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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X3章 まおうが あらわれた! コマンド?
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x3-7.『ぼうけんをはじめる』

 異議を唱えた結果、私の呼び名は『ミーナ』になりました。慣れないせいか少し変な感じもしますが、ルミにゃんと呼ばれることに比べれば大したことはありません。ええ、全くもって大したことはありませんとも。

 しかし、今までは自分の呼び名など気にしたこともありませんでしたが、いざあだ名で呼ばれてみると、少しくすぐったい感じがします。やはり侮蔑的な呼び方と好意的な呼び方とでは、感じ方が違うのですね。今までは『魔族の子』だとか『悪魔』だとか、それに類する呼び名が多かったのですが、気にしたことはありませんでしたし。


「ルミにゃん可愛いのになー……」


 ゾミーは未だ未練があるのか、ブツブツと一人で呟いています。ちょっとその呼び名は、何故かはわかりませんが、なんとなく響きが凄く恥ずかしく感じるのです。ゾミーには少し申し訳ないと思ったりもしましたが、今後その名で呼ばれ続けることを考えると、拒否せざるを得ませんでした。

 因みに名前の呼び方についてですが、愛称以外で名前を呼ぶことを禁止されました。ユーノンが凄く嬉しそうにしていますし、せっかく愛称を皆に付けたので、いっその事愛称以外禁止にしてしまおうとのことでした。まあ『メイさん以外』という注釈がつきますが。一人だけ仲間外れみたいになってしまい申し訳なく思うのですが、ユーノンと、他ならぬメイさん自身が気にしなくて良いと言っていましたので、皆気にしないようにしたようです。

 ついでに言うと『さん』付けも禁止されました。これもまた『メイさん以外』という注釈がつきますけれど。私が『ゾミーさん』と言った瞬間、ゾミーからものすごい勢いで駄目出しを受けました。ゾミー曰く「愛称に『さん』なんて付けられるとものすごく他人行儀に聞こえるじゃん。アタシ達、もうマブダチでしょ?」とのことです。いつの間にマブダチとやらになったのかはわかりませんが、出会って間もない私に対してそのように言っていただいたというのに、その言葉を無下にすることなどできるはずがありません。いえ、本当に嫌なのであればさすがに断りもしますが、今回に関してはそういうわけでもありませんので。


「さて、みんなの愛称も決まったことだし、今後の計画を練ろうか。みんなはなにしたい?」


 名付けの後の雑談もある程度収まると、ユーノンが皆に話を振ってきました。


「はーい、はいはいはい!レベル上げ!アタシはレベル上げをしたいです!」

「あー、うん、他に意見は?」

「うーん、前の時は王都周辺でしか活動できなかったからなぁ、俺としては今度は色んな所に行ってみたいかな」

「ほぅほぅ、他ある?」


 ユーノンが更に意見がないかを確認しますが、特に意見は上がらないようです。私の意見はコノタの出した意見に含まれていますので、改めて言う程のことでもありませんし。


「じゃあ、他に意見もないようだし、旅をしながらレベル上げってことでおーけー?」

「おっけーっす、はぁー、アタシ、楽しみすぎて興奮してきた!」

「いや、落ち着けよ。今からそんなはしゃいでたってしょうがねぇだろ。まぁ、気持ちはわからんでもないが」

「こう言うのも、なんだけど、結局、落ち着くのは、異世界転移の、お決まりの、パターン」

「確かに!異世界転移物の小説って、転移後は旅しながら強くなっていくってのがやっぱり定番だよね!」

「いや、だからお前は少し落ち着けっての……」


 お決まりのパターンだとか、定番だとかいう話はよくわかりませんが、勇者達も特に異論はないようです。もちろん、私にもありません。

 そのようなことをゾミーが話しながらも、そわそわと落ち着きのない様子で動きまくっているのをコノタがたしなめますが、どうやら効果はないようです。同じようなことを数度繰り返したところで、コノタも諦めたようです。


「それで、どこから旅をするのかだけど……」

「あー、そこはお任せで。アタシ達、ミーナのいた世界のことなにも知らないしね」

「だよねー。ってことで、ミーナはなにか希望ある?」


 と言われましても……私としましても、今までは私にあてがわれていた部屋の中が世界の全てだったわけですので、何も知らないに等しいのです。それでも、私が意見しても良いというのであれば……。


「私は、王都の城下を見てみたいです」


 どうせ何処へ行ったとしても本からの知識以上のことは知りませんし、それならば、身近な場所から知っていきたいと思いました。すぐ近くにあったはずなのに、私にとってはとても遠くに思えた城下町を、この目で見たい、この足で歩きたい、そう思ったのです。


