表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
4章 私の妹がこんなに可愛い
70/116

4-1.『自称』ぼっち体質がたくさん

 私が迷宮を創り出してから一年以上の時が過ぎました。

 ちゃんと冒険者ギルドに知らせて宣伝したおかげで、たくさんの冒険者がやって来ます。

 最初こそおっかなびっくりに歩を進めていた冒険者たちも、今では慣れてきたせいか悠々と闊歩している様もよく見られるようです。

 迷宮の噂を聞いてわざわざ遠くからやってくる冒険者も結構いるようで、迷宮に挑戦する冒険者の数も日々増え続けているとのこと。おかげで迷宮の周りにちょっとした街のようなものができました。




 私の迷宮大・繁・盛。いやー製作者冥利に尽きますなぁー。やっぱりさ、せっかく作ったんだから挑戦してくれる人がたくさんいるのは嬉しいよね。いや、別にさ、私の迷宮に人がたくさん来たからって何かがあるわけじゃないんだけどさ、見向きもされないってのも寂しいじゃない?誰も来てくれないよりは来てくれたほうがいいじゃない?私のやりたいことをふんだんに盛り込んだ趣味全開に楽しんで創った迷宮だけど、人がたくさん来てくれるということはとてもありがたいことなのです。ってことで、私は今とっても充実しているのです。最高に「ハイ!」ってやつなのです。ひゃっほい。めでたしめでたし。






 さて、なぜ私がこんなにうかれているのかというと、とても嬉しいことがあったからなのです。

 なんと、私にお兄ちゃんができました。さらにはお姉ちゃんもでき、妹も一人増えました。

 私がまだ地球で生活していた頃、私は一人っ子だった上に両親のおもちゃ扱い。学校では名前のせいでいじめのような扱いを受けており、はっきり言って周りは全て敵のようなものでした。なので、いつも妄想していたのです。優しくて私のことを可愛がってくれる、お兄ちゃんやお姉ちゃんがいたらなぁって。

 念願叶い、地球からはなれたこの世界で、幾度も夢想していたお兄ちゃんができたのです。


 え?お前にはきぃちゃんがいるだろうって?確かにきぃちゃんは私の最高の相棒ではあるんだけど、優しいお姉ちゃんかと言えば……ねぇ?

 いや、きぃちゃんが優しくないって言ってるわけじゃないんですよ。ただ、私は私のことをもっと甘やかしてくれる兄姉が欲しかったのです。きぃちゃんも甘やかしてくれないわけではないのですが、私の度が過ぎると指導が入るのがなんとも……。いやまあ、度を越す私が悪いと言われればそれまでなのですが。


 私の兄となってくれた人はなんと、私と同じくこの星へと転移してきていた日本人、イツキさん。パッと見女の人に見えるけど、男の人らしいです。お姉ちゃんと呼ぶと怒られます。別にいいじゃないのさ、どうせ周りの人からも女の人だと思われてるんだし、私がお姉ちゃんって呼んだところで大して影響ないじゃん?なんて思っていたら、男に見られるようにと髪も短くしてるし、男っぽい服装をしているはずなのに、それでも結局女性に見られることに悩んでいたようで、いっそ髪を剃ろうかと決断しかけていたところをみんなで慌てて止めたこともありました。さすがにここまで思いつめている人をお姉ちゃん呼びすることはできませんよね……。そんな出来事があってからはお姉ちゃん呼びは封印しました。残念。


 そしてお兄ちゃんのパーティメンバーのノーティさんがお姉ちゃんに、ラエルが妹になりました。当然アニエも私の妹です。一気に兄姉妹が増えました。

 お姉ちゃんは口数は少ないけど優しいし、ラエルは年が近いせいか妹というよりも友達みたいな感覚だし(念願の同年代の友達です)、アニエは超超超超可愛いし、私は今、人生での幸せのピークを迎えていると言っても過言ではないと思っています(確信)。


 そして現在、新しい家族たちは私の家に居候中。そう『私の家』に、です。

 なんと私、マイホームを手に入れちゃいました。

 家を買うお金など余裕で用意できるというのに、頑なに宿屋暮らしをしていた私がです。

 なぜずっと宿屋暮らしをしていたのかというと答えは簡単。私に家を管理する能力なんてないからです。


 だって家を買ってしまったら、家事全般を全部自分でしなくちゃならないんですよ。いや、やってやれないことはないんですけど、そんな時間があるのならゲームでもやっていたほうが余程有意義な時間の使い方だと思いません?その点、宿屋なら上げ膳据え膳なわけですよ。食事も、掃除も、洗濯も、全部宿屋の従業員に丸投げなんです。どうせ使い切れないほどのお金を持っているわけなので、どちらが金銭的に得かなんて考える必要なんてありませんし、それなら自分が楽できる方を選びますよね?唯一デメリットと言えば、宿屋の従業員が掃除のため等で部屋に入ってくるので、ゲーム機などの地球産の物を放置できないことですね。使い終わったら収納魔法で片付けなければならないんです。さすがにこちらの世界の物ではないものを不特定多数の人に見せるわけにはいかないので。ゲームをするたびにセッティングするのって地味に面倒なんですよね……。


