉ。絶品じゃぞ! シルバー」

「それは良かった」


 ギルド本部に帰ってからも報酬なしで酒が飲めないことに落ち込んでいたエゴールには、俺から超高級な酒をプレゼントしていた。

 おかげでジャックを前にしてもご機嫌で、ずっとそれをチビチビと飲んでいる。

 駄目だ、こいつは、というブーメランな視線をエゴールに向けたジャックは、威圧感たっぷりに近づくリナレスから逃げ始める。


「はぁ……」


 ここで喧嘩が起きても困るため、俺は転移門を開く。


「でかした!」


 それを見て、ジャックは水に飛び込むように転移門へ飛び込んだ。

 やはり正真正銘の馬鹿か。転移先は川や海じゃないというのに。


「今度あったら鉄拳制裁ね、ジャックは」

「次に会うのはいつになるかのぉ。わしらが揃うほど不吉なこともあるまいて」

「……それもそうね。全員が揃うことがもうないことを願うわ」

「それはそれで寂しいがのぉ」


 そう言ってエゴールも転移門へ入る。

 その後に続こうとして、リナレスに呼び止められた。


「シルバー」

「何かな?」

「あまり帝国に肩入れするのはよしなさい」

「……今回の帝位争いはあまりにもおかしい。きっと深い闇がある」

「それはあなたがやるべき仕事なのかしら?」

「どうだろうな。だが、もう片足を突っ込んでしまった。今更引き抜くことはできない」

「……そう。ならせいぜい気をつけなさい」

「助言に感謝しよう。それと……今回は助かった。色々とありがとう」


 俺が素直に礼を言うとリナレスは苦笑した。

 そして俺は転移門に入る。

 転移した先はドワーフの里だった。

 そこでは。


「わしの家をぐちゃぐちゃにしたあげく酒を飲むんじゃないわい!」

「ケチケチしてんじゃねぇ!」


 エゴールとジャックが酒をめぐって喧嘩していた。

 その騒ぎを聞きつけ、ソニアが顔を出す。


「あ、お帰り! 用事は終わったの?」

「なんとかな。エゴール翁は君に返すとしよう」

「人を物みたいに言うでないわい! わしが守っておるんじゃぞ!」

「あー! またお酒飲んでる! 没収!!」

「あーー!!??」


 チビチビと飲んでいた超高級酒をエゴールは奪われ、悲痛な叫びをあげた。

 その様子を見て、ジャックが驚愕の表情を浮かべる。


「な、なんて恐ろしい嬢ちゃんだ……」

「一杯! 一杯だけじゃ!」

「駄目! そう言って全部飲むじゃない! お爺ちゃんなんだから体に悪いことは控えないと!」

「お酒は体にいいんじゃぁ~……」

「飲みすぎたら薬も毒になるの!」


 そう言ってソニアはお酒を高い棚にしまう。

 エゴールも取ろうと思えば取れるんだろうが、それをしたらきついお叱りを受けるんだろう。


「いきなり帰って来るから何にも用意してないんだよね。今、王様呼んでくるから」

「結構だ。すぐに発つ」

「そうなの? お父さんも今度は会いたいって言ってたんだけど……」

「それは次回にしよう。エゴール翁を頼む」

「うん、任せて」


 ソニアはそう言うと笑顔を浮かべる。

 裏表のない笑顔だ。ここでの生活が幸せなんだろう。

 いいことだ。

 その笑顔を見れば、自分たちの行動が少しは意味あるように思える。

 こういう笑顔をたくさん作り、守る。それがレオの理想だ。


「どうかした?」

「いや、なんでもない。では、失礼する」


 そう言って俺は転移門を開く。

 ジャックが入り、その後に俺が続く。

 ついた場所は酒の街、バイユー。

 ではなかった。


「ああん? どこだ? ここは?」

「藩国の東部国境付近だな」

「はぁっ!?」


 ついた場所は藩国の東部国境付近の森の中。

