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01 サークルでの出来事

はじめまして。拙い文ですがよろしくお願いします。

「今回の会誌は不思議な話を題材にする」

 金曜日の夕方。G大学にある教室の一室を借りて、週一度ある小説サークルの会議開始時に題材が発表された。締め切りは2か月後のサークル終了まで。このサークルでは、代々会長が会誌の題材を決定する。また、零細サークルではあるが、定期的に会誌を文化祭で配布したり、小さなイベントで出来のいいものを編集して販売したりもする。

「題材についての質問はあるか」

 会長は質問がないか聞く。しばらくして手を上げる者がいないのを見かねたのか会長と同じ学年であるAが手を上げる。会長はAを指名してAは席を立って言った。

「毎回題材を決めているから題材のネタが切れかかっているのは知ってるが、不思議な話ってどういうものでもいいのか?それだと何でもいいように聞こえるんだけど」

「ああ、そういうことか。確かにそれだけだと何でも有りになってしまうな。不思議と言っても今回はオカルト関係に限定する。とは言っても創作だけでなくパワースポットの取材や不思議な体験した人の取材などでも構わん。もちろん実際に体験した話があるならもっといい」

 会長は辺りを見渡して言った。

「題材については以上だ。ほかに質問はあるか?」

 他のサークル員たちももう質問はないのか誰も手を上げる者はいない。各々は小声で何を書こうかと相談を始めた。

「ОK。ないならオカルトでどういうものにするのかをこの紙に書いてくれ」

 何を書こうか思案したが何も思いつかなかった。周りは談笑しながらどんどんと決まっていく。

時間は刻々と過ぎていった。Sはふと前を見ると前の席で同じように考え事をしているBを見つけた。Bは少し太っているが愛嬌のある顔している男だ。顎に手を当てて考えている様子のBの肩をたたいた。

「なあ」

「ん、どうした?まだ決まってないのか」

「ああ。どうにもパッと出てこない。何かいい題材ないかな」

 そう相談するとBは腕を組む。少ししてSの目を見て言った。

「ならさ、ちょうどいいのがあるんだけど、都市伝説について書いてみないか」

Bの提案にそういうことならとうなずいた。Bはその答えに安堵した声で言った。

「よかった。俺が運営してるブログで取材して書ける題材はいくつかあるんだ。実はブログ用でその取材のアポを取ってたんだけど、どうしても外せない用事ができちゃって行けなくなったんだ。それで、誰かに頼んでみようと思ったんだ」

 Bの言葉にSは苦笑して言う。

「珍しいね。普段は自分で行くんだとか言うのに。今回は取材の代わりに行ってほしいということはよっぽどの用事があるの?」

「ああ。そうしてくれると助かるかな。無理だったら無理って言ってね。その時は、申し訳ないけどその人に事情を話してキャンセルしてもらうなりしてもらうからさ。受けてくれるなら取材の内容は小説の題材として自由に使っていいよ。ただし、取材の内容は気になるから教えてくれるとうれしいかな」

 Bの運営しているブログはオカルトな体験をした人物に実際取材してその話を記事として書いているものである。そのため今回の題材にはうってつけで面白い話が書けそうだと判断したSは二つ返事で言った。

「それだったら受けさせてもらっていいかな。」

 とBは満足な答えを聞けたのかうんうんと頭を上下に動かす。Sは取材の日時と場所、どのような話なのかについて聞いてみる。

「了解。取材についてはあとで教えるよ。それで取材日はいつ?」

「ほんとに助かる。取材の日は明日の土曜日の午後一時だよ」

「行く奴が誰もいなかったらどうするつもりだったんだよ。それで場所は?あとどういう話か大雑把でいいから教えてくれ」

 僕は、呆れたように言うと飄々とBは答える。

「その時はその時さ。場所は、○○駅から徒歩三十分ぐらいの所の民家だよ。印刷した地図を用意してるから渡すよ」

 そういって、Bはおもむろに鞄の中から教科書に挟まっていた異様に分厚いファイルとボイスレコーダーを取り出した。ファイルの中身をパラパラとめくりながら「あったあった」と言って赤い丸の印と下の方に住所の書かれた地図が渡された。

「この地図の赤丸が付いている場所が今回取材させてもらう予定の場所だよ。多分、分かってるだろうけど下の住所は目的地の住所だ」

 ここでBはいったん話を区切った。Sは分かりやすく用意された地図を見てある程度場所を理解してBを見た。場所については、だいたい理解したと判断したのかBは話を続けた。

「取材の相手は神田さんという人だよ。正確には不思議な体験をしたのは神田さんの父にあたる人なんだけどその人はだいぶ前に亡くなってしまってるからね。詳しい話については取材で聞いてもらうとして、何でもその親父さんが亡くなる直前まで何度も話していたことなんだって。内容については、すでに亡くなった親しかった人に会えたって話だって。ぜひ聞きたいとは思わないかい」

 こういう話の時にいつになく興奮し始めたBをなだめる。思い返して少し恥ずかしかったのか軽く咳払いし話を戻した。

「とまあ、こんな話だけど、一緒に用意してるボイスレコーダとかで録音しながらしてくれるとうれしいかな」

 と話を締めくくった。

「わかった」

 と首を縦に振った。


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