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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X3章 まおうが あらわれた! コマンド?
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x1-15.ゆうしゃたちは おどろき とまどっている!

「おーい(やしろ)ー、悪ぃ、待たせたな」

「おっ待たせ―。社くん、小夜ちゃんは?」


 待ち合わせ場所である、俺達の通っていた高校の正門にて待つこと約三分、待ち人の内二人が顔を出した。


「いや、俺も今さっき来たばかりだから大して待ってない。小夜子はまだだな」


 高校に入学してから割りとすぐに異世界なんかに召喚されたりもしたが、その後はなんの問題もなく時が過ぎ、今日、俺達は高校を卒業した。俺達四人は全員近所の大学に進学希望しており、後は合否の発表を待つのみ。その大学はそれなりの難関だとは言われているが、俺達の成績であれば問題なく受かると確信している。まあ、自己採点でも充分な点数は取れていたしな。


 それもこれも、異世界でレベルを上げたことのおかげだろう。

 そもそもの話、俺達全員の成績はもともと良い方だった。俺とコノは成績上位者にギリギリ入るくらい。望は俺等より少し上くらい。小夜子は上から数えて片手で足りるくらい。そんな成績だった。一学期が終わった時点では。

 そんな成績上位者達が、異世界でレベルを上げ、魔力のステータスをかなり上げて戻ってきた。魔力が上がるということは、やる気が長時間継続するということに等しい。そのため、副次的に集中力が増した。やる気さえ継続するのであれば、物事に集中し続けるのも、さほど苦にならないからな。

 成績上位者がやる気も集中力も旺盛な状態で授業に臨めば、結果は自明の理だろう。俺達はそれほど苦労することもなく、成績を伸ばしていった。近所のレベルの高いと言われている大学に、余裕を持って受験を望める程度には。


「ごめん、お待たせ」


 俺が多少の感傷とともに高校生活を振り返っていると、最後の待ち人、俺の彼女である小夜子がトコトコと小走りでやってきた。


「いやー、全然待ってないよ!それにアタシ、小夜ちゃんならいくらでも待てるし!むしろ小夜ちゃんだけを永遠に待つし!」

「ああ、俺達も今来たばかりだから全然待ってないな」


 望が相変わらず阿呆なことを言い始め、コノがサラッとスルーしながらも追従する。それを聞いた小夜子が俺のことをジッと見つめてくるので、俺も返事をする。


「俺も全然待ってないぞ。すぐにみんな集まったしな」


 これから俺達は、高校卒業の打ち上げ(と称した遊び)に繰り出すところだ。ここ最近、四人で集まって遊ぶことがあまりなかったので、せっかくのこの機会に思いっきり遊ぼうということになった。

 まあ、俺達四人としては集まって遊んでいても全然問題はなかったんだが、やっぱり周りが受験でピリピリしているところで、ワイワイと遊び歩くってのは気が引けたしな。


「よし、じゃあ早速行くか!で、まずはどこ行く?俺としてはゲーセンなんかが良いと思うんだが」

「はいはいはい!アタシも!アタシもゲーセンが良いと思います!」

「あーはいはい、お前ら二人がいる時点でそうなることは想像がついていたからな。俺もそれでかまわないぞ」

「私も、それでいい」

「うっし!じゃあ満場一致でゲーセンツアー開始だな!」


 コノと望の「まずはゲーセンで遊ぼう」という意見に同意したら、なぜかゲーセン巡りに同意したことになっていた。え?今日一日全部ゲーセン?いや、別にいいんだが、ゲーセンなんてハシゴして楽しいのか?そんなことを疑問に思いつつ、まずは一番近いゲーセンへと向かって、みんなで歩き出した。






 三軒目のゲーセンを出て、四軒目に向かっている途中でコノが立ち止まる。


「さすがにゲーセンばっかりってのもなんだし、ちょっと寄ってかないか?」


 そう言ったコノの指差す場所に目を向ければ、そこにはゲーム屋が……。


「お?いいねいいねー、行っちゃう?行っちゃおうか?」


 そこにすかさず望が同意する。いい加減ゲームばかりで疲れたと思っていた所に、ゲーセン以外の提案。少し休めるか?と思っていたら、またゲーム。うん、お前らのゲームにかける情熱を甘く見てたぜ。もう俺はあきらめたから、お前らの好きにしろよ……。




