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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
4章 私の妹がこんなに可愛い
86/116

4-17.どちらかと言えば横シューよりも縦シューのほうが好きです

「やぁっ、たぁっ、とりゃっ」


 攻撃を繰り出すたびに、アニエの口から気合の入った声が発せられる。

 アニエはひたすらにパンチやキック、たまに投技なんかを織り交ぜながら攻撃を続け、私はそれを受けながらも適度に反撃する。しかし、最終的に私の方の体力がなくなり、勝敗が決した。


「やったー、ユノちゃんにかったー」


 アニエがバンザイし、ぴょこぴょこ飛び跳ねながら全身で喜びを表現している。いつも通り超かわいい。


 さて、今私たちがなにをしているのかといえば、もちろんゲームです。格闘ゲームの対戦です。ついでに言えば、接待プレイです。

 ちなみになぜ接待プレイなのかと問われれば、そうしないと私が確実に勝ってしまうからというのが答えになります。確率で言えばほぼ百パーセントです。わざと私が負けないと、勝って喜ぶ可愛いアニエを見ることができないのでしょうがないのです。しかもあからさまな負け方をすると、むくれてすねる可愛いアニエを見ることができるというご褒美つきなのです。いえ、さすがにアニエの機嫌を損ねるというのは私の本意ではありませんので、ちゃんと接戦を演出しつつ、コンボや大技等で気持ちよく負けるという、私の有能っぷりを遺憾なく発揮しています。やっぱり、大技で勝負が決まると気持ちいいもんね。


「なんだ、ユノは弱いなー。ラエルが本当の勝負というものを見せてやるぞ」


 そんなセリフとともに、私の持っていたコントローラーがラエルちゃんに奪われる。次の対戦はアニエ対ラエルちゃんのようだ。どちらが勝っても負けても可愛い二人の姿が見られるという、私にとっては得しかない組み合わせですね。負けて悔しがるアニエも当然可愛いし、勝ってドヤ顔するラエルちゃんも、負けて放心するラエルちゃんもまた可愛い。つまり、どう転がっても可愛い。というわけで、私は観戦に徹します。


 さて、先ほど私がアニエに勝つ確率がほぼ百パーセントとお伝えしましたが、コレは別にアニエが弱いというわけではありません。むしろ結構強いです。地球の格闘ゲーム世界大会なんかに出たら、おそらく上位入賞できるんじゃないかというくらいには。こっちの世界の人間って、地球の人間よりも身体能力高いですしね。

 そんなアニエになぜ私がほぼ百パーセントの確率で勝てるのかというと、それは単純に、私が圧倒的にアニエよりも強いからです。身体能力的な意味で。なんせ私、レベル300オーバーですからね。

 レベルが関係あるのか?と思った方もいらっしゃるかと思いますが、それが関係あるんです。まあ、厳密に言えばレベルというよりも、敏捷のステータスが、ですけど。


 敏捷のステータスと聞けば、足の速さなんかを想像される人も多いかと思いますが、残念ながらそうではありません。むしろ筋力のステータスのほうが足の速さには関係あったりします。大地を蹴る力って、結構重要なんですよ。

 じゃあ敏捷のステータスってなに?ってことになりますが、答えを言ってしまえば、動体視力だとか、反応時間だとか、行動の機敏さだとか、そういったものに作用します。

 つまり、レベルが高く、敏捷のステータスが高い私は、格闘ゲームの、いわゆる1フレームすら余裕で認識でき、反応できてしまうのです。バトル物の漫画だとかでよくみかける『そんな遅い攻撃、止まって見えるぜ』ってやつに近い現象ですかね。なので、相手が攻撃してきたのを見てガードをする、なんてことは簡単にできますし、相手の攻撃のスキを見てこちらの攻撃を叩き込む、なんてこともできてしまうのです。

 というわけで、レベルが10にも満たないようなアニエと対戦した場合、わざと負けようとしない限り、負けようがないんですよね。


 これはある意味レベル上げの弊害と言っても良いのかもしれませんが、私のレベルが上がるにつれ、特定のジャンルのゲームが純粋に楽しめなくなりました。格闘ゲームを筆頭に、アクションゲームやシューティングゲームなんかはモロに敏捷のステータスの影響を受けるため、ゲームをしていても難しいと感じることがほぼなくなってしまったのです。

