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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
1章 プロローグ的なもの
6/116

1-6.お腹が空いて力が出ないよー

「なにか見えてきたけど、あれが街?」

『そうです。あれが私達の目指している街です』

「やったー。これでご飯が食べられる」

『しかし、私達はすぐに街へ入ることは出来ません』

「え?なんで?ここでおあずけ?」

『そもそも私達は身分を証明する為の物を持っていません』

「あー、それかー。街に入るのに身分証明が必要なのか。でも、こういうのって仮の身分証明とか発行してもらえるんじゃないの?」

『その通りなのですが、仮の身分証明の発行は有料です』

「……それって詰んでない?」

『確か、事情のある場合に限り金銭を借り受けることが出来るはずです。外で何らかの被害に会い、身一つで逃げ帰ってきた時なんかに街へ入れなくなってしまいますからね』

「なるほど、そういうこともあるのか。私の場合はどうしたらいいと思う?」

『そうですね……。旅の途中に魔物に襲われ命からがら逃げてきた、なんていうのはどうでしょう』

「うん、じゃぁそれでいこっか」


 方針が決まる頃には既に町の入口のそばまで辿り着いていた。

 街へ入る順番待ちをしている列に並ぶと、そう時間がかからず自分の番がやってくる。


「身分証明の提示をお願いします」

「すみません、ここへ来る途中で魔物に襲われて、身分を証明する物もお金も持っていないんです」


 後ろめたさに少しうつむき加減で答える。

 でも、嘘はついてないよ?魔物に襲われたのも本当だし、身分証明する物もお金も持ってないのも本当だし。

 ただ、魔物に襲われたというのと、身分証明する物とお金を持っていないということが繋がらないだけで。

 嘘ではないんだけど、やっぱり騙しているっぽくて少し後ろめたい。


「それは大変だったね。ところでお嬢ちゃんは1人かい?」

「はい、1人ですけど」

「そうか、次からは大人や護衛なんかを伴って行った方がいい。お嬢ちゃんみたいな小さな子が1人で出かけるにはちょっと危ないからね。今回は物だけで済んだみたいだけど、命を落としてもおかしくない」

「ご親切にありがとうございます」

「いやいや、お嬢ちゃんみたいなのに命を落とされちゃ、おっちゃんの寝覚めが悪いからね。さて、街の中へ入るには仮証を発行しなくてはならないんだが、有料となる。お金を貸し出すこともできるが、持ち逃げできないよう魔道具を装着して貰う必要があるし、期限までに返却が出来ない場合は奴隷の身分へ落とされることになる。どうする?」

「お願いします。街に入ればお金は用意できるはずですので」

「それは良かった。じゃあ手続きをするから隣の詰め所まで来てくれ」


 おじさんは他の衛兵たちの方を向き、話しかける。


「おい、ちょっといなくなるから少しの間よろしくな」


 そう言って、詰め所へと歩き出す。

 街門の隣にある小さな小屋が詰め所らしい。

 私も衛兵のおじさんの後に続いて、その扉をくぐる。


「じゃあ、そこへ座ってくれるかな」


 私が促された椅子へ座ると、おじさんはテーブルの反対側の椅子へと座った。

 テーブルの上にはなんか変な台のようなものが置いてある。


「いまから仮証を発行するために、名前、種族、年齢、レベル、犯罪歴を確認させてもらうことになるが大丈夫かな?」

「はい、大丈夫です」

「それではその台の右側の部分に手を置いて、少しだけ魔力を流して欲しい」

「こうですか?」


 言われた通り、台の右側の部分へ手を置き、少しだけ魔力を流す。

 すると、台の左側の部分へと文字が浮かび上がる。


「台の左側に書いてあることが間違っていないか確認してくれ。因みに字は読めるか?」

「読めるので大丈夫ですよ」


 えーと、名前:ユノ・ナハブ、種族:人族、年齢:13、レベル:23、犯罪歴:無。

 おーすげー、魔力流すだけでこんなことわかるんだ。

 そして、改名しておいてよかったと、本当に、切実に思った。改名してなかったら大惨事だったよ……。


「はい、間違いないです」

「それじゃ発行するぞ」


 おじさんが台に何か操作をすると、カードのようなものが出てきて、おじさんがそれを手に取り確認する。


「えぇと、ユノ・ナハブ、人族、13歳、レベル23、犯罪歴無しと。……ん?な!!!」


 おじさんはものすごくびっくりしたような顔で私とカードを交互に見る。

 ん?どうしたんだろ。


「なにか問題でもありました?」

「いや……。レベルが23と書いてあるんだが、何かの間違いだよな?」

「いえ、間違ってませんけど?」


 おじさんが驚愕したような表情でこちらを見つめてくる。


『ねぇきぃちゃん。レベル23ってそんなおかしいの?』

『レベルだけでしたらおかしいという程ではありませんが、あなたの年齢でそのレベルは十分おかしいということになるでしょう』

『あぁ、そっか、私ってまだ子供の部類だもんね』


 きぃちゃんと疑問に思っていたことを話していると、おじさんは何故か納得したような顔をしていた。


「そうか、レベル23か、いや、子供が1人で外にいたのが少し疑問だったんだが、このレベルが本当だというなら納得した。しかし、これだけ強いなら魔物から逃げ帰ることもなかったんじゃないのか?」