 ジャックからすればふざけるなといわんばかりの場所だろうな。


「どういうことだ? てめぇも俺に酒を断たせたいのか?」

「これは報酬だ」

「なにぃ? これが報酬だってのか!? 俺はてめぇに捜しモノに付き合えって……」


 言いながらジャックがまさかという表情を浮かべる。

 それに対して俺は一つ頷いた。


「お前の娘かどうかはわからない。しかし、魔弓を使う十代後半の少女を知っている。それも凄腕だ。お前の師匠が育てたというなら納得できる」

「ど、どこだ!? どこにいる!? いや、なんで藩国にいるんだ!? こんな治安の悪い国に!」

「それは知らん。ただ、彼女はこの国で少々、危険なことをしている」

「……言え。俺の娘かもしれない少女は何をしている?」

「義賊だ。名は朱月の騎士ヴァーミリオン。名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃないか?」

「名前だけはな……義賊? 俺の娘が?」


 信じられないといった様子でジャックは呟く。

 そして近くにあった大きめの岩に座り込む。


「どうした? 探さないのか?」

「……もしもその義賊が娘だとしたら……場所を探るのはまずい……」

「お前なら見つけられるかもしれないが、一度見つかると隠れるのは苦労するからな」


 ミアの敵である藩国の貴族たちはまったく正体をつかめていない。

 しかし、ジャックが細かい情報から居場所を掴めば、貴族に気づかれる可能性が出てくる。

 とんでもなく小さな可能性かもしれない。

 しかし、その小さな可能性であっても、ジャックは娘を危険には晒したくはないんだろう。

 困った奴だ。


「朱月の騎士は藩国の貴族や魔奥公団グリモワールを敵としている。奴らを追えば出会えるかもしれないぞ?」

「……犯罪組織を潰すのは問題にはならないよな?」

「そうだな。しかし、貴族を相手にするのはまずいぞ? この国には自浄作用はない。貴族の不正を暴いても、睨まれるだけだ。それがわかっているから義賊という方法を取っているんだろうしな」

「ちっ……遠くからドーンと一発撃ちこんで終われれば楽なんだが……」

「……」

「なんだ?」

「いや、なんでもない」


 たぶん、二人には血のつながりがある。

 思考とか言動が一緒だ。

 そんなジャックに俺は取引を持ち掛けた。


「ジャック。これは取引だ」

「……なんだ?」

「お前の娘かもしれない朱月の騎士ヴァーミリオン。お前は彼女を探し、できれば彼女を助けたい。そうだな?」

「当たり前だ。義賊をやるのはいい。俺の娘が決めたことだからな。だが、危険なのには変わりない。できれば終わらせたい」

「そうだろうな。だが、貴族に手を出すのはまずい。下手すれば藩国から追放されかねんからな」

「ああ、この国ならやりかねん」

「そこで取引だ。上手くバレないように貴族たちを攻撃しろ。立ち直れないくらい打撃を与え続けてほしい。とにかくこの国の上層部を混乱させてほしい」


 俺の言葉にジャックは怪訝そうな顔を浮かべる。

 しかし、俺はそれを気にせずに続ける。


「そうしてくれるなら俺が帝国の皇族に掛け合おう。この国に逆侵攻をかけ、占領した場合は真っ先に腐敗貴族の処罰に動くように、と」

「……つまり俺に後方かく乱をしろってか?」

「そのとおりだ。帝国は現在、内乱状態だが、実質的には北部と西部から侵攻されているようなものだ。この状況を打開するためには、どちらかを撃退する必要がある。そして皇族の面子にかけて確実にゴードン皇子を討ちにいくだろう。そのとき、厄介なのは連合王国とゴードン皇子陣営を繋ぐ藩国だ。ここが混乱すると連合王国も身動きがとりづらくなる」

