転生者の俺と漂白剤の兄
初めましてこちらには初投稿になりますがよろしくお願いします。
やぁ。初めまして。
ちょっと思うところがあるんで少し語らしてほしい。
まず前提情報として僕は前世の記憶というものがる。
うん、またこのネタなんだ。すまない、ちょっと諦めてくれ。
前の人生では両親に兄と俺の4人家族だった。
兄とは6つ離れていたけど仲は良くどこにでもある普通の家庭だったと思う。
けれど俺が中学に入るころに兄が交通事故で亡くなってそれからうちの家庭は壊れてしまったんだ。
帰ってこない父親、無気力になった母。
瞬間的にヒステリックになった母に暴力を振るわれたこともあった。
偶に帰ってきた父に完全に無視されることもあった。
記憶にあった暖かい家庭は無くなり俺はそこから逃げるようにゲームにのめり込んでいった。
その記憶によるとこの世界は18未満はお断りなエロゲー「幻想学園記」というファンタジー学園もののゲームで田舎育ちの主人公が学園で様々な事を体験し学んでいくことで将来を決めていくストーリーだ。
ゲーム内容は育成RPGかな?主人公は男女で選べて登場キャラクターとの恋愛要素もあるごった煮感あふれるゲームだった。
けれどもしっかりと作り込まれたシステムと育成と戦闘のバランス、豊富なスキルとアイテムの収集に制作、周回プレイで解禁される様々な要素といったやり込み要素に加えてエンディングもマルチエンディング、追加パックでハーレムや逆ハーレムもあり男女問わずに結構人気のあるゲームだった。
主人公は男性女性を選んでももう片方も登場してカップルにすることもできた。
僕はその幻想学園記に登場する女主人公の幼馴染だった。
女主人公を選択した場合は攻略対象として、男主人公を選択した場合はライバルキャラとして色々な場面に登場する役だった。
ライバルキャラとして物語が始まる前のバックボーンとして色々設定がありその中に村が飢饉があった時に死んだとされている4つ離れた兄がいたとされている。
この兄が女主人公と攻略キャラである俺を攻略する際の故人なのにキーパーソンになっている存在だ。
だけど全力でその死亡フラグは回避させることにした。
だって兄ちゃん滅茶苦茶良い人だったんだもんね!
住んでいる村は食いっぱぐれないけどそんなに裕福でもなくて飯時は物足りないと思うことも良くあった。
そうすると兄ちゃんはしょうがないなぁと言う顔で自分の分から少し分けてくれたり将来に向けていまから特訓だ!と色々やらかしてた時も何かと気にかけて様子を見たり庇ってくれる本当に良い兄ちゃんだった。
前世で死んだ兄を思い出させてくれて複雑な気分になったけど兄が亡くなってからあまり家族にいい思い出が無い分一つ一つが本当に嬉しかった。
だから薬師の婆ちゃんの手伝いで薬草採取に裏山に入る兄ちゃんに着いていって狩りの真似事をしたり保存食を探したりと飢饉に備えて色々と考えられるだけのことをしていたんだけどまさか飢饉の原因が裏山に流れ着いた熊の魔獣だとは思わなかったわ…。
この世界はファンタジー世界らしくRPGでお馴染みのモンスターとして魔獣という生き物がいる。
魔獣は瘴気という負のエネルギーの塊の影響を受けて強靭に凶悪になった動物を指すもので同族以外の生き物に襲い掛かってくる習性がある厄介な奴らだ。
そんなやつが山に流れてきて山の恵みを荒らし危険だから狩りも難しくなった所に天候不順による不作と三重苦熊の魔獣もゲームではソロで挑むならレベル20前後で戦闘系の授業とスキルを選択して倒せる中ボスクラスのやつだった。
この世界の武力は人同士に向けあうものではなく魔獣に対抗するためのものだ。だけど魔獣の数は多くそのためいつだって人手不足なのに騎士団や冒険者も最近行われた大規模な魔獣の討伐戦に回っていてこちらには中々手が回らない状態だった。
最もこの大規模討伐戦から逃げてきた個体だったのかも知れないけど…。
