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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
4章 私の妹がこんなに可愛い
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4-18.(`・ω・´)シャキーン

「ユノちゃんユノちゃん、わたしね、レベル20になったの!」


 アニエが『ほめてほめて!』というオーラを身にまとい、私に報告してくる。もちろん私はアニエをほめる。こんなアニエをほめないという選択肢があるだろうか?いやない。


「おー、頑張ったねアニエ。えらいえらい」


 私はそう言いながらアニエの頭をなでる。アニエは嬉しそうに目を細めている。こうかはばつぐんだ!




 さて、なんの話なのかというともちろんゲームの話……ではなく、現実での話です。なんとアニエが、ゲームのレベル上げだけでなく、自らのレベル上げに目覚めてしまったのです。私としてはあんまりアニエには危ないことをしてほしくないんだけど、アニエ自身が強くなるということには賛成ではあるので(身を守るという意味で)ちょっと複雑な気分。まあ、きぃちゃんがアニエのレベル上げを監督しているので、万が一のことが起こり得ないということについては安心ではあるんですけど。




 それは約半年前のある日のこと。アニエが私たちに向かってこう言った。


「ユノちゃん、きぃちゃん、わたし、サムライになりたい!」


 正直言って、アニエがなにを言っているのかわからなかった。

 え?サムライになりたい?いきなりなにを言ってるのこの子は?

 そしてその『言ってやったぜ』みたいな満足げな顔が馬鹿可愛い。


「カタナでね、シャキーンってやって、たくさんてきをたおすの!」


 むふーっ、と鼻息を荒くし、刀を振り回すようなジェスチャーをしながら、アニエが説明を続ける。


「それでね、それでね、わたしもね、ユノちゃんみたいに、つよくなるの!」


 強くなりたい?サムライになって?


「つよくなったらね、いっぱいユノちゃんといっしょにいれるんでしょ?わたし、ユノちゃんもきぃちゃんもだいすきだから、いっぱいいっぱい、いっしょにいたい!」


 Q:うっはーーーーーっ、なにこのけなげで可愛い子。

 A:アニエです。

 うん、知ってる。だって最強に可愛い私の妹だもん。

 あまりのアニエの可愛さにテンションが上り、思わずアニエを抱きしめる。


「んふー、ユノちゃんぎゅーっ」


 そしてアニエも私を抱きしめ返す。

 私がアニエを抱きしめ、アニエが私を抱きしめる。うむ、最強だ。




 さて、アニエがなにを言いたかったのかを少しわかりやすく説明しよう。


 まず前提として、私は冒険者だ。満月堂で働いたり、家でゲームしたり、ゴロゴロしたりがほとんどの毎日ではあるけど、一応、職業としては冒険者のはずである。

 そんな私は、お兄ちゃんたちのパーティである『アマテラス』にたまに混ぜてもらって、迷宮にもぐったりすることがある。当然のことながら迷宮探索が短時間で終わるはずもなく、迷宮探索に出かければ、数日は家に戻ってこない。まあ、転移魔法で家に戻って、休んで、また転移魔法で迷宮に戻り探索を続ける、なんて方法も取れなくはないのですが、せっかくパーティで迷宮探索に臨んでいるというのに、そんなことをしたら雰囲気ぶち壊しじゃないですか。そんなもったいないことはできません。

 ちなみに、ソロで迷宮攻略していた時は宿屋(マイホームをゲットしてからは自宅)へと、毎日転移魔法で帰還していました。え?雰囲気はどうしたって?いやいやいや、だってソロですよ?お一人様なんですよ?一人で野営とかなんの罰ゲームですか。きぃちゃんという話し相手がいるとはいえ、一人で野営はさすがに寂しすぎます。

 そんなわけなので、私が冒険者として活動している間は、アニエとはあまり会えなくなるんですよね。


 そこでアニエは考えました。どうやったらもっと私と一緒にいられるだろうかと。

 そしてアニエはひらめきます。ならば自分も強くなって、私と一緒に冒険者として活動をすれば良いと。なにこの子天才じゃない?天才と可愛いが両方そなわり(ry


 つまりアニエが強くなり、迷宮探索に参加できるようになれば、私ともっと一緒にいられるという天才的な発想から、先ほどの「サムライになりたい」という宣言になったというわけなのだ。


「でも、強くなりたいのはわかったけど、なんでサムライ?」


 アニエは小さくてか弱いわけだし、わざわざ近接職を選ぶ必要はないんじゃないかな?魔法使いとかのほうが安全で良いんじゃないかなと、私は思うわけですよ。


「ユノちゃんってまほうつかいなんでしょ?だからね、わたしがね、カタナでシャキーンってやって、ユノちゃんをまもるの!」


 おぉぅ、私が後衛職だから、アニエが前衛になって私を守ってくれるというのか。なにこの天使的な発想。さすがは私の可愛い可愛い妹だ。そして「シャキーン」の部分でドヤ顔で刀を振り抜くジェスチャーをするアニエがとても可愛い。つまり、私の妹がこんなに可愛い!