「内乱が終わったとして、帝国が逆侵攻をかけるという保証は?」

「内乱に乗じた敵国を帝国国民は許さん。その怒りの発散場所として、藩国はうってつけだ。なにせ皇太子まで殺しているからな。皇帝も今回は許さんだろう」

「なるほど……」


 俺がジャックに求めるのは後方かく乱。

 藩国の貴族は腐敗しているが、それゆえに自分たちが一番大事だ。

 国のために行動する場面であっても、自分たちの不利益は許容しないだろう。

 ジャックが国内で暴れまわれば、そちらに注力するのは目に見えている。そうなれば連合王国とゴードンとの間に壁ができる。

 スムーズな兵や兵糧の輸送ができなくなれば、ゴードンの勢力は保てない。

 一方、俺がジャックに与えるのはミアの義賊からの解放。

 藩国がまともな場所になれば、ミアは義賊をする必要はない。これは多少手間ではあるが、ジャックの協力を得られるなら安いもんだろう。


「……わかった。その取引、乗った」

「やり方は任せる。しかし、正体がバレるのはやめろ。追放されて、それで終わりだ。あと正体が万が一バレたとしても、暴れるのはやめろ。そしたら俺が間違いなくお前の討伐に駆り出される」

「注文の多い野郎だ……だが、いいだろう。やってやる」


 そう言うとジャックはそのまま藩国のほうへ歩いていく。

 それを見送り、俺はふぅと一息つく。

 ひとまず後方かく乱の一手は打てたか。あとは国内の戦力で対処するしかないだろうな。

 そんなことを思いつつ、俺は帝都へ転移する。


「お帰りなさいませ」

「ああ、ただいま。状況は?」


 自分の部屋に転移した俺をセバスがいつも通り出迎える。

 まだ一週間も経ってないのに、ずいぶんと離れてたような気がする。

 しかし、そんな懐かしい気分はセバスの一言で吹き飛んだ。


「ウィリアム王子が率いる軍勢が、包囲網の一角を占めていた北部諸侯の軍を敗走させました。これによってレオナルト様が築いていた戦線が崩れ去り、北部の戦況は反乱軍優勢となっています」

「やっぱり竜王子は手ごわいな。しゃーない。俺が援軍にいこう」

「かしこまりました。陛下は玉座の間にて緊急会議を開いております」

「好都合だ。行くぞ、ついてこい。次は――戦場で暗躍だ」


 そう言って俺は皇族のマントを羽織ると玉座の間に向かったのだった。

というわけで、第八部終了となります!

読んでくださり、ありがとうございましたm(__)m



正直、短い! すみません! 第一部並みに短いですね(;^ω^)

というのも、本当はゴードンとの戦いまでやってしまおうかと思ってたんですが、そうすると異常に長いので今回は冒険者パートと皇子パートで二つに分けました!(・ω・)ノ

第九部は四月終わりくらいから開始ですm(__)m

ちょっとの間、また休載ですm(__)m

なるべく面白いものにするので許してください( ;∀;)

そして!!!!!!!!!!



出涸らし皇子の第三巻が五月一日に発売されます!

さらにコミカライズ第一巻も同時発売です!(/・ω・)/

予約は四月一日からスタートなので、ぜひチェックしてください!

特典などの詳しい情報はまたツイッターや活動報告で出すので、定期的に見ていてくださいね( *´艸`)


以上! タンバでした!


あと、今日誕生日ですm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] たぶんミアの似顔絵かなにか見せたんだろうけど、その描写がなかったから「ん?」ってなった(。。 書籍版とか漫画になっときには解決してそうな話だけど(ωー
[気になる点] お父さん娘の名前知らないの? 〉最後に見た小さな娘の姿は、任務に向かうジャックに泣きながら手を伸ばす姿だった。 (第三百三話 ジャック より) ↑生まれてから全く会ってない訳じゃないで…
[良い点] メッチャ面白い。 誤字も無くて凄く読みやすい。 [一言] 面白いシルバー編が終わってアル編になっちゃうと、またレオの○○みたいな理想論ワッショイワッショイになるかと思うと読むのがしんどい。…
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