表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
4章 私の妹がこんなに可愛い
74/116

4-5.きぃちゃんの名前、みんな覚えているかな?

 その日はいつものようにお昼ごろから満月堂で働いていました。え?朝から働かないのかって?朝は眠いのでお布団にこもっています。私は一日九時間以上寝るのです。寝るのは大好きなので、その気になれば十二時間くらいは余裕ですよ。それに、寝る子は育つって言うしね!本当、早く育って欲しい……。


 そんなわけで労働に勤しんでいたところ、どうやら私にお客さんが来たようなのです。

 アニエが言うには、私の杏仁豆腐を狙ってやって来たらしい。むぅ、私の杏仁豆腐を奪おうとするとはふてぇ野郎だ。ん?野郎じゃないのか?女の人の場合なんて言うんだろう?そんなことを考えていたら、きぃちゃんから念話が届いた。


『そこにいる黒髪の人は女性ではなく男性ですよ』


 ……マジですか?いや、きぃちゃんが言うならマジなんだろうけど、どう見ても女の人にしか見えない。こういう人って本当にいるんだね。漫画や小説の世界だけの存在だと思ってたよ。さすが異世界、色んな人がいるもんだ。


 まあそれはさておき、とりあえず私の愛する杏仁豆腐ちゃんをさらいに来た三人組を確認してみようじゃないか。イツキ・タチバナ、ノーティ・フルル、ラエル・ティティリア、レベルは……おぉっ!47に30、28、なかなか高いじゃないか。この世界基準で言えばなかなかの実力者だね。おそらくリーダーはレベル47のイツキ・タチバナと言う男の人……あれ?なんか日本人みたいな名前だよねこの人。

 そう思い、称号の欄を確認してみれば異世界人の文字が。ああ、この人きっと私と同郷だ。女の人みたいな男の人がいるなんて異世界スゲェ!と思ったら異世界関係なかった!

 なるほど、と言うことは、杏仁豆腐という単語をアニエから聞いて、私を日本人だと推測し接触してきたというわけかな?それに、この店にはこの間きぃちゃんから教えられた、日本人には馴染み深い料理がいくつかあるわけだしね。そりゃぁ日本人がいるかもしれないと思ったら会ってみたくもなるか。


 とは言え、ここは食堂なのです。ただで情報はあげられません。アテクシ、そんな安い女じゃなくってよ?

 席に案内し、注文を聞くとイツキさんは驚いたようだ。いや、ここ食堂ですよ?ご飯食べるところですよ?ご飯食べない人が来る場所じゃないですよ?さぁ、注文をするのです。




 食事の後、話を聞いてみるとやはり私が日本人ではないかと思って訪ねてきたらしい。どうやら私の不注意でメニューに加わってしまったあれやこれやの料理たちや、この世界の材料で作れなかった杏仁豆腐(本当は似たものは作り出せたのですが、この辺であまり流通していないものが使われているため、作れなかったことにしています)をなぜか私が持っていたということに興味津々な様子でした。色々と聞かれましたが、さすがに『きぃちゃんが全てやってくれました』なんて言えるわけがないので(だって答えになってないじゃない?)色々とごまかせる魔法の言葉『秘密』を唱えておきました。うん、便利ですよね、秘密って言葉。


 そして話は続き……やはり『日本人』が『異世界』に『転移』したとなると、お決まりの話題『チート』の話に。

 イツキさんが日本人の仕様をチートだと思っていたという悲しい事件があったりもしたけど、結局二人ともチートはなかったという結論に。でもイツキさんは、チートはなかったけどノーティさんとラエルちゃんという仲間ができたわけだから、この世界での生活も悪いことばかりじゃなかったと言っていた。ぐぬぬ、仲間なんかうらやましくなんて……ちょっとうらやましい……。仲間と一緒に冒険だなんて『異世界に行ったらやりたいこと』の上位に入るじゃないですか。私も機会さえあれば……機会、あるのかなぁ……。


 だがしかし、私にチートはなかったけど、それに匹敵どころか凌駕する存在がいた。そう、きぃちゃんだ。と言うことで、私は早速イツキさんにきぃちゃんを自慢したわけなんだけど、なぜだかわからないけどきぃちゃんに怒られた。あれー?おかしいなぁ?私、きぃちゃんを褒め称えたはずなんだけどなんで怒られたんだろう?解せぬ。