 コノの見つけた店は、今時珍しい個人商店のゲーム屋だった。コノ曰く「こういう店にこそお宝や掘り出し物があるんだぜ」らしい。あーこれは長くなるパターンだ。掘り出し物を見つけるために、店の商品をくまなく探し尽くすパターンだ。好きにしろとさっき思ったそばからこんなことを思うのもなんだが、お前ら少しは自重してくれませんかね?まあ、これをあいつらに言ったところで意味はないから、思うだけにしておくけど。しょうがないから俺も一人で適当に見て回るか。本当はせめて小夜子と回れればよかったんだが、店に入って早々に望に引っ張られていったからな……。




「ねぇねぇきぃちゃん、こっちとこっち、どっちのほうが面白そう?」


 店の中を適当にブラブラしていると、女の子の声が聞こえてきた。あまり繁盛しているような店構えじゃなかったけど、ちゃんと俺達以外にも客がいたんだな、この店。


「気になるのならば両方共購入すればいいじゃないですか」

「チッチッチ!わかってないなー、こういうのは限られた少ない情報から面白そうなゲームを選ぶ、ということに意義があるんだよ!」

「意義があろうとなかろうと、買ったゲームがつまらなかったらどうするのですか」

「それはそれで、つまらないゲームを選んでしまったことに悔しさを感じつつ、それも込みでゲームを楽しむ」

「……相変わらず、アナタの思考回路は理解できません」


 声の方へと向かって歩いていくと、話をしている人達の後ろ姿が見えた。どうやら女性の二人組のようだ。背格好を見た感じ、姉妹なのかな?俺としてはお姉さんっぽい人の言葉に同意するんだけど、コノや望なんかは妹さんっぽい人の言葉に同意するんだろうなぁ。昔、同じようなセリフを聞いたことがあるような気がするし。


「むー、よし、決めた!これにしよう。きぃちゃんきぃちゃん、これ買って帰ろ」

「……先ほど選んでいた物のどちらでもないじゃないですか」

「いや、なんかこう、ビビッときたんだよ。ビビッと。きっとこれは名作の予感!」

「はぁ……そうですか」


 どうやら購入するゲームが決まったようだ。少女がゲームソフトを手に持ち、振り返った瞬間、俺は固まってしまう。そこには見覚えのある顔があったのだ。高校卒業ということもあり、過去を振り返っていたせいでもあるだろう。ほんの数時間前にも思い浮かべた顔。その顔を見た瞬間、その人物が誰であるのかを理解した。他人の空似なんてもんじゃない。俺の記憶にある顔と、寸分違わぬ顔がそこにあった。


「ユノ……さん?」


 思わず彼女の名前を口にしてしまう。それを聞いたユノさんが訝しむ様子でこちらを見る。


「なんで私の名前を知ってる?」


 やはりユノさんで間違いないようだ。どうやらユノさんは俺のことを忘れているようなので、改めて自己紹介をしよう。


「おーい社、こんな所にいたの……か」


 改めて自己紹介をしようと思ったところで、コノ達が俺の元へと集まってきた。そしてユノさんの顔を見たらしく、三人共、俺と同様に固まっていた。


「え?ユノさん?」


 そしてこれまた俺と同様に彼女の名前を口にする望。


「私を知ってる人が増えた?いや、こっちで私の名前を知ってる人はいないはず――――」


 何やらユノさんがブツブツと呟いている。俺達のことを思い出そうとしてくれているのだろうか?


「あっ!もしかして、勇者?」


 どうやら無事思い出してもらえたようだ。いつもだったらコノに会話を丸投げするところだが、ここは初めに遭遇した俺が話をするべきだろう。コノはまだ固まってるみたいだし。


「はい、その節はお世話になりました」

「おー、やっぱりそうか。私の今の名前を知っているこっちの人間って、アナタたちくらいしか該当者がいないからね。そういえばここってアナタたちの家の近くだっけ。学校帰りにゲーム屋へ寄り道だとか、良いご身分ですなぁー」

「いやいや、世界をまたいでまでゲーム屋へ来ているユノさんには言われたくないですよ。それにしてもユノさんってあれから見た目が変わらないようなんですが……俺の気のせいですかね?」


 あれから二年以上は過ぎてるんだし、ユノさんくらいの年齢の子供が全く成長していないなんてありえるわけがない。となるとやっぱり気のせい?いやいやでも、俺の記憶の中にあるユノさんと全然変わってないしなぁ……。