「なるほどねー、みんなもそれでいいかな?って聞く意味ないような気もするけど」

「おっけーおっけー」

「異議、なし」

「まあ、何も知らねぇわけだし、どこからでも変わんねぇよな」

「だな、そもそも嫌だと言ったところで他に候補があるわけでもないしな」

「じゃ、それでいこうか」


 特に反対意見もなかったようで、私の意見が採用されました。まさか王都の城下町を、この足で歩くことのできる日がやって来るなんて思ってもみませんでした。沸々と、体の奥底から喜びが湧き上がってくるのがわかります。気持ちの高ぶりを抑えるのにも一苦労です。ゾミーが落ち着きなくそわそわとしていたのにも、今でしたら気持ちが良くわかります。


「とりあえず王都から旅を始めるとして、やっぱり冒険者登録はしておく?」

「もっちろんだよ!冒険者登録をせずして何が異世界転移か!」

「まあ、やっぱり異世界行ったら冒険者登録は外せないよな」


 本や又聞きでの知識しかありませんが、冒険者とは魔物と戦って報酬を得る方達のことですよね?戦うこととは無縁の生活をしていましたが、私も冒険者登録をするのでしょうか?いえ、嫌なのではありません。むしろ逆で、私も冒険者登録をしてみたいという気持ちがあります。せっかく皆と仲良くなれそうなのに、ここで仲間外れは嫌なのです。しかし、戦えない私が登録をしてしまっても良いものなのでしょうか?ユーノンにお願いすれば、私でも鍛えてもらえますかね?


「せっかくだから、パーティ名も決めない?みんなで一緒に活動するわけだしさ」

「ぞみーがわざわざそういう事を言うってことは、すでになにか考えてあるんでしょ?」

「さっすがゆーのん。アタシのことをよくわかっていらっしゃる」


 みんなでということは、やはり私も冒険者登録をするのでしょうか。また一つ楽しみが増えました。ちょっとわくわくし過ぎでそわそわしてしまいそうです。


「じゃじゃーん、はっぴょー(発表)しまーす!パーティ名は魔王軍。パーティリーダーはもちろんゆーのんね」

「いや、魔王軍て……しかもリーダー押し付けかよ」

「だってさ、せっかくここに魔王様がいるんだから、やっぱ魔王軍じゃん?それなら、魔王様がリーダーじゃん?それに一番強いし」

「まあ、そうなのか。……ん?そうなのか?」


 コノタが一瞬納得しかけていましたが、やはり納得できなかったのか、首をひねっていました。しかし、魔王軍ですか……周りからひんしゅくを買いそうなパーティ名ですね。


「そしてアタシ達が魔王軍四天王!」

「四天王って俺達四人がか?ミーナは?」

「もちろんミーナも四天王」

「いや、それ四天王が五人……」

「ノンノンノン、今どき四天王が五人いるとか、この業界では常識なんだよ」

「どこの業界だよそれ……」


 四天王とか五人とかはまあいいとして、……いえ、本当は良くありませんが、ここは置いておきます。それよりも、勇者が魔王軍四天王というのは良いのでしょうか?肩書きだけをみると、勇者が魔王に取り込まれたという、人族にとっては絶望的とも言える構図になってしまっています。まあ、魔王も勇者も、私達の世界の者ではないのですけれど。


「まあまあ、パーティ名は必要になったらでいいんじゃない?それよりも、まずは王都に行こうよ。ずっとここで話していてもしょうがないし」

「あー、確かにそうだな」


 ユーノンのその言葉に全員が納得し、うなずきました。


「それじゃ、転移するからみんなこっち来て」


 そう言ってユーノンは立ち上がり、皆が集まれるように広めのスペースへと移動しました。それに皆が続きます。


「準備はおーけー?」

「おっけーだよ!よーし、しゅっぱーつ(出発)!アタシ達の冒険はこれからだ!」

「いや、お前そういう打ち切りネタここでぶっこんでくんなよ……ゆーのんが本気で打ち切ったらどうすんだよ」

「いっぺん言ってみたかった!」

「気持ちはわからないでもないんだが……」


 コノタがそう言いながらユーノンをちらっと見ると、ユーノンがにこやかに言い放ちました。


「ゾミー先生の次回作にご期待下さい!」

「ゆーのんも乗るなよ……」


 何やら意味はわかりませんが、皆さんが楽しそうで何よりです。

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