第二百十七話 いつもやっていること
今日で第六部は終わりです。
またしばらく期間を空けてから第七部に移りますm(__)m
レティシアが拉致された当日の夕方。
買い物を終えたミアはメイド服に身を包んでいた。
「もうちょっと動きやすい服がよかったですわ……」
「それでも動きやすいように設計されているんだがな」
「まぁ文句を言っても仕方ありませんですわ。これで頑張りますですわ」
「ああ、頑張ってくれ。ついでに言葉遣いも学べ」
「言葉遣い……?」
何のことかわからないって表情のミアに俺はため息を吐く。
いまだに自分の喋り方が淑女の喋り方だと信じているらしいな。
「フィーネは君みたいな喋り方はしない」
「そんなはずありませんですわ! きっとですわ口調ですわ!」
「ややこしいな……まぁ会ってみるといいさ」
そう俺が言うとミアは楽しみですわとつぶやく。
ショックを受けないといいんだが、お爺さんをだいぶ信用しているみたいだし。
そんなことを思いつつ、俺は自分の部屋の扉を開ける。
すると中ではフィーネが待っていた。
「お帰りなさいませ。アル様」
「ああ、ただいま」
「あわわわわ……!! 本物ですわ! 綺麗すぎて神々しいですわ!? 眩しくて直視できませんですわ!」
「一応言っておくが、身分だと俺のほうが上なんだが?」
「皇子はあれですわ。覇気がありませんから、あー!? 痛いですわ! 耳を引っ張らないでくださいですわ!」
どうも馬鹿にされている気がしたので、俺はミアの耳を引っ張る。
これからメイドとして城にいるわけだしな。上下関係は叩き込まなければ。
「よく覚えておけ。今はメイドなんだから嘘でも相手の喜びそうなことを言え」
「わ、わかりましたですわ……背が高いですわね」
「それで褒めてるつもりか?」
「私より幾分か高いですわ! 嘘じゃないですわ!」
また耳を引っ張ろうとしたら、ミアがヒョイっと距離をとる。
俺とミアの背はあまり変わらない。そんな相手に背が高いと言われても嫌味にしか聞こえない。
まったく、これじゃ一発で普通のメイドじゃないってバレるぞ。
そんな風に思っていると、後ろでフィーネがクスクスと笑い始めた。
「そんなにおかしいか?」
「ええ、とても。初めまして、フィーネ・フォン・クライネルトと申します。よろしければお名前を伺ってもよろしいですか?」
「……で」
「で?」
「ですわじゃありませんですわ!!!!????」
ガーンとショックを受けるミアは、口から魂が抜けていくのではないかと思うほど放心状態になった。
あーあ、やっぱりショックを受けたか。
まぁ自分が信じてきたモノが崩れたわけだしな。
「な、なにか気に障ることをしてしまったのでしょうか……!?」
「いや、勘違いに気づかされただけだ」
「勘違い?」
「淑女はですわをつけて話すとお爺さんに教えられたらしい」
「ですわですか……私は使いませんね」
「ガーン……!」
追い打ちをかけられたミアはその場で崩れ去ってしまった。
そして打ちひしがれた様子でつぶやく。
「し、真の淑女の喋り方と言ったのに……お爺様の嘘つきーですわ!」
「まぁ勘違いは誰にでもあるしな。これを機になおしてみろ」
「え? なおしてしまうんですか? とても可愛らしい喋り方だと思うのですが……残念です」
「可愛らしい? 聞きにくくないか?」
「そうですか? 私は気になりませんけど?」
そう言ってフィーネはニッコリと笑う。
機嫌を取ろうとしているわけではない。本当にそう思っているといった様子だ。
さすがフィーネというべきか。
そんなフィーネの言葉を聞き、ミアが立ち上がる。
そしてフィーネの前まで行き、膝をついてからフィーネの手を握った。
「私の名前はミア! 一生ついていきますですわ! フィーネ様!」
「一生は大げさですけど、どうぞよろしくお願いします。ミアさん」
「はい! 私の弓で必ずお守りしますですわ!」
さっきその弓と武は俺に捧げられたはずだが、どうも短時間で忠誠の対象が変わったらしい。
まぁどうせフィーネの傍にいてもらうわけだし、いいか。
忠誠がどこにあろうと働いてくれるなら別にいい。
「というわけで、今日からミアが君の護衛だ。フィーネ」
「はい。ありがとうございます。ですが……アル様の護衛はどうされるんです?」
「まぁいろいろ考えるさ。とりあえず君の安全だけは確保しないとなんでな。ミア、フィーネからは極力離れるな。最悪の場合、まだ城にダークエルフが残ってる可能性すらある」
さすがに低い確率ではある。
ダークエルフは五百年前の魔王との大戦に参加した種族だ。そして遺伝しない。つまり今いるのは当時の生き残りであり、その危険性から各国と冒険者ギルドからは指名手配されていた。
つまり数が少ないのだ。今回、投入された数はダークエルフからすればかなり多いと言えるだろう。さらに城の内部に仕込むというのは考えづらい。
だが警戒はすべきでもある。なにせ一度出し抜かれているからな。
