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第百六十二話 S級冒険者たち

金曜日の18時に活動報告でアンケートの結果発表と、キャラデザインの公開を行います。

最初はもちろん主人公からですね笑



 

 



「なかなか有望そうな面子を呼んでるじゃないか」

「そのようですな」


 セバスが入手してきたS級冒険者のリストを見ながら俺はつぶやく。

 父上と密約を結んだため、シルバーとしての心配はなくなった。無事に計画が進めば問題ないし、危険だと判断すれば介入するまでのこと。

 それで問題になったとしても、帝国がクライドの後ろ盾になって事を収めるだろう。

 正直、その展開がもっとも望ましいが。


「この面子で失敗するっていうのを期待するのは不謹慎か」

「有望なS級冒険者ばかりですからな。これで失敗するとなるとモンスターの危険度は跳ね上がります」


 セバスの言葉に頷き、俺はリストの最上段に書かれているS級冒険者の欄を見る。

 今回、ギルドが帝国に招致した冒険者たちのうち、単独でS級冒険者認定されているのは二人だ。


「ブルース・ターラント。北方のイーグレット連合王国で活躍する氷の魔導師か。最近、S級に上がったばかりだってのに働き者だな」

「出世頭ですからな。まだ二十代前半の若者でありながら、トントン拍子でランクを上げています。紳士的な振る舞いと端正な顔立ちも相まって、〝氷結の貴公子〟と呼ばれて連合王国でも人気があります」

「ギルドが担ぎ上げたい筆頭候補だろうな。いい子ちゃんに決まってる」

「もちろん実力も兼ね備えています。いくつもの賞金首モンスターを討伐して今の地位にいるわけですし」

「魔導師が単独でS級冒険者となっただけで、その実力はうかがえる。だけどここで打ち止めだろうな。現代魔法だけじゃ威力不足だ」

「さすがに手厳しいですな」

「後輩には厳しくいかないとな。S級とSS級はランク以上の差がある。相手をするモンスターの桁が違う。実力が足りなければ死ぬだけだ」


 そう言って俺はブルースの下に書かれている名前を見る。

 直接面識はないが、よく噂を聞く奴だ。悪い方面での噂だが。


「イグナートも呼んだのか。本末転倒だな。現時点ですらギルドの言うことを聞かない問題児だぞ?」

「皇国を拠点とする炎の魔剣士ですな。周囲の被害を無視し、ひたすら暴れる狂戦士というのがよく聞く噂ですが、実際のところはどうでしょうな」

「もっとひどいに決まってる。実力があるからギルドがもみ消している一件は一つや二つじゃないはずだ」


 言ったあとに俺は盛大にため息を吐く。

 面倒な奴を呼んでくれたもんだ。

 ブルースは性格面での問題はない。しかしイグナートは違う。最悪、イグナートのせいで状況が悪化する可能性すらある。

 実力がある分、性質が悪い。


「ギルドがコントロールできるといいんだがな」

「あまり期待はできませんな」

「そうだな。ここはほかのS級冒険者に期待するとしようか」


 そう言って俺はイグナートの下を見る。

 そこには二人の名前が書いてあった。

 二人一組で動く冒険者は珍しくない。だが、この二人組はそういう冒険者の中では異端だ。


「夫婦でS級冒険者認定を受けた二人組。シドニーとオーギュストか」

「王国を拠点とする二人組ですな。冒険者歴も長いですし、まとめ役も期待された人選でしょう」

「攻撃のシドニーに防御のオーギュスト。年季も長いからこういう特殊な作戦に参加した経験も豊富だ。実力的にも二人で戦えるなら十分に期待できる。安定感ということなら今回参加するS級たちの中では断トツだろうな」

