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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
4章 私の妹がこんなに可愛い
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4-10.おれは しょうきに もどった!

 さて、ラエルちゃんの部屋なんだけど、基本は私達の部屋と同じだ。やっぱり家の外観はログハウスなわけで、この部屋だけ他の部屋とかけ離れたものにするわけにもいかないじゃない?でも、それじゃラエルちゃんの希望である『強くてかっこいい』を実現させるのは難しい。ということで、からめ手で攻めてみました。


 まず部屋。私たちの部屋と同じく普通の部屋なんだけど、部屋の中央にオブジェを設置。全長一メートルくらいの木彫りのドラゴンです。やっぱり『強くてかっこいい』と言えば、ドラゴンは外せないですよね。


「ねえ、ラエルちゃん。そのドラゴンに近づいてみて」

「ん?このドラゴンにか?……ふぉぉぉ?」


 ラエルちゃんが木彫りのドラゴンに近づくと、木彫りのドラゴンはラエルちゃんの方に顔を向け、立ち上がり、ゆっくりとラエルちゃんに向かって歩きはじめます。

 そう、このドラゴン、実は動くのです。部屋内を悠々とかっぽします。ただの木彫りのドラゴンかと思わせておいて、実はゴーレムの性質も持ち合わせているのです。ラエルちゃんは歩き出した木彫りのドラゴンを見て、目をキラキラとさせています。しかし、この程度で驚いてもらっては困るのだよ。ということでちょっとびっくりしてもらおう。


「ファイア」


 私がドラゴンにそう命令すると、頭を持ち上げ息を吸い込むようなモーションを始める。この時点でラエルちゃんは「おぉー」とか言っているけど、これで終わりじゃないんだなぁ。

 木彫りのドラゴンが息を吸い込み始めて少しすると、口の中に炎のようなものがチロチロと見え始める。すると、ラエルちゃんも口の中の炎を確認したのか、一気に表情が変わる。すかさず木彫りのドラゴンが首を振り下ろしながら、口の中の炎をぶちまけた。ファイアブレスだ。


「ちょ、な、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?」


 ラエルちゃんが悲鳴を上げる。……悲鳴って言っていいのかな、あれ。ラエルちゃん見た目美少女なのに、悲鳴に色気がなさすぎる。お兄ちゃんもお姉ちゃんも驚愕に目が見開かれており、唐突な出来事に動くことすらできず、炎に飲まれるラエルちゃんを見ているしかできなかった。


「って、ちょっ、ユノちゃん!なにしてんの!速くあれ止め――」

「あははははははー、なんだこれ、なんだこれ、すげー」

「て……え?」


 事態を把握したお兄ちゃんが血相を変えて私に詰め寄ろうとしたところで、ラエルちゃんの元気な笑い声が聞こえてきた。ドラゴンのブレスが終了すると、そこには満面の笑みのラエルちゃんが、こちらに向かって手を振っていた。


「なぁなぁユノ、なんだあれ?全然熱くなかったぞ」

「あのブレスはね、全部幻でできているから熱くないんだよ。でも、迫力あったでしょ」

「おぉ、死んだと思ったぞ」


 ふふふ、ドッキリ大成功。ラエルちゃんも喜んでいるみたいだし、ドラゴンも、ブレスの幻も、作ったかいがあったよ。……と思っていたら、お兄ちゃんからクレームが入った。


「ちょっとユノちゃん、ああいうのは心臓に悪いから勘弁してよ。せめてあらかじめ教えておいてくれるとかさぁ」

「えー、でも、あらかじめ教えちゃったら、みんなびっくりしてくれないじゃん」

「いや……びっくりしてくれないじゃんって……」

「せっかく作ったのに、反応が薄いとさみしいじゃない」

「いや、だからってあれは……」

「この子に文句を言ったところで、どうにもなりませんよ」


 お兄ちゃんは私の言葉になかなか納得してくれない様子だったけど、ここで救世主登場。きた!きぃちゃんきた!これで勝つる!

