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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
1章 プロローグ的なもの
8/116

1-8.打ち切りじゃないよ?

「うーーーーん、おはよー、きぃちゃん」

『おはよう、ナハブ』


 伸びをしながら朝の挨拶を交わす。

 昨日はあれからすぐ良さそうな宿屋を発見し泊まる手続きをした。

 この宿屋は食堂が併設されていたようで、扉をくぐると中は結構な賑わいだった。

 あらかじめわかっていたら食事処を探し求めてあんなに歩く必要なかったのにな。

 まぁ、美味しいお店を見つけたから別にいいんだけど。


「きぃちゃん今何時?」

『間もなく10時といったところです』

「えっ?もうそんな時間?」

『昨日は色々あって疲れていたようでしたからね』

「あー、うん、確かに昨日はつかれた……。今日はさっさと冒険者登録してレベル上げにはげもうと思ってたんだけどな」

『まぁ、今からでも遅くはありませんよ』

「うん、そうだね。軽くなにか食べてから冒険者ギルドへ向かおう。確かこの近くだったよね」

『そうですね。宿屋にしろ冒険者ギルドにしろ街門の近くは都合が良いのでしょう』

「じゃあ早速行こうか」

『ナハブ、少し待ってください。話があります』


 出かけようとしたところをきぃちゃんに止められた。

 なにか忘れてることでもあったかな?


「どしたのきぃちゃん」

『そろそろデータの最適化作業を開始したいと思うのですがよろしいでしょうか?』

「あれ?まだ始めてなかったんだ」

『念の為、安全な場所へ辿り着くまでは保留していました。街へと辿り着き当面の安全は確保されたかと思いますので、そろそろ開始しようかと』

「うん、いいんじゃない?あ、ちょっとまった、一つ確認させて」

『何でしょうか』

「最適化作業を始めちゃうと会話くらいしか出来なくなっちゃうって言ってたよね?そうなるとやっぱり能力育成のサポート機能ってやつは使えなくなっちゃう?」

『その程度の機能でしたら問題なく使用可能です。補助的な機能は比較的リソースの消費が少ないものが多いので、そういったものでしたら最適化中でも使用することが出来ます。因みに、魔物の分解機能も使用可能ですので、思う存分魔物を倒して沢山の素材を集めましょう。但し、体力や魔力の高速回復の為の補助機能はリソースをかなり消費してしまうため使用不可となりますので、体力・魔力切れには注意してください。まあ、あなたの場合は魔力切れの心配はないでしょうが』

「あーよかった、使えないとかいわれたら能力の最適化とかでまた痛い思いしなくちゃならないのかと思った。じゃあ、始めちゃっていいよ」

『了解しました。それでは約1ヶ月間、私の機能が制限されますので留意しておいてくださいね』

「はいよー」


 そして私は宿屋に併設された食事処で軽く食事を取り、冒険者ギルドへ向かって歩いて行く。




 おぉーーーーーー、これが冒険者ギルドか。

 宿屋から歩いて十数分、如何にもな建物を発見した。

 やっぱりこうでなくっちゃね。期待を裏切らない佇まいに、建物に入る前から既に私は満足していた。

 いやいや、ここで満足してちゃもったいないよね。

 早速扉に手をかけ、中へ入り込む。


 よく話に出てくるような酒場は併設されていないようで、如何にもお役所ですといった雰囲気だ。まぁ、これはこれでお約束だよね。

 さて、冒険者登録は……一番はじか。

 場所を確認するとすぐさま受付へと向かう。


「すみません。冒険者登録をしたいのですが」

「はい、冒険者登録ですね。……えーと、あなたがでよろしいでしょうか?」

「はい、私が登録します」

「失礼しました。それでは、お名前、種族、年齢、レベル、犯罪歴を確認させていただきますがよろしいですか?」

「はい」

「それではこちらの台の右側に手をのせ、少しだけ魔力を流してください」


 受付の机には街門隣の詰め所にあった台と同じようなものが置いてあった。

 同じやつかな?私はいわれたとおりに操作する。


「左側に表示された内容に間違いがないか確認をお願いします。文字が読めなければ代読致しますが」

「読めますので大丈夫です」


 えーと、名前:ユノ・ナハブ、種族:人族、年齢:13、レベル:23、犯罪歴:無。

 うん、詰め所で見たのと同じだ。


「内容に間違いはありません」

「では、カードを発行いたしますね」


 受付のお姉さんが台を操作するとカードのようなものが出てくる。


「ユノ・ナハブさん、人族、13歳、レベル23、えっ?23っ?」


 あー、これ昨日街門隣の詰め所でもやったよ。天丼ってやつだっけ?


