犯人の強行手段
ティルが消えた翌日に行われた厳しい聴取により様々な事が発覚してきた。あの女はこの宿の従業員で宿の厨房で働く人物に想いを寄せていたがティルが現れ、そして楽しげな様子や今まで見たことも無い表情で話していたりとたった1日で自分よりもその人の側に居るという事に嫉妬していると同じ従業員に声をかけられて今回の計画を行ったというのが分かった。
「その人物を連行するために来たのですが従業員の部屋から荷物が無くなっており昨日の夜に逃げたのではないかと・・・」
「もしそうなら外門や検所などで分かるのではないですか?」
私の代わりにヘントタイトが報告に来た警ら隊の隊員に聞くと隊員は頷いてから報告書をヘントタイトに渡した。ヘントタイトはそれをパラパラと流し読みをしてから私に渡した。
「・・・なるほど。どこにも引っ掛からなかったとあるが?」
「はい。あの後すぐに封鎖をしたのでまだ町からは出ていないかと」
私が思案しているとヘントタイトが隊員に質問し始めた。
「では門や検門ではなく転移石や魔法により出た可能性は無いのですか?」
「その可能性は低いと思っています」
「それは何故ですか?」
「転移石は高価なため普段から持っている可能性は低いのと、もし買えたとしても一方的なものです・・・それと調べた所、その者は魔力がそれほどなく使える魔法は生活魔法でも5回くらいが限度で、使える種類も2つか3つくらいだったと分かっております。その位の魔力では遠くに行くことは不可能で、この町から他の町や村までの魔力には足りないと判断されました」
転移石は魔力によって行ける距離が決まるが行ったことの無い場所や町にはさらに魔力量が増える。転移石には種類があって使用方法も2つある。それが先程言っていた一方的なものと往復のもの。価値がグンッと変わるのもそうだが往復ものは何度でも使えるのに一方的なものは1回限りで壊れるし不良品も出回ってるので暴走することもある。
「確かに魔力によって行ける距離が決まるので分かりますが、では協力者などの可能性は?」
「それも調べましたが・・・冒険者や神官などの高魔力者の魔力反応は出なかったそうです」
魔力反応とは町の中で高魔力の魔法などを使うと町を守る結界が反応する。その魔力が誰がなんの目的で使ったのか緊急の時のみ調べられるのだが誰も使った形跡が無かったそうだ。魔力は人それぞれで色や性質などが違うために特定が可能になるがこれは登録している人なら特定出来るというだけで、登録がされていなければ誰かは分からないのだが大抵は特定出来る。
理由は簡単だがまず高魔力者は仕事として冒険者や役職の仕事、兵士や神官や魔導師や文官などの国の仕事に就くことが多い。なぜなら高魔力者であると他の人より待遇される事が幾つかあるのだが些細なものからかなり大きなものまで様々だ。なので大抵は先程あげた仕事に就くと身分証の登録で魔力を使うのでその時に登録される仕組みになっているのだ。しかもこれは身分証事態に登録されるので持っている限りは反応し続けるし1度登録すれば身分証を無くして強力な魔法を使っても犯人は分かる。
ーーー神々(かみがみ)の神秘石ーーー
別名 <神々の石碑> と呼ばれていてその石は1日に何度か周囲に水晶を作る。その水晶を小さく砕き身分証に使い、登録者が魔力と1滴の血液を垂らした瞬間に神々の石碑に名前が浮かび上がり淡く光ったまま石に刻まれる。そして死んだ者は名前の淡い光が徐々に消えてから刻まれていた文字が消えるのだ。だから人々は神の石碑として崇めていたが幾つか例外がある。
①賢王として精霊や神が認めた者は光が失った状態でありながら名前の文字は消えない
②精霊や神の愛し子は名前が消えないし文字が淡いピンクになりそのまま残る
③精霊や神々が許せない行いをした者の名前は真っ赤な 色の文字になり、さらに血縁者や配偶者など許せない行いに関わった場合に文字の色が変わった瞬間から生きていると天罰や呪いをもらうと言われている
そんな話まであるが実際に名前が残っていたりするので文献などにより色々と立証されていたりするが精霊などの怒り受けた者というのは立証されていないが何故かすごく信じられている・・・。
「だが一方的な方を使ったもしくは誰かによって使われた形跡はないのか?」
「・・・報告書には記載していないのですがお連れ様に使われたのは一方的な方で強制的に転移をさせられた可能性があります」
「なっ・・・まさかっ!」
隊員の言葉に私よりもヘントタイトが驚いていたが当然だろう。犯罪の中でも重罪にあたる行為だ。しかもこの行為は被害者の送られた場所などでも変わってくる。下手したら一家だけでなく親戚などの血縁者全員が償う事にもなりかねないのだ。だからこの犯罪は普通の精神を兼ね備えている者はまずやらないが犯罪でしかも重罪を犯す者が普通の精神でやれるとは到底思えないのだが・・・。
「家族や親類は居ないのか?」
私の問いに隊員は苦い顔してから絞り出すような声で顔を横に振りながら両親だけでなく幼い兄弟や結婚間近の妹までいたらしいと報告してきた。なぜそんな家族が居ながらこんな事をしたのだろうか?理解が出来なかった。
「・・・分かった。他には何かあるか?」
「・・・ありません」
「お疲れさまでした。また何か分かったら報告を御願いします」
隊員が退室した後は報告書を読み気になったことをヘントタイトに調べるように告げるとヘントタイトは私に頭を下げてから退室していった。私は1人になってからこれからの事やティルの事を考えていた。
私は今までの事を思い出しながら手紙を認めていた。私が認めた内容を読み返し問題がないと判断して封をし後でヘントタイトに渡そうと机の上に放り投げた。
目を瞑りティルを思い浮かべたら不思議と初めて会った時を思い出したが最初から変わった子だったなと思わず笑ってしまった。
視線を変えての話って難しいですね。他の作家さんの手腕が羨ましいです。切実に・・・。
気分転換に書いた小ネタを活動報告に書いてみましたので興味があったら覗いてみてください。よろしくお願いします(^-^)