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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X2章 異次元迷宮イグドラジル
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x2-18.唐突な目的達成

「ところでさ、すっごいいまさらなんだけど、イツキさんたちはなにか目的があってレベル上げしてるの?」


 二十五層へと辿り着き、ここからは本腰を入れてレベル上げをしていこうかと皆に伝えた際、ユノちゃんにそんなことを聞かれた。うん、確かにすっごい今更な話だよね。

 まあ、別に隠すような話でもないので、ラエルを家族の元へと送り届けるために力が必要だということを説明する。


「へぇー、そうなんだ。……うーん、なんだったら、私が送っていってあげてもいいけど、どうする?」

「え……いや、そりゃユノちゃんが手伝ってくれるのならばとても助かるけど、亜大陸まで行かなくちゃならないし、何年かかるかわからないよ?」


 圧倒的な強者であるユノちゃんが僕達に同行してくれるのならば、戦闘力面での不安はほぼ無くなることになる。何と言っても、レベル300オーバーの非常識かつ規格外な戦力だ。今すぐ人大陸を飛び出してラエルの故郷探しを始めてもいいくらいの信頼感がある。

 だがしかし、亜大陸に渡るためには港町まで移動し、そこから船で大陸を移動することになる。片道だけでも少なく見積もって、恐らく半年はかかるだろう。更にそこからラエルの記憶を頼りに亜大陸内を探索し、ラエルの故郷を探すことになる。仮にスムーズにラエルの故郷が見つかったとしても、往復に一年以上。下手をすると、ラエルの故郷を探すのに数年かかるなんてこともありえない話じゃない。そんな先の見えない旅に、ユノちゃんを巻き込んでも良いのかという思いがある。まあ、既に四ヶ月程の期間を拘束している僕の言っていいセリフじゃないかもしれないけどさ。


「んーとね、これは私がイツキさんたちを信用しているから教えるんだけどね、私さ、転移魔法が使えるんだよね」

「え……え?」

「だからね、亜大陸に行くのも一瞬だし、帰ってくるのも一瞬なわけなのですよ」


 えぇー……何か今、僕はとんでもないことを聞いてしまったような気がするんだけど、気のせいかな?気のせいであって欲しいけど、きっと気のせいじゃないんだよね?だって今僕の目の前にいるのは非常識の塊なわけなので、転移魔法くらい使えたっておかしく……いや、おかしいから。絶対におかしいから。だって転移魔法だよ?使える人が極稀にしか現れないという、あの転移魔法だよ?しかもその極稀にいるという転移魔法の使い手だって、一日に数百キロ程度転移すれば魔力が空になるという話なはずなのに、ユノちゃんは一瞬で別大陸まで転移できるという。今いる場所と亜大陸の位置関係を考えると、明らかに転移距離一万キロ超えてますよね?いくら非常識な子だとわかっているからと言って、限度ってものがあるんじゃないですかね?

 それに転移魔法って便利な半面、魔法自体が難しすぎてちゃんと扱うためには事前準備が必要だって話を聞いたことがあるような気がする。確か長距離を転移する時って、転移先に目印となる特殊な魔道具が必要だったはずだよね?と言うことは、ユノちゃんは既に亜大陸に行ったことがあるということなのかな?


「それにね、ラエルちゃんの家族がいそうな場所はきぃちゃんがある程度予想してくれるから、探すのもそんなに大変じゃないはずだよ」


 何と言うか……ユノちゃんもメイさんも、二人揃って常識からハズレた人なんだなと改めて思う。

 転移魔法が使えるということにも思いっきり驚かされたけれど、更にはラエルの家族のいそうな場所を予想するだとか、本気で意味がわからない。

 まず前提知識だけど、この世界には人類に認識されている大陸が四つあり、それぞれの大陸の広さは大体同じくらいだと言う話だ。僕にはどうやって測ったのかはよくわからないけれど、遥か昔にいた魔術師が魔法を駆使して地図を作ったらしく、これが結構正確なんだそうだ。そしてその地図を基に大雑把に計算してみると、それぞれの大陸の面積は最低でも三千万平方キロメートルはあるだろうという結論になる。