「それであってます」

「あ、済みません。失礼しました。ちょっと意外なほど高レベルでしたので」

「街門隣の詰め所でも同じこといわれました」

「あ、そうですか」


 お姉さんは苦笑いしていた。


「それではこちらが冒険者ギルド加入の契約書となりますので、内容をご確認いただきサインをお願いします」


 1枚の紙とペンを渡される。

 えーと、冒険者ギルドの規約か。冒険者として節度ある行動を心がける。冒険者同士のトラブルには、明らかに片方に原因がある場合や、冒険者ギルド運営上の問題がある等の例外を除き、基本的には冒険者ギルドは介入しない。依頼の受注方法。依頼破棄の違約金。依頼実行中に重大な問題が発生した場合の報告。等々。

 うん、特に問題ないかな。サインをしてお姉さんに渡す。


「はい、ありがとうございます」


 お姉さんが書類に目を通す。


「それではこちらがユノさんの冒険者ギルドカードとなります」


 そしてついに冒険者ギルドカードが私の手に!

 って、あれ?なんかカード真っ白なんですけど……。

 そのカードには、冒険者ギルドのロゴのようなものと、枠の模様以外何も記載されていなかった。


「あの、カードに何も記載されてないんですけど」

「はい、カードに所有者登録を致しますので、血を一滴カードに垂らしていただけますか」


 あ、まだ手続き終わってなかったのね。

 渡されたナイフを使い自分の指を傷つける。

 痛っ。戦いとかで血を流すことはあるけど、自傷するのはやっぱり抵抗あるよなぁ。

 にじみ出てきた血を一滴カードへと垂らす。

 するとカードへ血が染みこんでいき、血は跡形もなく消えた。


「では、カードを手に取り、少しだけ魔力を流してください」


 カードに魔力を流すと、カードが淡く光り、私の情報が表示された。


「これでカードの所有者登録は完了です。個人情報保護のため、本人がカードに魔力を流すか、冒険者ギルドの読み取り装置を使用しないと情報は表示されません。また、5分経過すると表示は消えてしまいますので、再度表示させる場合はその都度魔力を流してください」


 おおー、なんかすごい。

 カードを確認すると、先程も確認した名前や種族なんかとともに経過:0年という表示が目に入った。


「他、何か質問等ありましたらどうぞ」

「すみません、この最後に書いてある経過:0年って何ですか?」

「それは冒険者ギルドに登録してから何年経過したかという表示ですね。依頼主が冒険者を雇う際の指標になったりもします。とは言っても、同じ年数でも勢力的に活動する人もいれば消極的な人もいますので、絶対的な指標というわけでもないのですが。一般的にはレベルと経過年数を合わせて指標とされる場合が多いです」


 なるほど、この星の冒険者ギルドはギルドランクみたいなのではなくて、レベルや経過年数を見てその人の実力を測るのか。

 最年少でギルドランクAに!!みたいなことを期待していなかったといえば嘘になるけど、これはこれで面倒がなくていいかも。よく言われるギルドランクを上げるための依頼なんてものを受ける必要がないので、好きな依頼だけ受けられるしね。


「他には何かありますか?」

「大丈夫です。ありがとうございました」

「それでは、これで登録は完了となります。本日は当ギルドへのご登録ありがとうございます。今後共よろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いします。それで早速なのですが、魔物の素材はどこで買い取ってもらえばいいんでしょうか?」