「了解ですわ!」
「フィーネ。上手くミアを使ってやってくれ」
「どういう意味ですの!?」
「そのままだ。今回は遠くからドーンってわけにはいかない。頭が必要だ」
「私もその方面はあまり自信がないんですが……」
シュンとフィーネが小さくなる。
まぁセバスとかリンフィアと比べると不安だらけではあるが、それはつまり警戒が薄いということにもつながる。
今、大事なのはそういうところだ。
「なんとかそこはフォローする」
そう俺が言ったとき、部屋の扉がノックされた。
俺が返事をすると扉が開く。
そこにいたのはアロイスだった。
「アルノルト殿下。お呼びと聞き参上いたしました」
「ああ、悪いな。アロイス」
アロイスはずっと城に留まり、いろんな人に師事していた。
その成果は出ているらしく、近衛騎士の一人がアロイスの剣技を褒めていた。子供とは思えないほど冷静な剣技だとか。
「失礼します。お久しぶりです。フィーネ様、それと……」
「ミアと申しますですわ。帝国軍一万を退けたゲルスの英雄にお会いできて光栄ですわ」
「よしてください。僕は何もしてませんから。ただ、その風評に恥じないように頑張っているつもりではありますが……その努力の成果をお役立てする機会ですか? アルノルト殿下」
「まぁそんなところだな。申し訳ないが信用できる奴が少なくてな。今の城は例えるなら魔境だ。裏で誰と誰が手を組んでいるのかまったくわからん。予想できる者もいるが、予想できない者もきっと敵にいる」
「敵ですか……それは帝位争いの敵という意味ですか?」
アロイスが確認といった様子で問いかけてくる。
アロイスは馬鹿じゃない。きっとわかっているんだろう。しかし俺の口から言わせて確かめたいと思ったんだ。
「違う。帝国の敵だ。聖女が拉致された時点で城の中に裏切り者がいるのは簡単に予想できる。そして悔しいがそいつらを完全に特定することはできていないし、証拠もない。きっと俺たちは後手に回らされる」
「そのために備えると?」
「ああ、そうだ。俺が動かせる範囲で完全に信用できるのはこの場にいる者だけだ。もちろん城の外や俺では動かせない人物の中には信用できる者もいるが、事前に備えられるのはこの場の者だけになる」
レオの側近たちも信用という点ではできるだろうが、俺に完全に従うかは怪しい。彼らのトップはレオであり、多くの者が俺を疎ましく思っているからな。
そうなると個人的な信用に頼るしかない。
「光栄です。殿下が僕を信用してくれたのは我がジンメル伯爵家の誇りとなりましょう」
「そんなもんを誇りにしないでも、もっと大きな誇りをお前はいずれ掴むさ。そのためにも帝国を傾けるわけにはいかない。父上の傍には宰相がおり、帝国には有能な臣下が多数いる。しかし彼らにも手が届かない場所が出てくる」
立場に縛られず、比較的自由に行動できる者が必要だ。
そういう立場の人間がいない以上、俺がそれをやるしかない。
「まぁ結局、いつもどおりのことをするってことなんだがな」
「確かにそうですね。アル様がいつもやっていることをこの場の皆さんと一緒にやる。そういうことですね?」
「そういうことだ。悪いが働いてもらうぞ。人手不足なんでな」
そう俺が告げるとフィーネとアロイスが同時に頷いた。
しかしミアだけが首を傾げていた。
「あの~……いつもやっていることっていうのは何なんでしょうかですわ?」
そのミアの質問に俺は苦笑する。
たしかにミアにはわからんか。見てはいても説明はしていないからな。
だから俺はニヤリと笑って告げた。
「――暗躍さ」
俺の言葉を聞き、ミアはああなるほどといった表情を浮かべる。
祭りは明日が最終日。動くなら明日だろうか。それとも要人が帰るタイミングだろうか。
まぁどうであれ、裏から阻止するまでだ。
国を裏切って好き勝手やれると思うなよ?
その報いは必ず受けさせてやる。
そう決意しながら俺は今後のことを話し始めたのだった。
というわけで前書きにも書きましたが第六部は終わりです。
今回は書籍第一巻が発売されたおかげで、PVもユニークも最高記録を出せましたし、一千万ユニークも今日で達成できました!(^^)!
本当は第七部も続けて書きたいんですが、右手首に爆弾を抱えているので適度に休まないと病院通いになりかねないのですみませんm(__)m
また休息期間にプロットを練って、一気に更新というパターンになると思います。間を開けるのは申し訳ありませんがご理解ください。
それとあんまりこういうお願いは好きではないんですが、第一巻が好評発売中です。
買ってくださると嬉しいですが、そこまでしなくてもいいので口コミで宣伝をしてくださると嬉しいです('ω')ノ
口コミは最高の宣伝なので(/・ω・)/
ではお付き合いくださりありがとうございました。
第七部はきっとカッコいいアルが見られると思うので、お待ちいただければと思います。
タンバでした。