 うぐっ、そうきたかー、どうしよう。……ここは少し恥ずかしいけど、しょうがないか。


「実は私、しばらく何も食べてないんです。そんな時に魔物に遭遇して、お腹が減って力が出なくて、なんとかここまで逃げて……」


 うあーーー、これ思ったより恥ずかしいんですけど。

 なんか顔が熱い。顔赤くなってないかな?

 恥ずかしくて少しうつむいていると、笑い声が聞こえてくる。


「はっはっはっはっは。そうか、空腹で逃げてきたのか」


 このおじさん、人が恥ずかしいの我慢して告白したのにひどくない?

 私は非難がましい目をおじさんに向けながら抗議する。


「笑うのは酷いと思うんですけど」

「いや、すまんすまん。そんなに強いのに逃げ帰った理由が理由だったんでな」


 おじさんは慌てて弁解してくる。


「しかし、いくら強くても空腹には勝てなかったか。はっはっは」


 反省してねーよこのおっさん。


「空腹だというのならさっさと手続きを済ませちまうか。まずは金銭貸与の契約書だな。内容を確認して同意できる場合はサインをくれ」


 そう言われ、契約書を受け取る。

 えーと、なになに?借りられるお金は500エンで、追跡の魔道具の装着、返済期間は5日間で、返済できなければ奴隷になる、と。

 まぁ、大体はおじさんに言われたとおりだね。問題なしと。

 私は契約書へサインをした。

 すると契約書はほんのりと淡く光る。

 ああ、これも魔道具ってやつなのかな?


「よし、それじゃ追跡の魔道具を装着させてもらうぞ」


 おじさんが追跡の魔道具とやらを取り出す。

 あれは、腕輪かな?


「これは一応装着者にしか外せないことになっているんだが、無理矢理破壊なんかしたりして外すと即指名手配されることになっている。そんなことはしないでくれよ?」


 私の腕に魔道具をはめながらそんなことを言ってくる。


「失礼な、私がそんなことするように見えます?」

「いや、見えないが、一応言っておかなければならないことになってるんでね。気分を悪くしたようならすまんな」

「悪気があっていっているわけではないのはわかるので別にいいんですが、空腹のくだりあたりからくだけ過ぎじゃないですか?」

「すまんな。最初はどこかとっつきにくい感じがしたんだが、空腹と言われて人間味が見えてきてな。どうもあまり意識せず相手していたようだ」

「まあ私としても今のほうが話しやすいからいいんですけど、急に態度変わったから戸惑いました」

「お嬢ちゃんもそんな丁寧な言葉使わなくてもいいぜ。子供は元気なのが一番だ」

「あ、そう?じゃ、遠慮無く」

「おう、後はお金の受け渡しだな。仮証の発行に50エンかかるんで、差額450エンだ。確認してくれ」


 そう言い、巾着袋のようなものを渡してくる。

 おお、これがこの国のお金か。えーと、これが銅貨かな?4枚に、鉄貨5枚。


「うん、大丈夫」

「それじゃ、これが仮証な」


 カードのようなものを受け取る。

 これが仮証か。台に表示されていた情報以外に日付が記載されていた。

 有効期限:5月19日まで。


『ねぇきぃちゃん。この星の暦ってどうなってるの?』

『どういう理由か、地球とほぼ同じです。違うことと言うと、閏年が存在しないということくらいでしょうか』

『そうなんだ。でも、偶然とはいえ私としては覚えやすくてラッキーかな。それと、私がこの星に来た日は5月13日ということでいいのかな?』

『そのようです。どうやら地球と同じ日付でこちらの星へとやってきたようです』

『ふーん、これまた覚えやすくていいね。私の誕生日だし』


 とりあえずお金と仮証を収納魔法でしまう。


「おお、アイテムボックスも持っているのか」


 あ、やっぱこの星にもあるんだ、アイテムボックス。異世界物のお約束だしね。


「仮証は19日までしか使えないから、それまでにちゃんとした身分証明を手に入れてくれよな。それと、くれぐれもお金の返済だけは忘れないでくれよ?お嬢ちゃんみたいなのが奴隷落ちするのは見たくねぇからな」

「うん、わかった。それと、お嬢ちゃんじゃなくてユノって呼んでほしいな」

「おう?わかったわかった、ユノ。俺の名前はオディスってんだ。困ったことでもあったら遠慮なく相談しに来い」

「うん、いろいろありがとう、オディスさん」

「よし、じゃあこれで手続きは完了だ」

「もう街へ入っても大丈夫?」

「ああ、ようこそケルセトの街へ」

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