表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
4章 私の妹がこんなに可愛い
76/116

4-7.きぃちゃんからナチュラルにディスられたような気がする

 二十五層を越えて少ししてから、ふと気になったのでレベル上げの目的をイツキさんに聞いてみました。え?今更すぎないかって?だってしょうがないじゃないのよ。初めてのパーティでの迷宮探索に浮かれて、そんなこと考えもしなかったんだから。で、やっと私の心に少しだけ余裕ができ、今更になってそんなことを考えてしまったというわけなのです。

 話を聞いてみると、ラエルちゃんを故郷に送り届けるために力が必要だとのこと。あー、確かに亜大陸を旅して回るのならば、もっと力が欲しいところだよね。亜族の中には、人族に対して良いイメージを抱いていない人たちもそれなりにいるわけだしね。


 このままレベル上げに協力しても良かったんだけど、そういう理由ならば早いほうが良いかと思い、私が送ろうかと提案してみる。そして早速きぃちゃんの調べた、ラエルちゃんの故郷第一候補へと転移魔法で移動する。当然のことながら、一発目で当たりです。さっすがきぃちゃん、候補という言葉を根底から覆すこの所業。もう候補とか言わずに、確定しちゃっても良いんじゃないのかな?だって今回だけじゃなくて、いっつも第一候補で全てが終わっちゃうんだもん。第二候補以降の気持ちも考えてあげてください。『あ、俺ら用なしっすね、それじゃ。てか、第一候補さん以外必要ないなら、毎回俺ら呼ばないでくださいよ』たぶんこんな気持ちだと思う、勝手な想像だけど。


 さて、無駄話(無駄想像?)はここまでにしよう。無事、ラエルちゃんを親元へ届けることができたわけなんだけど、どうやらイツキさんたちは、エルフの適当さを目の当たりにして唖然としているようだ。

 あれ?エルフの種族性はご存じない?ラエルちゃんがいるんだから、知っていても良さそうなものだと思うんだけど、サンプルがラエルちゃんだけじゃわからなかったのかな?ラエルちゃん個人の性格だと思っていたのかな?いいえ違います。ラエルちゃんの性格は、モロにエルフという種族の性格そのものと言っても過言ではありません。

 つまり、エルフは超適当な種族ということなんだよ!なっ、なんだってーーー!!

 いえ、私は知ってましたけどね。


 とは言え、このまま呆けさせておくわけにもいかないので、用事も済んだことだし私の家で一息つかないかと言ってみれば、ラエルちゃんがものすごい勢いで食いついてきた。


「ユノの家か?もちろん行くぞ。存分にラエルたちのことをもてなしてもいいのよ?あ、ラエルお腹減ったから、ハンバーグなんかがあるといいな」


 うん、さすがはエルフ、遠慮というものを知らない。というか、さすがにここまで厚かましいのはいくらエルフでもなかなかいないよ。ラエルちゃんの自由人っぷりがハンパない。


 そしてマイホームへと三名様ご招待、ということで早速我が家へと転移してきたわけですが、イツキさんとノーティさんは相変わらず唖然としたままだった。ふっふっふ、私が見た目と快適さとロマンと、あとなんかそれっぽいものを追求して創り上げた、最高傑作ともいえるマイホームだ。存分に驚くが良い。

 ラエルちゃんは唖然としている二人とは逆に、あちこちをキョロキョロしながら「おぉー」だとか「なんだこれ」だとか「すげー」だとか言いながらはしゃいでいる。というか、キョロキョロするだけでなくチョロチョロもしていた。やっぱりマイペースなだけあって物怖じしないねこの子は。


「なぁなぁ、ユノ。この木なんだ?なんでこれだけ木なんだ?花じゃないのか?」


 ラエルちゃんは、色とりどりの花の咲き乱れる、様々な花の植えられた花壇とは違い、そこかしこに植えられている、一種類しかない木に興味があるようだ。


「それはね、桜の木っていってね、私とイツキさんの故郷でとても愛されている木であり、花なんだよ。きれいでしょ?」

「ほー、なるほどなー、確かにすごいなー」


 ラエルちゃんはそう言いながら桜の木を眺め、そしてひらひらと舞い落ちる桜の花びらを目で追っていた。どうやらラエルちゃんは桜の木が気になるようだ。木だけに。

 ……いや、ごめんなさい。魔が差しただけなんです。言ってみたかっただけなんです。つまらないということはよくわかっているのでクレームとか入れないでください。


 私は桜の木が大好きなので、こうやってマイホームにもたくさん設置させてもらいました。ちなみに、花はよくわからないので全部きぃちゃんに丸投げです。花壇になんの花が咲いているのかだとかは、私にはわからないので聞かないように。え?それじゃ全然『全てが私プロデュース』じゃないじゃないかって?そんな細かいことは良いのよ。ちゃんときぃちゃんに『空中庭園っぽく、きれいでおしゃれで華やかな感じに』って指示してやってもらったんだから、これはある意味私プロデュースであってると思うんですよ。というか、たったこれだけの指示で、私が一目惚れするレベルの花壇を作り上げるきぃちゃんがマジパネェ。そしてそれにも負けずに存在を主張している桜の木もマジパネェ。


 そんな私の大好きな桜なんですが、実はちょっと前までは大っ嫌いだったんですよね。理由ですか?私の大大大っ嫌いなロクデナシ共(私の両親)の名字に、桜という文字が使用されているからですよ。

 え?そんな理由で?とお思いの方もいらっしゃるかとは思いますが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとはよく言ったもので、あいつらに関係するもの全てが嫌で嫌で仕方がなかったんです。当然のことながら、あいつらの関係者として最たる存在である自分のことも、大嫌いでどうしようもなかった時もありました。まあ、きぃちゃんと出会ってからは、少しずつ自分のことを好きになっていくことができましたけどね。


 そしてそんな私を心変わりさせる出来事がありました。とある迷宮を攻略していた際、新しい階層へとたどり着いた時に目に入った、満開の桜、桜、桜。それがとても美しく『あぁ、桜ってきれいだな』としみじみと思ってしまったのです。え?どこの迷宮だって?いやだなー、ゲームですよゲーム。もう少し具体的に言うと、有名DRPGの二作目の第四階層(桜ノ立橋)です。

 この頃になると、と言っても本当につい最近のことですけど、あいつらが嫌いなことに変わりはありませんが、正直言ってどうでもいい存在となっており、さすがに『袈裟まで憎い』ということはなくなりました。そんな時に、私が桜を見る時に一緒に覗いていた、嫌なイメージのフィルターを全て取り払ってみると『あれ?桜ってきれいじゃね?』ということに気づいてしまったのです。今まであいつらのせいでもったいないことしていたなぁ……。いや、私が毛嫌いしていたのが悪いと言われればそれまでなのですが。

 ちなみに『空中庭園に桜』という組み合わせは、モロにこのゲームの影響を受けていたりします。いや、マジで美しくて感動的なんだって。大嫌いだったものを大好きへと変化させてしまうとは、恐るべしゲームの力。きぃちゃんには『そんな単純な思考回路をしているのはあなただけです』とか言われたけど、きっと他にもいると、私は信じている。……いるよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