そんな未来に暗雲たちこめる中、病気になった村長の子供に薬を作るために兄ちゃんは山に採取にいこうとしだした。
こんな時に山に入るのは自殺行為でしかないのだけれど執念深くて腹黒い村長から直接の頼み事で断り切れなかったみたいだ。
死亡原因も飢饉のときに飢え死にとは書かれてなかったからもしかしたらこの魔獣にやられたのかもと思い居ても立っても居られなくなって後を着いて行ってしまった。
そしてお約束のごとくに遭遇する熊さん、全力で森の中を逃げる僕ら、最終的に崖から川にダイブして難を逃れたけどその先がちょっと問題だった。
着いた先は二週目御用達のダンジョン。
エロゲーらしく周回プレイ前提だがさくさくと攻略が勧められるように色々と周回ボーナスも設定されていた。
これは二週目以降に一番最初のクエストで村に届け物をしに帰ったときに道中で崖が崩れていて行けるようになっている洞窟だった。
このダンジョンは古代の遺跡という設定になっている。
主人公たちが探索する前に他の冒険者なりに荒らされた形跡があるものの奥にある魔法剣やポーション、様々な効果のあるアクセサリーが手に入り楽に2週目以降が行えるお助けダンジョンだった。
最近になって崖が崩れたのかまだ誰も入った様子のないダンジョンを兄ちゃんを説得して突き進んでいく。
魔法剣やアクセサリーをゲーム時代よりも沢山あり逃げ切った安心感から熊の事は頭から忘れるくらいにほくほくしながら物色していく最中兄ちゃんが本を読んでいるのに気が付いた。
「錬金大全集」
ちょ、兄ちゃんそれ古代の錬金術書で武器、防具、薬にマジックアイテムと生産系のレシピが全部書かれてる上に素材の組み合わせをオリジナルで出来るようになる3週目以降で入手できる本じゃないですかー。
このゲームは武器や防具は基本的に店売りの物で魔法効果を帯びたものが無い。
魔法効果を帯びたものはダンジョンの宝箱からかレアドロップでしか普通に攻略だけ行っていると入手できない。
そのため強力なマジックアイテムを入手するには生産で作られることになるので良い武器を集めようとするなら頑張ってレシピを集めて回らなければならない。
この本はそんな手間を省いてくれる上に自分で素材を組み合わせてレシピには無い装備や薬を作り出せるようになるのでこのゲームの真の姿は3週目になってからだと言われていた。
ゲームでは読むだけで設備と材料があれば全部出来るなったけれど…。
え?なんかこの本読んでたら色々なものの作り方とまわりにある機材の扱い方も解るようになってきた?
読むだけで解るようになるゲームのままの効果は本当チート。
ゲームではこじ開けられていたドアを難なく操作して開けると中には何かの研究施設みたいな所だった。
ゲームでは真ん中にベッドのようなものがあり完全に荒らされて様々なものが散らかった部屋だったけれどもベッドで眠るのは最高級のビスクドールのような女性。
あれ?こいつってゲーム後半で登場するボスのキリングドールじゃないですかああああああああ!
こ、ここから発掘されて紆余曲折を経て敵になってたのか…
ん?いやまてよ、レベル40後半から50超えて装備完全に整えてから挑まないと倒せないこいつを使えればあの熊倒せんじゃね?
そうと思いついたら早かった。え?奥に眠る魔法剣使って戦うという選択肢はって?
レベル2じゃいくら装備で強化しても無理無理。逃げられただけでも幸運なのに挑んでもがぶっとかじられて終了です。
兄ちゃんに確認すると多分目覚めさせられそうだと作業開始。
そこに響いてくる何かの唸り声。慌ててドアを閉めきってロック、壁に背を付けてほっとするのと同時にドアを強い何かが叩きその衝撃で倒れてしまった。
お互い顔は真っ青だった。
そういえば熊は獲物に対する執着心が強いって聞いたことあるけどこっちでも適用ですかあああああ!?