 もちろん、初見でなんでもかんでも完璧に攻略できるとは言いませんが、操作キャラの動き方や、ステージの流れ等、ある程度理解してしまえばほぼ確実にクリアはできてしまうんですよね。今ならきっと、鬼畜難易度で有名な某シューティングゲームの真ボスである『スカーレット()ビー()』ですら、余裕でノーミスクリアできるかもしれません。わざわざ試そうとは思いませんけど。いやほんと、今の私のステータスでプレイしても、弾避けだとか余裕すぎて全然楽しめないんですよね。あれはやはり、弾をギリギリで避けるスリルや、画面いっぱいの弾幕をすり抜けていくということに、カタルシスを感じるゲームだと私は思うんです。一番の醍醐味だと思うんです。そのいちばん重要な部分が簡単なゲームなんて、プレイしていても楽しいはずがありませんよね。


 レベル上げもゲームもどちらも大好きなため、反作用してしまうという事実を知った時はものすごくショックでした。しかし、その後でふと気づいたのです。よくよく考えてみれば、私が好んでプレイしているゲームは主にRPGなため、影響はほぼなかったということに。うん、思いっきり杞憂でしたね。まあ、他のジャンルもやらないわけではないので、残念なことには違いないですけど。


「やったー、ラエルちゃんにもかったー」

「…………………………」


 そんなことを考えつつもゲームを眺めていると、どうやら勝敗がついたようです。アニエは先ほどと同じように、手をバンザイの形にしてぴょこぴょこ飛び跳ねて喜び、ラエルちゃんは口をポカーンと開けて呆けている。ラエルちゃんの間抜け面が可愛い。

 少ししてラエルちゃんが意識を取り戻し、アニエに向かって言い放つ。


「今のはほんの小手調べだ。次は本気でやってやるから覚悟しろ」

「うん、わかったー」


 誰がどう聞いても負け惜しみなラエルちゃんの言葉に、アニエがニコニコしながら元気よく返事をする。まあ、アニエはみんなと遊べれば細かいことは気にしないからね。ラエルちゃんが一緒に遊んでくれるのが嬉しくてしょうがないんだろう。


 しかし、なにげにアニエは格闘ゲーム強いね。過去の対戦から勝率を計算してみると、ラエルちゃんに四割くらいの確率で勝ってるんじゃないかな?

 レベル10未満がレベル30オーバーに四割の確率で勝つって、結構すごいよね。

 これが地球での話ならば、地球の人類の性質上、レベルが離れていてもステータスにほとんど差がつかないからさほど不思議ではないのだけれど、こっちの世界ならば話は別だ。レベルの高さはステータスの高さに直結する。個人の資質として、アニエは敏捷が高めで、ラエルちゃんは敏捷が低め、というステータスの傾向はあるけれど、それでも20以上もレベルが離れていれば、ラエルちゃんのほうが圧倒的に敏捷のステータスは高い。敏捷は、数値にある程度の差があったとしても効果を実感しにくいという、比較的軽視されがちなステータスではあるけれど、それでも高いほうが有利なことには間違いない。


 そんな状況の中で、結構な確率でラエルちゃんに勝利できるアニエは、かなり優秀なゲーマーに育っているということなのだろうか。

 ラエルちゃんが弱いだけじゃね?という意見の人もいるかと思いますが、実はラエルちゃんもかなり強いんです。確かにラエルちゃんはあんな性格だし、注意力散漫っぽい雰囲気もありますし、ゲームも適当にプレイしているような印象もありますので、そう思ってしまうのもしょうがないんですけど、あの子、実は勝負事になると全力投球なんですよね。ものすごい集中力を発揮します。手加減なんて言葉は彼女には存在しません。

 そんな手抜きも油断もしていないラエルちゃんに勝利できるということは、アニエが単純に強いということに他ならない。アニエは余程格闘ゲームのセンスがあるんだろう。むしろ天才なのかもしれない。天才と可愛いが両方そなわり最強に見える。


「ふははははー、ラエルが本気を出せばこんなもんよ」

「うーーー、ラエルちゃんもっかい(もういっかい)、もっかい」

「良いだろう、カンプなきまでに叩きのめしてやるから覚悟するが良い」

「むー、わたしだってまけないもん」


 どうやら二戦目はラエルちゃんが勝ったようだ。これでアニエとラエルちゃんは一勝一敗。次の試合はどちらが勝つだろうか。まあ、私としてはどっちが勝っても負けても、可愛い二人が見られるので満足なんですけどね。

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