 きぃちゃんが私の援護に入ってくれるなら、私にもう負けはない。きぃちゃんに口で勝てる人なんて見たことないからね。私だって全戦全敗だ。……私が弱いだけだという意見は聞こえません。


「この子はこういう子なので、早めに慣れるか諦めるかしたほうがいいですよ」


 ……ん?


「それでも文句があるというのなら、迂闊にもこの子の兄になってしまった自分自身に言ったほうが、余程生産的だと思われます」


 ……んん?


「この子の頭の中は既に手遅れなので、常人の思考回路と同じだと思っていると痛い目を見ますよ」


 ……あれー?おかしいな、きぃちゃんって私の援護をしてくれてるんだよね?私のことをディスってるわけじゃないんだよね?

 お兄ちゃんはきぃちゃんの言葉で反論をあきらめたようだけど、なんか納得がいかない。結果的には確かに私の援護になってくれたんだろうけど、なんか納得がいかない。きぃちゃんが笑顔で私のことを見ているような気がするけど、全っ然納得がいかない!

 お兄ちゃんとお姉ちゃんが生暖かい目で私を見ているような気がする。ムッキー!みんなして私をバカにして!こうなったら、さらなる驚愕の渦へと巻き込んでくれよう。私は壁にあるスイッチを操作した。


「うわっ、何だ?」


 私がスイッチを操作した瞬間、部屋の中が光に包まれた。お兄ちゃんの驚きの声が聴こえる。ふはははは、刮目してみよ!これぞこの部屋最大のギミックである。


「おぉー、すげー」


 光が治まると、そこは一面の草原になっていた。ラエルちゃんが興味津々に、あちこちをキョロキョロと見ている。これがラエルちゃんの部屋のために私が作成した、フィールド切り替えスイッチだ。


 せっかくドラゴンがいる(木彫りだけど)というのに、普通の部屋じゃもったいない。でも、ラエルちゃんの部屋だけ他の部屋と内装を大きく替えてしまうと、家としての統一感が損なわれる。そんなジレンマを解決してくれるのがこれだ。

 切り替え式にすることで家の統一感を大きく損なうことなく、気分でフィールドを切り替えてドラゴンを愛でる。これが私の作ったラエルちゃんの部屋のコンセプトです。

 ちなみに切替可能なフィールドは、草原、荒野、洞窟、火山地帯、浜辺、遺跡、等々多岐にわたる。さらにはドラゴンにしても、ブレス(ファイアの他にもアイスやサンダーなんかもあります)を吐いたり、空を飛んだり、眠ったり、かっこいいポーズをとったりと、様々なアクションを備えています。ついでに言うと、幻で木彫りのドラゴンを本物そっくりの質感に見せることも可能だったりします。飽きがこないようにと色々がんばりました。


「どう?ラエルちゃん」

「ここ、ラエルの部屋だよな?ラエルの部屋でいいんだよな?嘘じゃないよな?」


 私が部屋の感想を求めると、ラエルちゃんは目をキラキラとさせながら私に問い詰めてきます。どうやら気に入ってもらえたようです。頑張って作ったかいがありました。


「よーし、お前はカインな。よろしくなー、カイン」


 ラエルちゃんは同居人である木彫りのドラゴンに、早速名前をつけていた。って言うか、なんでその名前?竜繋がり?いや、ラエルちゃんはそのネタ知らないか。しかし、いつか裏切りそうな名前ですね……。


 さて、これで三人の部屋を案内したわけですが、最後に私の部屋も案内しておきましょう。とは言っても、別になんの変哲もない普通の部屋なんですけどね。部屋自体は。

 私がお兄ちゃんに見せたいのは部屋の中にあるアレやコレです。きっと、お兄ちゃんも気に入ってくれることでしょう。というわけで……。


「じゃーん!ここが私の部屋です」


 そう言って自分の部屋の扉を開け放つ。そして部屋の中を確認したお兄ちゃんの目が、驚愕に見開かれた。


「……え?……テレビ?……ゲーム機?」


 そう、私の部屋にはゲーム機が置いてあるのです。迷宮探索の時、雑談にゲームが好きだったという話も出ていたわけですし、きっと喜んでくれるはず。

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