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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X2章 異次元迷宮イグドラジル
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x2-12.素敵!抱いて!(幼女×2)

 僕達の目的地である大樹の麓へと近づくにつれ、ポツポツと家のようなものが建っているのが見える。

 何だろうか?アレは。


「あー、アレはね、商人ってお金の匂いに敏感だよね、ってことだよ」


 ユノちゃんに聞いてみたらそんな答えが返ってきた。

 うん、なんとなくわかったような気がする。


「まず最初はね、宿屋ができたんだよ。それで次に迷宮産素材目当ての買取屋。で、食堂やら雑貨屋やら何やらが徐々に増えていって、今じゃちょっとした集落のようになってるみたいだね」


 やっぱりか。この迷宮は今や冒険者達がこぞって挑戦しているわけだ。そこに利益を求める商人がやって来るというのは、当然と言えば当然なのかもしれない。それに王都から近いとはいえ、それでも多少は離れた場所にあるこの迷宮に挑戦する冒険者としても、宿屋等の施設が大樹の麓付近にあるというのはありがたいことだよね。


「さて、それじゃぁイツキさん、早速入っちゃう?迷宮に足を踏み入れちゃう?ワクワクドキドキの迷宮探索を開始しちゃう?」


 何かもう、ユノちゃんは早速迷宮に突入する気満々だ。どれだけ迷宮に行くのを楽しみにしてたんだろうかこの子は。道中で聞いたんだけど、昨日は楽しみすぎてなかなか眠れなかったらしい。遠足前の小学生か。いやまあ、おやつだとかバナナだとか言っていたわけだし、遠足気分なんだろうけどさ。そしてあまりにも眠れなくてソワソワしていたら、メイさんに強制的に眠らされて朝までグッスリだったらしい。強制的にという言葉にそこはかとない恐怖を感じたけど、詳しく聞くのはやめておいた。うん?だって怖いじゃないか。メイさんならどんなことをしていたとしても納得できてしまう自信があるよ、僕は。


 で、話は戻って迷宮突入についてだけど、流石に王都から幾らかの時間をかけてここまでやって来たわけだし、今日はここにあるいずれかの宿で一泊して、明日から迷宮探索でもいいんじゃないかと思ったわけなんだけど、どうやらそれは駄目らしい。


「明日だとか、なに悠長なことを言っているのよ!そんなことをしたら大変なことになるわよ!取り返しの付かないことになるわよ!!」


 迷宮への突入が明日になるというだけのことで、そんなに不味い事になるのだろうか?僕としては今日も明日もそんなに変わらないような気がするんだけど、迷宮に詳しいユノちゃんがそう言うのならば何かがあるんだろう。あれか?足を踏み入れた日時だとかで迷宮の難易度が変わるとかだろうか?それとも、ここで営業している宿屋に泊まるということ自体に何か問題でもあるのだろうか?しかし、取り返しの付かないことになるんだよね?一体どんなことになるのかなんて想像がつかないんだけど。ってなことを考えていたら……。


「私の心が耐えられないよ!ただでさえ昨日おあずけされたというのに、今日もおあずけだとか拷問すら生ぬるい所業だよ!私のはやる心を落ち着けるためにも、明日突入というプランは断固反対させてもらうね!」


 あー、うん、そうだよね。ユノちゃんってこういう子だよね。まともに考えて損したよ。メイさんがこの場にいないことが悔やまれる。非常に悔やまれる。誰かこの子にツッコミを入れてやってくれ。僕には無理だ。


「大変なことになるぞーぅ。取り返しの付かないことになるぞ―ぅ。今日行かないなら私はへそ曲げるぞ―ぅ。へそ曲げたら機嫌直すの大変だぞ―ぅ。きぃちゃんですらさじを投げだす厄介さだぞーぅ」


 ユノちゃんが手を猫の手のように丸め、お化けのポーズ(よくお化けの真似をする際「うらめしや~」と言う時にする格好)を取り、且つゆらゆらと揺れながらそんなことを言ってくる。

 もうヤダ、この子。残念にも程があると思うんだ。この子の保護者をやっているというメイさんには畏敬の念を抱かざるを得ない。


「ラエルも今日中に行きたいんだぞーぅ。サクサク進むんだぞーぅ」


 僕が今ここにいないメイさんに思いを馳せていると、ラエルまでユノちゃんの真似をしてそんなことをいい始めた。ちょっとユノちゃん、うちの子に悪い影響与えるのやめてもらえませんかね?

 二人してゆらゆらと揺れながら、ゆっくりと僕の方へと近づいてくる。


「あーはいはい。わかりましたよ。今日中に迷宮に入るからそれやめなさい。ノーティもそれでいいかい?」

「はい、私は別にそれで構いません。ここに来るまでにある程度の時間がかかったとはいえ、それで今日この後の時間を迷宮に入らずに潰してしまうのももったいないとは思っていましたし」

「やたーっ!!流石イツキさん。イツキさんならきっとそう言ってくれるって私、信じてた。超信じてた。素敵!抱いて!」


 僕が諦めの境地で了承し、ノーティも同じく了承した瞬間、ユノちゃんが全身で喜びを表現しながらそんなフザケたセリフをのたまいやがった。

 いやいや、なに言ってるのこの子は。本気で言っているわけじゃないのはわかるけどさ、それ女の子が男相手に軽々しく言っていいセリフじゃないからね。


「さすがご主人様。ラエルも信じていました。素敵!抱いて!」


 そしてラエルまでユノちゃんの真似をして言い始めるし……。ああ、ただでさえ残念だったラエルが、ユノちゃんのせいで益々残念な子になっていく……。




 ユノちゃんの相手をしているだけでものすごい速度で精神がガリガリと削られていくため、僕達は足早に迷宮の入り口を目指した。

 大樹へと近づくにつれ、お店や屋台等が増えていきなかなかの活気があるようだったけど、僕達はそれらを無視して通り過ぎる。正直言えば色々と見て回りたい気持ちもあったけど、そんなことをしていたらまたユノちゃんがろくでもないことを言いだしかねないので、残念ながら今回は見送りだ。後で余裕があったらその辺を散策してみようか。そんなことを考えながらも、僕達は歩を進めた。


 迷宮の入り口へと辿り着き、改めて大樹を見上げてみるとその大きさに圧倒される。遠くから見ても大きいとは思っていたけど、近づいてみればそこから見える絶景も相まって、畏怖すら覚えるほどだ。大樹の向こうは崖となっており広大な景色を望めるため、嫌でも世界の広さというか、自然の偉大さだとかを感じてしまうからだろうか。

 しかし、そんなことを思っているのも僕とノーティだけらしく、ユノちゃんとラエルは早く早くと僕達を迷宮の入り口へと誘導する。僕達が感動していたこの風景に目もくれず、迷宮を探索することで頭がいっぱいなようだ。

 ユノちゃんは以前にも来たことがあるわけだからまあいいとしてさ、ラエルはもうちょっと周りの景色にも目を向けようよ……。


 二人に急かされて僕とノーティは迷宮の入り口へと足を向ける。まあ僕としても、迷宮探索が楽しみじゃないという訳ではない。むしろものすごく楽しみだ。流石にあの二人のテンションにはついていけないけどね。

 迷宮への入り口を目の前にして、少しずつ気分が高まってくる。ユノちゃんとラエルに押し切られたような感じではあったけど、何だかんだ言って、僕も明日まで待ちきれなかったのかもしれない。

 果たして、迷宮の中はどうなっているのだろうか。今から楽しみだ。

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