「買い取りのカウンターは建物2階となります。2階に上がってすぐにカウンターがございますのでそちらへお願いします」

「わかりました。ありがとうございました」


 私は早速2階へ向かった。

 おおー、すごい広い。

 これ、丸々2階が素材買い取りのスペースなんだろうか。

 魔物の素材って結構かさばるからなぁ。

 そんな風にぼけーと眺めていたら声がかけられた。


「お嬢ちゃん、何か用かい?」

「あ、素材の買い取りをお願いしたいんですけど」

「買い取りか、それじゃあ査定に出したいものをそこの机の上に全部出して、ギルドカードを提示してくれ」


 いわれたとおり昨日狩った魔物を全て出し、ギルドカードに魔力を流しておじさんに見せる。


「ほうほう、嬢ちゃん13歳なのにレベルが23もあるのか。それならこの魔物の数も納得だな」


 そう言っておじさんは大量の魔物の素材を確認していく。

 そう、大量なのだ。

 先日、ワンコの魔物を倒して、これでご飯にありつけるぞと思った矢先、出るわ出るわ、ウサギやら何やらの小動物系の魔物が。

 それまで全然出てこなかったのに、もう出てこなくていいやと思った途端大量に湧いてくるとはこれ如何に。

 まあ、倒すのも素材にするのも一瞬だから別にいいといえばいいんだけど、何か納得のいかないものを感じた。


「ふむ、量も量だが質も良いな。しかもロアーウルフまでいるか」

「ロアーウルフって強いんですか?」

「レベルもあるし、群れをなしているんでな、この辺りでは一番厄介な魔物なんだよ。まあ、そんなことを聞くってことは嬢ちゃんには何でもないんだろうがな。よし、査定終わったぞ。全部で2,250エンになるがどうする?それと内訳は聞くかい?」

「内訳はいいです。それでお願いします」

「それじゃあちょっと待っててくれ……2,250エン、っと。確認してくれ」


 お金を確認し、収納魔法に放り込む。


「それでは、ありがとうございました」

「おう、また来いよ」


 そして私は1階へと戻り、今度は依頼の貼られた掲示板へと向かう。

 さて、どんな依頼があるのかな?

 といってもめぼしい依頼は無いようだ。

 やっぱり早くに来なくちゃなくなっちゃうんだろうな。

 うん、今日はいいや。さっさと街の外へでて魔物を狩ろう。


 そして私は冒険者ギルドを後にし、街門へと向かった。

 そういえば冒険者ギルドでのお約束のチンピラに絡まれるイベントが発生しなかったなぁ。

 まあ、そんなしょっちゅう絡んでくるほどチンピラもヒマじゃないよね。




「オディスさん、こんにちは」

「おっ、ユノか」

「お金ができたんで返しにきました」

「じゃ、手続きするから詰め所だな」


 他の衛兵たちに断って、2人で詰め所へ向かう。

 中へ入り、契約書を再度確認し、お金を返す。

 すると、契約書が淡く光り、「了」の文字が浮かび上がった。

 いや、日本語じゃないから厳密に言うと「了」じゃないんだけどね。

 そして私の腕の追跡の魔道具も外してもらう。


「これで返済完了だ。それにしてもお金をアイテムボックスにしまうようになったんだな」


 言葉の意味がよくわからなかったので愛想笑いを返しておく。

 そしてすかさずきぃちゃんに確認。

 どうもこの星ではアイテムボックスはそれなりに普及しているそうだ。それなりに高額なので庶民まで持っているというほどではないらしいが。そして私の収納魔法と違って、容量に制限があるらしい。その限られた容量をお金を入れるのに使いたくない人とか、お金はそれなりの頻度で使用するため、アイテムボックスに入れて出し入れするのが面倒とかいう人が結構いるそうな。

 私もそんな中の1人で、魔物に襲われてお金を失った経験からアイテムボックスにお金を入れるようになったんじゃないかと思われているのだろうとのこと。

 なんとまあ私に都合のいい勘違いをしてくれるものだ。


 なにはともあれ、これで必要なことは一通り終わったかな。

 さあ、外へ狩りへ出かけよう。

 私たちの冒険はこれからだ!

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