 でもごめんよアニエ。実は私、前衛もできる魔法使いなんだ。ついでに言うと、ほとんど魔法を使わない(きぃちゃんから禁止されているから)ほぼ前衛で戦う魔法使いなんだ。


「それとね、カタナ、かっこよくてつおい(つよい)!」


 あー、なるほど。結局のところ、アニエの好みですか。あなた、ゲームでサムライだとか、刀が装備できるキャラだとかがいたら、必ず使いますもんね。しかもゲームだと、刀って性能が高いことが多いですし、格好良く描かれていたりしますしね。


「それでねそれでね、しろくてあかいふくきてたたかうの!ちょーかっこいいの!」


 そしてアニエは、再び刀を振り回すジェスチャーを披露する。

 白くて赤い服ってのは、いわゆる『巫女服』のことかな?これまたゲームでの話になるんだけど、刀を武器として扱う女性キャラの服装って、着物、巫女服、セーラー服であることが非常に多いような気がします。私のプレイしているゲームがかたよってるだけでしょうか?


「だからね、わたし、サムライになる!」




 というわけで、アニエは強くて格好良いサムライになるため、レベル上げに励むこととなったのです。

 ちなみに、アニエがご執心である刀はどうやって調達したのかというと、きぃちゃんがサクッと作ってくれました。うん、さすがきぃちゃん、としか言いようがないっすね。で、アニエはそのきぃちゃんが作ってくれた刀をそれはもう大事にし、片時も手放さず、ご飯の時も、ゲームをする時も、トイレの時も、寝る時も、常に持ち歩いています。さすがにお風呂だけは持ち込み禁止にしましたけど。


 そんなアニエの当時のレベルは8。レベルの上がりやすい地球の人間であればともかく、こちらの世界の人間であるアニエが、半年程度でレベルを12も上げたというのはかなりのハイペースだといえるでしょう。

 本来であれば、ある程度のレベルまで達してしまうと、経験を積むために丁度良い強さの魔物がいなくなってしまいます。自分が強くなるにつれ魔物を楽に倒せるようになるので、同じ魔物を相手にしたとしても、得られる経験は少なくなっていってしまうからです。そのため、どうしても格下の魔物と戦って経験を積まなくてはならなくなり、レベルを上げることが困難になってしまうのだ。現実では、ゲームみたいに段階的に強い魔物が行く先々に分布されている、なんてことにはならないため、この事実が、レベルを上げるための障害となって立ちはだかる。

 しかし、我が家には『訓練室』という、レベル上げを効率的に行うことのできる素晴らしい施設がある。しかもきぃちゃんという安全装置付き(死亡以外は安全に含まれます)だ。これにより、格上の魔物と戦い安全に(死ぬことなく)経験を積むことができ、アニエは驚異的なレベルアップを果たしたというわけなのです。


 ちなみに、10歳児のレベルが8というのは、この世界基準でみても高めである。

 なぜアニエがそんなレベルに達していたのかといえば、きぃちゃん曰くゲームをしていたからだそうな。

 え?ゲームで遊んでるだけでレベルが上がるの?なんていう疑問が頭をよぎりもしましたが、すぐにきぃちゃんが説明をしてくれました。簡単にまとめると『自らの置かれている環境よりも遥かに高度な文明に触れた時、たくさんの経験を得ることができる』ということらしいです。つまり、アニエの今までの生活環境よりも高度な技術の産物であるゲームに触れたため、たくさんの経験を得、レベルが上昇したということになるわけなのです。

 よくよく考えてみれば、遥か高度な文明なんてものは、その文明に触れたことのない人からすれば未知の存在なわけで、未知との遭遇、理解、適応、と過程をたどっていけば、そこには膨大な経験の蓄積がある、ということに非常に納得してしまいました。ゲームのちからってすげー!


 さて、そんなレベル20な10歳児は、刀の取扱いもかなり様になっていた。最初の頃はアニエが近接職なんて大丈夫かな、なんて不安に思っていたりもしたけど、今では多少格上の魔物相手でも、互角以上に戦えている。普通にレベルを上げただけじゃそんなことができるはずもないので、きぃちゃんの教育(地獄の特訓)のたまものといったところだろうか。アニエもよくくじけずに頑張ったね。

 アニエと一緒に迷宮探索に出かける日も近いかもしれない。

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