セキレイ、冬の女王を尋ねる
王のお触れが出たころ、勝ち気な夏の女王と泣き虫な秋の女王が城の中で心配そうに話をしておりました。
「ゲンブは、どうしたんだ? まさか、セイリュウと喧嘩でもしちまったのか?」
「セイリュウはちょっと方向音痴ですから、道に迷っていなければいいのですけど……。うぅ、心配ですぅ」
訝しがる夏の女王と、心配のあまり泣きそうになる秋の女王。夏の女王はそんな秋の女王の背中を叩き、静かに言いました。
「俺らがいったら季節が狂っちまう。……ここは、ちょいとアイツに頼むしかねぇな」
秋の女王は目に涙を浮かべたまま、こくん、と1つうなづきました。
夏の女王に呼ばれたのは、白の髪と漆黒の眼をした1人の少年でした。少年は、四季を司る女王達の手紙を運んでいた運び屋で、搭の場所も知っておりました。
「夏の女王様、秋の女王様、まかせてください。オイラはきっと冬の女王様を搭から出し、春の女王様を搭に導いて見せましょう」
「頼みましたよ、セキレイ」
セキレイと呼ばれた少年は一礼すると、1つに束ねた髪を揺らしてその場を立ち去ります。そしてすぐに身支度を整えるとまずは冬の女王がいる搭へと向かいました。
雪が降り積もる道を凍えながら歩き、やっとの思いでたどり着いたセキレイは白く凍った搭を見上げました。ここに冬の女王がいるのです。セキレイは深呼吸してからノッカーを3回叩きました。すると、自然と扉が開き、招き入れられました。
長い階段を上り部屋に入ると、セキレイの目が丸くなりました。彼の知っている冬の女王はきれい好きでしたが、部屋は派手に散らかっており、騒然としておりました。
部屋の奥に、冬の女王はおりました。しかし、彼女は泣きはらした顔で座り込んでいました。
「あのね、ボクだって好きで閉じこもった訳じゃあないんだよ?」
冬の女王は、とても悲しそうに言いました。彼女曰く、本来ならば春の女王と交代するべく搭を出る準備をしていたそうです。しかし、搭の鍵がなくなってしまい、搭から出られなくなってしまいました。この鍵が無ければ出ることも、次の女王は入ることができず、交代ができません。
「早く鍵を探さなくちゃ、冬が終わらない……。あちこち探したけど、見つからないんだ」
「ならば私が手伝いましょう。冬の女王様、片付けながら探しましょう」
セキレイはそう提案し、女中達と共に片付けと捜索を始めました。
書類を片付け、本を片付け、散らかったさまざまなものを片付けていきます。が、鍵は見つからないまま。不思議に思ったセキレイは、ふと足元をみました。冬の間は冷え込むため、カーペットがしいてあるのです。
「そうだ、女王様。カーペットの下は見ましたか?」
「いや、まだ見ていなかった。鍵は秋の女王から譲り受けてすぐ、宝箱にしまった筈だからまったく考えていなかったんだ」
冬の女王様の言葉を受け、セキレイはカーペットというカーペットをめくってみました。すると、女王達が眠るベッドの下に引かれたカーペットに、隠されていたのです!
一体だれがそうしたのでしょう? みんなは首をかしげていました。これが無ければ女王達は交代できないと知っていて、誰がやったのでしょうか?
セキレイは考えました。季節が変わらないことで得をする存在は誰だろう? 冬が長引くことを願う存在がさせたに違いない。セキレイはそこで1度城に戻り、占いが得意な秋の女王に占ってもらおうと思いました。