 ともあれ、きぃちゃんになんで怒られたのかはいまいちわからなかったけど、イツキさんにはきぃちゃんがいかに素晴らしい存在なのかということを理解してもらえたようで満足。余は満足じゃ。イツキさんもきぃちゃん信者になってもいいのよ?なんてったってきぃちゃんは色んな意味で最強だからね。あ、でもきぃちゃんはあげないからね。私の大事な大事な相棒なんだから。


 話が一段落すると、イツキさんはきぃちゃんに名前を聞いていた。

 お?ナンパかコノヤロウ。きぃちゃんに目をつけるとはわかってるじゃないか。なんて冗談はさておいて、単純になんて呼んだら良いのかわからないから聞いたんだろうね。私がずっときぃちゃんと呼んではいたけど、ちゃんとした自己紹介はしてなかったしね。しかし現実は無情。きぃちゃんの答えはこうだった。


「私のことでしたら、親しみを込めてきぃちゃんとお呼びください」


 どうやらきぃちゃんは私のつけた愛称である「きぃちゃん」を非常に気に入っているようで、名前を聞かれるたびにそう答えている。でもさ、本当にそう呼べるのってさ、小さな子供くらいだよね。いや、私は例外ですよ?なんてったって私はきぃちゃんの唯一無二の相棒なわけですから、愛称で呼ぶのなんて当然じゃないですか。決して私が小さな子供というわけではないのです(震え声)。

 しかし「きぃちゃん」と呼ぶことに抵抗があるから名前を聞いたというのに「きぃちゃん」と呼べと言われても困るよね。当然ながらイツキさんは他の呼び方はないのかと再度質問する。そこできぃちゃんが渋々ながら「メイ」と呼べと答えるまでが、きぃちゃんに名前を聞く人のテンプレだったりする。(有象無象には答えすらしないけど)

 ちなみになんで「メイ」なのか?疑問を持った私が以前きぃちゃんに聞いたときの会話がこれだ。


「ねぇねぇきぃちゃん、なんで名前聞かれた時にメイって答えてるの?」

「……私の正式名称を言ってみなさい」

「……えっと……なんだっけ?」

「…………………………………………」

「………………」

「…………………………………………」

「ごめんなさい、冗談です。ちゃんと覚えてるから!忘れてないから!」

「…………………………………………」

「きぃちゃんの名前はキザイアメイスンであります!」

「…………………………………………」

「………………」

「…………………………………………」

「……あ、メイスンのメイ?」

「……はぁ……そうですよ」


 無言のきぃちゃんがムッチャ怖かったです。アレは本当にヤバかった。最後はちょっと呆れられていたようだったけど、無言よりは全然マシだ。ちょっとたちの悪すぎる冗談だったようだね。反省反省。

 と言うかですね、自分に置き換えて考えてみると、それがどれほどひどい冗談だったのかがよく分かるというものなのですよ。私、きぃちゃんから「あれ?あなたの名前はなんでしたっけ?」なんて言われたら泣く。絶対に泣く。本っ当にごめんよきぃちゃん。




 久しぶりの日本人と話をしていると、いつの間にか結構な時間が経っていた。そろそろ話を切り上げようかという雰囲気になっていたところで、イツキさんが思い出したかのようにきぃちゃんに質問をした。


「メイさんは『異次元迷宮イグドラジル』って知ってますか?」


 その言葉を聞いた瞬間、私は思わず言葉を口にしていた。


「え?イツキさん迷宮に挑戦するの?」


 きぃちゃんが少し呆れたような視線を私に向けているような気がするけど、気にしない。仕方がないんだよ。だって、私の創った迷宮に挑戦するのかもしれない人が目の前にいるんだから。

 もしかしたら私の願いが一つ叶うかもしれない。そんな思いを胸にイツキさんの言葉を待っていると、やはり迷宮に挑戦するようだ。

 このチャンスを逃すわけにはいかない。そう思うと同時に、私は自分をアピールする言葉を発していた。


「じゃあさじゃあさ、私のこと連れてってみない?私むっちゃ役立つよ。めっさ役立つよ。空前絶後に役立つよ!!」






 後にきぃちゃんは語った。

 「ナハブが必死過ぎて見ていられませんでした」と……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