涙目でガクブルしていたら兄ちゃんがドールの起動に成功してた。
兄ちゃんをマスターとして認識したようでこれならいける!とドールに物色した各種装備渡して熊さん倒して貰うように命令してもらった。
ドアは人の手で壊せる位の強度しかないので熊の攻撃でどんどん変形していった。
空いた隙間からこちらを除く熊の顔がニヤリと笑ったように見えたのは気のせいだったのか…。
ドアが完全に壊れる前に逆にドアを吹き飛ばしてドールが突撃していった。
その姿が熊を巻き込んで見えなくなると直後に響く獣の雄たけび。
血にまみれても美しいドールが命令完遂しましたと現れたときに腰が抜けた僕は悪くない。
結局兄ちゃんの腰も抜けていて二人してドールに担がれて村へと帰ることになりました。
死亡フラグ回避だ!と意気込んでいたけど物凄く怖くてきつかった。
目標は達成できたけど…後半のボスを味方につけるとか完全に原作ブレイクです。
そこからしばらくは本当に何事もなく平和だったと思う。
手に入れたお宝各種は経験値ボーナス品以外はかくして学園が始まる前に出来るだけレベルアップすべく狩りに積極的に付いて周っていた。
兎に角レベルだ、将来魔獣を狩る冒険者か騎士になることを夢見てた。
あれだけ怖い思いをした今はその夢も薄れてきているけど世界に溢れている魔獣の被害を考えてみると少しでも強くなっていた方が良いと必死だった。
ゲームだと兄を失ったことから逃げるように鍛錬を重ねていたらしいけど変なところでゲームと一緒の道を辿っているんだなと感心してしまっていた。
兄ちゃんはドールにリニスと名付けてアシスタントにしつつ錬金大全集のレシピからいくつか薬を作って俺の将来学園に通うための資金集めだーと張り切っていた。
薬を作って近くの大きな街に露天売りをする事になったので時々ついてっている。
やっぱり大きな町はファンタジー要素が強くて色々と楽しかった。
ある日たまたま着いて行くとどこかで見た少しいかつい顔した青年が嬉しそうに声をかけてきた。
最初はその強面に緊張してたけど露店売りを始めた頃からの常連冒険者さんらしく兄ちゃんと楽しそうに会話して色々と買い込んでいた。
なんでも懐が厳しかった時に兄ちゃんが安めにポーションを売ってくれたのとおまけで渡した試作品の薬のおかげで幼馴染件パートナーの女性が助かったそうだ。
今度その人と結婚することになるから冒険者から足を洗って学園のある王都の知り合いの伝手で王都の警備兵になるとあいさつに来てくれたのだった。
俺が再来年位から学園に通う事を知ると困ったことがあったらいつでも尋ねて来るといい、出来るだけ力になるからといって去っていった。
兄ちゃんすげーとその時は感心と誇らしさがあったけど帰ってきてあのいかつい青年の事を思い出してびっくりした。
あれ序盤のボスじゃんと…。
序盤のボスは今日行った街と王都の間の街道に出る賊として現れる。
昔は中堅所の冒険者だったのだけれど自分のミスでパートナーを死なせてしまい酒におぼれて行き付くところまで行ってしまった人だったはず。
そんな人が今日凄く楽しそうな幸せそうな顔をしてた事を思い出して何とも言えないくすぐったい様な気分になりながらその日は眠りについた。
兄ちゃんが街で露店売りするようになって一年位した頃にまた事件があった。
貴族のお偉いさんの目に留まって娘を治療してほしいと依頼があったのだ。そのため兄ちゃんは村から治療のために連れていかれてしまった。
ただ迎えに来た貴族の部下の人が婆ちゃんの姿見てめっちゃ驚いて超下手に出ていて後で聞いたら昔は宮廷でぶいぶい言わせてたって婆ちゃんあんた何者ですか?
半年くらいで兄ちゃんは帰ってきた。
村に帰ってくる時に依頼のあった貴族の息子がわざわざ送ってくれたらしい。
治療していた子のお兄さんらしくケガの治療をきっかけに仲良くなったって言うけど…。
兄ちゃんそいつラスボスじゃないですかー!?
攻略対象の婚約者だけど妹が病気で亡くなった事とケガで自身の騎士としての道までも閉ざされた事に絶望して禁呪に手を出すことになる人なんですけど!?
仲良くって何!?むしろ親友とか!?
ゲームでは物凄く陰気なイケメンだったけど爽やかなオーラがあふれ出ているし!
ってか死ぬはずの妹生きていて本人もケガが完治してるじゃないですかー!
闇落ちする要素が全くないぜ!
何という原作ブレイク!! どうしてこうなった…。
序盤のボス、後半のボスにラスボスまでいなくなってしまった…。
何だか色々と兄ちゃんが絡むとボスがどんどん浄化といるか漂白されている…。
お偉い貴族はなんと公爵家の人で息子と娘を助けたことに物凄く恩義を感じたことと将来的に兄ちゃんを雇いたいとして学園に行くことを援助してくれるようになり兄弟そろって学園に通うことになった。
その後婆ちゃんと母さんの素性が明らかになって貴族のお家騒動に兄ちゃんと巻き込まれたりボス不在のために変わり切ったイベントに四苦八苦したり女主人公のライバルキャラが実は逆ハー狙いの記憶持ちで騒動に巻き込まれたり、ゲームでは語られなかった魔獣の大規模襲来事件で一躍英雄と祭り上げられることになったりとするのは別の話。
ただし必ずそんな騒動の裏には全く意図していないのに兄ちゃんが深く関わっていて兄ちゃん黒幕説が俺の中で膨れ上がったりしていた。