 物語の中で異世界へ行って好き勝手やってる主人公たちなら「奴隷でも買って家を管理させればいいじゃないか」なんて言うかもしれないけど、契約上主従関係を結ぶとはいえ、今まで私の人生と無関係だった得体の知れない人間を身の回りに置くなんて考えられないし、ましてや家の管理を任せるなんてありえない。仮に隷属の首輪を使用して私に服従していたとしても、なんの縁もなかった人間を雇い、一緒に生活するなんて絶対に嫌だ。

 別に私としては、奴隷だからといって思うところはない。ただ単に、よく知りもしない相手と一緒に行動しなくてはならないということが苦痛だというだけのことだ。それがこれから一緒に同じ家に住むことになるとなおさらのこと。

 しばらく一緒にいれば慣れるという人もいるだろうけど、慣れたからといって許容できるかどうかは別問題です。言動が気に入らなかったり、性格的に好きになれなかったりするかもしれない。もちろん馬が合って仲良くなれる可能性だってあるけど、そんなギャンブルをするつもりはない。


 そもそも、物語の主人公たちは結構な確率で自分のことを「ぼっち体質」とか言うけれど、ぼっち体質なヤツがなんの抵抗もなく奴隷を身内扱いで受け入れるわけがあるかと、私は声を大にして言いたい。

 ぼっち体質な主人公+仲間が欲しい=そうだ!奴隷を買おう!

 この思考回路が本気で理解できない。ぼっち体質であるのなら、気心の知れない相手は忌避すべきではないのかと問いたい。問いただしたい。

 そんな相手と一緒に行動するとなると、ストレスばかり溜まってしょうがないんじゃないかと私は思うわけですよ。

 ……うん、話がちょっとそれたね。


 そんな理由もありマイホームを持つつもりはなかったんだけど、状況が変わりました。

 迷宮の作成が終わって少ししてから、ふと気付いてしまったのです。迷宮核(ダンジョンコア)を使ってマイホームを作ったらものすごく快適な家が出来るんじゃね?ってことに。

 気温なんかは自由自在だし、水等の資源なんかも使い放題。水の温度も好きにできるので、お風呂だって入り放題。いや、入り放題ってほど頻繁には入らないけどね。魔物は出現設定しなければいいだけの話だし、特定の人間のみしか中に入れないように設定もできるためセキュリティも万全。そしてなんと言っても、迷宮内の状態を維持することが出来るような設定だってあるわけなのです。つまり、掃除なんてしなくても常に清潔な状態が保たれるということ。洗濯については日本の高性能な洗濯機を導入することにより大した手間はかからないし、食事に関しては普段から満月堂で食べているわけで、そもそも心配する必要がない。

 そうなると、マイホームをためらう必要がないということに気づいてしまったのです。


 それからすぐにきぃちゃんにもう一つ迷宮核を作ってもらい、早速マイホームづくりに没頭。テーマは『空中庭園』。やっぱりゲーマーなら、この単語にときめきを感じない人はいないと思うのですよ。空中庭園に住むとか、ちょっとした憧れですよね。

 作成については、この前創った迷宮みたいに何層もあるわけじゃないので、それほど時間もかかりませんでした。

 マイホーム完成後、私はしばらく意味もなく家の中をウロウロしたり、庭をウロウロしたり、渾身の出来の庭園を眺めてニヤニヤしたり、家の内装を見てニヤニヤしたりしていました。きぃちゃんが呆れていたような気がするけど気にしない。

 いやだって、今まではマイホームを持つつもりはなかったわけだけど、いざ手に入れてみるとやっぱり嬉しいじゃない?しかも外も内も完全に私プロデュースなわけですよ。喜びも一入です。完成したマイホームを眺めながら悦に入っていてもしょうがないのです。


 引越し作業も無事完了したところで、きぃちゃんから家を管理してくれるとの嬉しい申し出が。別に自分で管理したとしても大した手間ではないのだけれど、きぃちゃんがやってくれるというのならその方が間違いはない。なんてったってきぃちゃんだし、私がやるよりも余程完璧に家を管理してくれるだろう。早速きぃちゃん用に迷宮核の管理者権限を作成し、その日は就寝。なんというか、とても素晴らしいベッドでした。こんなところにもマイホームの恩恵があるとは……。さすがに宿屋でベッドを好きなものに変えるとかできないからね。




 翌日、きぃちゃんに起こされたような気がして目を覚ますと、目の前に私がいた。

 なにを言っているのかわからないと思うかもしれないけど、私にもなにがなんだかわからない。

 寝ぼけて幻でも見ているのかとも思ったけど、あまりにもびっくりしすぎて一気に目は覚めた。

 驚きの中で、なんとか口にだすことができた言葉がこれだ。


「えーと……どなた?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