 そんな広大な面積の大陸から、特定の人のいる位置を予想できるというのがまずもって理解不能だ。普通に考えてありえない。

 でも、しかし、メイさんならばもしかするとできてしまうのではないか、なんて思ってしまう僕は、既にこの非常識な二人に毒されてしまったのかもしれない。


 ユノちゃんの言っていることが本当ならば(ユノちゃんのことだし高確率で本当だとは思うけど)これ以上ないくらい好条件の提案だ。とは言え、僕が勝手に決めるわけにも行かないので、ノーティとラエルの様子を確認する。が、二人共ユノちゃんの突拍子もないとも言える話に唖然としており、頭がまともに働いていないようだ。少ししてラエルが再起動し、ユノちゃんに話しかける。


「ユノは転移魔法使えるのか?ラエルに教えてくれてもいいのよ?」


 どうやらラエルは転移魔法に興味津々のようだ。


「うーん、転移魔法は能力確認の魔法よりも難しいから、もっと魔法を扱う技術を磨かないと無理じゃないかなぁ」

「ラエルじゃ使えないのか?……無念なり」


 ユノちゃんに無理だと言われてラエルは落ち込んでしまった。いやいや、今はそんな場合じゃないから。


「いや、ラエル。落ち込む前に考えて欲しい。ユノちゃんが家族の元へ連れて行ってくれると言うんだけど、どうしたい?」

「うん?そう言えばそんな話もしてたな。ラエルは帰れるなら一度帰るぞ。家族に言うことがあるからな」


 まあ、当然の答えだよな。元々そのつもりで旅をしていたわけだし、帰れるのならば帰るよな。


「そう……ですか。いつかはそうなるとは思っていましたけど、急にその時が来るとなると素直に喜べないものですね。ラエルちゃんがいなくなると思うと寂しいです」


 ノーティが悲しそうな顔でそう言う。そうだよね。まだまだ先の話だと思っていたけど、急にラエルとの別れがくるとなると、やっぱり寂しいよな。もう五年以上の付き合いになるわけだし、ラエルがいるのが僕達の当たり前になっていたから。


「ん?ラエルはいなくなるのか?なんでだ?」

「え?いや、だって、ラエルは家族の元へ帰るんだろう?」

「これからは家族と一緒に過ごすんですよね?」

「ご主人様とお姉ちゃんはなにを言ってるんだ?」


 いや、ラエルこそ何を言っているんだ?普段からラエルの思考回路は意味不明だけど、今日はそれに輪をかけて意味不明だ。


「家には帰るけど、一緒には過ごさないぞ?お話するだけよ?」

「え?……話すって、何を?」

「もちろんラエルの生存報告だぞ。さすがに五年以上も家を出てたから心配してるかもしれないしな」


 いや……かもしれないって、間違いなく心配しているだろうよ……。


「それにラエルはご主人様とお姉ちゃんの面倒をみなくちゃならないしな。家族と過ごしている暇なんてラエルにはないんだぞ。まったく、二人ともラエルがいなくちゃなんにもできないしな。そんな二人を途中で放り出すような無責任なこと、ラエルはしませんことよ?ご主人様とお姉ちゃんの二人だけじゃ危なっかしいしな」


 いやいやいや、一番危なっかしいヤツに言われたくはないんだけど……。しかし、気分のおもむくままに好き勝手やっているイメージしかなかったんだけど、ラエルはあれで僕とノーティの面倒を見ているつもりだったのか。非常に心外だ。

 でも、と言うことは……。


「ラエルは家族に生存報告をしたら、また僕達と一緒にいるってことでいいのか?」

「ご主人様はなにを当たり前のことを言っているのか?それ以外になにがある?」

「僕達と一緒にいるということは、また家族とは離れ離れになってしまうということになるけど、それでいいの?」

「そんなことは問題じゃないのよ。ラエルたちのとこでははなれて生活することなんて普通のこと。生きてることがわかればそれでいいのよ」


 何と言うか、とてもドライな家族なんですね……。しかし、ラエルがそれでいいというのならば、その意志を尊重しよう。とりあえずは家族の元へと帰すことが優先だ。それで何か問題があればその時に考えればいい。


「ということでユノちゃん、お願いできるかな?」

「あいさー、すでにきぃちゃんからはラエルちゃんの家族のいそうな場所の位置情報はいくつか受け取ってるからね、いつでも行けるよー」


 流石ユノちゃん仕事が早い。と言うか、いつの間にメイさんとやり取りしていたんだろうだとか、どうやってメイさんとやり取りしているんだろうとかは聞いちゃ駄目だろうか……。やっぱり非常識だよねこの二人。

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