「ぐっ……やっぱり勇者たちから見ても、私成長してない?」


 どうやらユノさんの心にダメージを与えてしまったようだ。成長してないことを気にしていたのだろうか。悪いことを聞いてしまったかもしれない。その言葉になんて答えようかと悩んでいると、ユノさんが俺の質問に回答をくれた。


「うん、ちょっとね、レベル上げすぎたせいで私、しばらく成長しないんだよね」

「ちょっとそれ詳しく!」


 ユノさんが成長しない理由に、ものすごい勢いで望がくいついた。さすがにちょっと興奮しすぎなので、少し落ち着けと望に言ったところ、女の子にとってとても重要な事なんだと怒られた。え?これ俺が悪いの?

 そのままの勢いで望がユノさんに根掘り葉掘り問い詰めたところ、レベルの数値は寿命に関係していて、レベルを一気に上げすぎると成長が緩やかになったり、一時的に止まってしまったりするらしい。更にどうやって一気にレベルを上げたら良いのかと相談したところ「こっちの世界じゃ無理じゃないかな?」という回答をユノさんからもらい、ものすごくがっかりしていた。正直言って、俺等くらいの年齢で気にすることじゃないと思うんだけどな。まぁ、これを口にしたらまた怒られそうだから言わないけど。


「あ、そうだ。せっかくこんなところで会ったんだし、ちょっと私のこと鑑定してみてよ。自慢したいことがあるんだ」


 そんなことを言われたので、ユノさんを鑑定してみる。この鑑定のスキルって、こっちに戻ってきてからも何気に便利なんだよな。偽物とか簡単に見破れるし。美術品だとかブランド品だとかの真贋鑑定士なんかだったら、喉から手が出るほど欲しいスキルだろうな。っと、今はそんなことより今はユノさんの鑑定だ。




 名前:ユノ・ナハブ

 種族:人族

 年齢:16

 レベル:418

 体力:26,592,797

 魔力:369,686,343

 筋力:6,503

 耐久:6,357

 精神:8,111

 抵抗:7,832

 敏捷:6,644

 器用:6,995

 幸運:89


 称号:異世界人、断罪者、迷宮主、魔王


 スキル:全武器適正、全魔法適正、精神耐性、苦痛耐性、探索術




 なんというか、もう人間やめてるよね。それなのに種族が人族とか、なんの冗談なんでしょうかね。


「ねぇねぇ、見た?見た見た?どうよ、ついに私、魔王になりました!」


 そんなユノさんの言葉で、称号欄を確認してみる。確かに『魔王』という称号があった。


「いやー、私ってば散々魔王魔王言われてたじゃない?だったら本当になってやろうじゃないかと思って、魔王っぽく振る舞いながらゴミムシ共を粛清していたら、いつの間にか称号ついてたんだよね。意外となろうと思えばなれるもんなんだねー」


 いやいや、普通なれませんから。魔王になろうと思ってなれたら、世の魔王は苦労してませんから。いや、本当に魔王が苦労しているのかどうかは知らないけど。明らかにその人外なステータスが関係してますよね?俺、こんな魔王を討伐しろなんて言われたら、全力で逃げ出すよ。だって勝てるわけねーもん。

 そんなことを考えつつも周りを見てみると、やはり三人共唖然としていた。そりゃそうだ。人外のステータスに魔王の称号とくれば、誰だってそうなる。


 と、そこまで考えて、周りが明るくなっていることに気付く。ん?なんで明るくなってんだ?店内の照明でも変わったのか?ふと視線を上へ向け、特になにも変わっていないことを確認し、今度は視線を下へ向け、原因に気付く。床が幾何学的な模様に光っていた。これは――魔法陣!?なんでこんな所に?もしかしてまたどこかに召喚されるのか?

 数瞬後、魔法陣から光が溢れ、俺の意識は途切れた。











 数秒後、光の消えたその場所には、魔法陣も勇者たちも綺麗さっぱり消えており、少女とその保護者のみが立っていた。


「ねぇねぇきぃちゃん、面白そうだから私も行ってきていい?」

「はぁ……どうせ駄目だと言っても行くのでしょう?しょうがないので許可します」

「やった!さっすがきぃちゃん、話がわかるぅ」

「今なら召喚魔法の痕跡が残っているので、場所を特定するのは容易いですね。それでは行きましょうか」

「あいさー」


 その言葉を最後に、この場より少女たちの存在も消え去った。

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