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セキレイ、探し物を見つける

 セキレイは、夜が深まるのを待ちました。男には悪いけれども、2階が気になっていました。火がないのにとても居心地のよい暖かさがあるからです。彼の勘は、ここに春の女王がいる、と言っていました。

 セキレイは二階へ続く階段に近づきました。でも、階段にはびっしりと何か棘のようなものが置かれていました。靴を履いていても刺さってしまうほど鋭い棘です。しかしセキレイはあわてませんでした。彼は靴と靴下を脱ぐと紐で体にくくりつけ、手すりの上を歩きました。そうして上った部屋の扉を開けると、青い髪の女性が呪符と組みひもで作られた結界の中に閉じ込められていました。セキレイには見覚えがありました。そこにいたのは、春の女王だったのです!

 春の女王はセキレイが着てくれたことを喜びますたが、すぐに悲しい顔になりました。けれども、セキレイは春の女王を助けたい気持ちでいっぱいで、それに気づきませんでした。

「春の女王様、今、助けますね!」

 セキレイは結界を解こうとしました。けれども、触ったとたん、セキレイは指に痛みを覚えました。その組みひもには硝子が混じっていたのです。そして、いつの間にやら男の人がそこにいました。どうやらこの男は道士だったようです。

 男は顔を真っ赤にして怒りました。

「秘密を知ってしまったからには、生かしておくわけにはいかない」

 男はそう言ってセキレイに術をかけようとします。しかし、セキレイだって負けてはいません。

「そちらにいらっしゃるのは、春の女王様です。春の女王様が搭に行かなければ季節は変わりません。道士である貴方様ならばわかるはずです。どうしてこのようなまねをするのですか?」

 セキレイは叫びますが、男は答えようとしません。セキレイが困っていると、春の女王が口を開きました。

「その人にお酒を飲ませなさい。本当はお酒に弱いけれど、それが大好きなのです!」

 セキレイは葡萄酒を取り出すと、男に突き出しました。男はそれをはらおうとしましたが、ビンからはとてもおいしそうなにおいがします。油断したところで、セキレイは男の口に瓶を押し付けました。男はうっかり葡萄酒を飲み、酔っ払ってしまいました。

 酔った男は言いました。熊に襲われ、妻を亡くしてしまった彼は冬があけなければいいと願ってしまった。故に搭へ向かう春の女王を捕らえ、冬の女王の鍵を魔法で隠してしまった、と。

「俺の妻を殺した、憎い熊を殺してくれるならば春の女王を帰してやろう」

 セキレイは、悩みました。足に自信はあるけれども、腕っ節には自信がありません。セキレイは男に頼みました。

「私は決して約束を違えないと誓います。ですから、助っ人を頼んでも良いでしょうか?」

「勿論かまわない」

 男は頷きました。セキレイは深々と頭を下げると夜明けと共に男の家を出ました。


 城に戻ったセキレイは、秋の女王に占いを頼みました。男の妻を殺した熊がどこにいるのか、見当をつけるためです。

 秋の女王は亀の甲羅を焼き、ひび割れを見ました。

「その熊はとても大きく、人の味を覚えた危険な熊。貴方では倒せません」

「なら、俺がいこう」

 そう言ったのは夏の女王でした。夏の女王は大きな斧と投げナイフを持ち、鎧と外套を身に着けるとセキレイには蜂蜜の甕を持たせました。今はえさも少ない時期。蜂蜜でおびき寄せようというのです。秋の女王は蜂蜜に自分の血を少し混ぜるとおまじないをしてくれました。

「この蜜を食べた熊が、少しでも弱りますように」

「お二人ともありがとうございます」

 セキレイは心から礼をいうと、夏の女王と共に山へ向かいました。


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