「面識は確か一度ありましたな」

「ああ。本部で一度会っている。悪い印象は受けなかった」


 今回の人選では唯一納得できる人選だな。

 出世を重ね、上しか見ていない若者や周りに迷惑を振りまくトラブルメーカー。きっと足並みはそろわない。

 本来なら安定感のある面々を選ぶべきだろうに。


「最後は雷の勇兵団グローム・ソルダートか」

「皇国を中心に戦う五人組のパーティーですな。連携の取れた集団戦が持ち味だと聞きますが……」

「まぁこの中じゃ一番見劣りするだろうな。目立った功績も上げてない。S級認定されたのだってちょっと怪しいからな」


 S級認定されるということは、大抵のモンスターは対処できるということだ。

 しかし雷の勇兵団は皇国から外に出ることはめったにないし、目新しいモンスターを討伐した功績もない。

 すでに攻略法のわかっているモンスターを数多く討伐し、その功績でS級になったパーティーだ。

 実力は当然ながらある。弱いわけじゃないが、休眠をとるレベルのモンスターを相手にするほどの実力者かと言われれば首を傾げなければいけない。

 今回の面子の中じゃ実力面では唯一の不安材料だろうな。


「呼ばれたS級は以上か。こいつらに一体一体、モンスターを割り振るのか?」

「そのようです。しかし、一つ問題が」

「さっそくかよ。なにがあった?」

「雷の勇兵団だけがまだ帝都についていないそうです。連絡が途絶えているようで、情報がありません」

「……帝国に入ったのはいつだ?」

「最後に連絡があったのは二週間前。北部から帝国に入ったという情報が最後だそうです」

「二週間前に北部から? なんで皇国からの移動で北部から入る必要がある? 国境を通るのは問題ないはずだ。冒険者ギルドの仕事だからな」

「そこは気になっておりました。もしかするとこちらとは別の思惑で動いていたのかもしれません」

「ギルドと帝国が主導する計画だぞ? そこに別の思惑を持ち込むなんて危険すぎだろ」


 ギルドと帝国を無視すれば、今後の活動がしづらくなる。

 あくまで行動を開始するのは帝都に集まってからという話だったはずだしな。

 もしも独断で動いたとするなら――。


「……皇国なら余計なことをしかねないな」

「皇国からすれば計画が成功して、帝国周辺のモンスターが討伐され、記念式典も成功し、S級冒険者も帝国に拠点を構えるようになったりするのは面白くはないはずですからな」

「世の中、そこまでうまくいくもんじゃないけどな。だが、帝国を混乱させるためにいやらしい手を打ってきた可能性はある」


 雷の勇兵団を取り込み、独断行動をとらせる。それで帝国が混乱すれば皇国としては嬉しいかぎりだろう。

 ただでさえ、帝国はここ最近バタついているからな。リーゼ姉上がいる東部国境は鉄壁だ。力押しじゃ突破できない以上、絡め手を使うことはたやすく想像できる。


「事前情報を渡されている以上、北部にいる標的モンスターも把握しているはずだ。北部の標的モンスターはなんだ?」

「――霊亀です」

「……ちっ」


 俺がそう舌打ちした瞬間、突然扉が開いた。

 そこには血相を変えたオリヒメがいた。


「どうした? オリヒメ」

「妾の結界が……壊れた。おそらく霊亀が動き出したぞ」

「そうか……わかった。父上には俺から伝える。行くぞ、セバス」

「はっ」

「アルノルト……霊亀の身動きを封じていた結界は、時間稼ぎのための結界だ。予定ではあと三日は持つはずだった。まだ避難は終わってないであろう……民が危険に晒される。妾の結界が持たなかったせいだ……すまぬ」


 結界が壊れたことを察したオリヒメだからこそ、今の危機的状況をよく理解しているんだろう。

 その言葉はとても重かった。

 だが、それに対して俺は笑みで返す。


「大丈夫だ。帝国にも頼りになる奴はいる」


 そう言って不安そうな表情を浮かべているオリヒメの頭を軽くなでると、俺はセバスとともに外に出た。

 そして。


「どうやら動かざるをえないみたいだな」

「なかなか休めませんな」

「しょうがない。さて、暗躍の時間だ」

「かしこまりました」


 そんなやり取りをしながら俺とセバスは玉座の間に向かったのだった。

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