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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X2章 異次元迷宮イグドラジル
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x2-4.ハンバーグ最強説

 プリンを注文しようかと顔を上げると、そこには訝しげな表情で僕を見つめる二人の仲間がいた。


「どうかしたんですか?イツキさん」


 言葉自体は僕のことを心配しているようだが、その表情は明らかに不審に思っていると言っていた。


「ご主人様、変な顔ー」


 いや、ラエルは心配もしていないし不審にも思ってもいないようだけど。

 しまったな―。あまりにもびっくりしすぎて二人のことがすっかり頭の中から抜けてしまっていた。メニューを見て固まったかと思えば嬉しさを隠そうともせずニヤニヤし始めたら、そりゃあ不審にも思うだろう。

 これはとりあえず説明をしないと駄目か。


「このメニューにね、僕の故郷の料理が載っていたんだ。もう二度と食べられないと思っていたから驚いちゃったんだよ」


 一瞬どう誤魔化そうかとも思ったけど、よくよく考えてみれば誤魔化す必要などなかった。だって、結局はこういうことなのだから。

 僕の言葉に納得したのか、ノーティはもう僕のことを不審な目では見ていなかった。


「へぇー、そうなんですか。もしかしてこの聞いたことのない名前の料理が、イツキさんの故郷の料理なんですか?」

「ああ、そうだよ。僕の知っているものと味まで一緒なのかは食べてみなくちゃわからないけどね。絵を見た感じだと、見た目に関しては同じだと思う」

「ご主人様、この料理知ってるの?どれが美味しい?」


 うーん、どれが美味しいのかって言われてもなぁ。正直どれも美味しいし、好みの問題だよなぁ。とりあえずは今どんなものが食べたいのかを確認してみようか。


「ラエルは今どんな料理が食べたい?」

「肉!お肉食べたい!」


 即答だよ。何なのこのお肉大好きエルフ。なんかラエルに何が食べたいのかと聞くと、大抵肉って答えるよな。僕の想像していたエルフってのは、木の実だとか果実だとかを主食とした、森の恵みに感謝をし、森と共に生きる種族ってイメージがあったんだけど、どうやらこのお子様には当てはまらないようだ。なんてったって、野菜なんかよりも肉をよこせってくらいの肉好きだしね。まあ、エルフも森で狩りなんかもするらしいから肉も普通に食べるんだろうけど、ラエルはちょっと肉好きすぎじゃないか?まさかこの世界のエルフはみんなこんなだったりするんだろうか?

 そんなことを考えてみるが、考えたところで答えは出ない。まあ、ラエルを家族の元へと帰すときには答えが出るだろう。それよりも今は、何を注文するか、だよな。


「じゃあ、ラエルはハンバーグにするか?肉だぞ」

「うん!ラエル、ハンバーグ!」

「ノーティはどうする?」

「そうですね……私はカレーというものにしてみます」


 なるほど、カレーか。悪くないチョイスだ。まあ、どれを選んだとしても悪くないわけだけどね。

 僕は何にしようかな……。どうせだったら自分で作れないヤツのほうがいいかな?とは言っても、自分で作れるからといって作ることはないわけだから、大した違いはないのだけれど。


「よし、僕はラーメンにするか。それと食後のデザートにプリンだな」

「プリン、ですか?それもイツキさんの故郷の料理なんでしょうか?」

「うん、そうだよ。甘くってとっても美味しいんだ」

「甘いものですか!私も食べたいです!」

「ラエルも―」

「じゃあ、みんなの分も注文しようか」


 注文するメニューが決まったため、たまたま近くを通りかかった店員さんを呼び止め、注文をする。

 注文をしてから十数分程度だろうか、僕達の目の前に注文した料理が並べられた。久々の日本食とのご対面だ。

 どれも美味しそうで、せっかくだからそれぞれの料理を分け合い、味見をしてみることになった。


 まずはラーメン。

 日本で流行っていた専門店のラーメンのようなものではなく、昔ながらの中華そばって感じの見た目と味だった。確かに専門店のラーメンは美味しいんだけど、僕としては無性に食べたくなるのはこっちの方だ。すっげー旨いってわけじゃないんだけど、何度でも食べたくなる味なんだよなぁ。

 二人も美味しそうに食べていたけど、ラエルは「お肉のほうが美味しいなぁ」なんて言っていた。うん、君はそうだろうね。


 次にハンバーグ。

 ラエルは出てきた料理を見て「これ本当に肉?」と聞いてきた。確かに、挽き肉の普及していないこの世界の人間からすると、ハンバーグは肉には見えないのだろう。しかし、食べてみれば肉だとわかったのか、喜んで食べていた。

 見た目は洋食屋さんのハンバーグってところだろうか。僕が日本にいた頃に流行っていた、切ると肉汁が溢れ出てくる、というようなものではなかったけれど、しっかりと食べごたえのある美味しいハンバーグだった。と言うか、ハンバーグにかけられているソースがすっごく美味しい。

 ラエルもハンバーグを気に入ったようで「ハンバーグは最強だ」などと意味不明なことを真面目な顔で言っていた。何を以って最強なのかと聞いてみれば「肉なのに食べやすい」という答えが返ってきた。確かにこの世界の肉には硬いものが多く(主に安い肉)、更にはラエル自身もまだ幼いため、咀嚼して飲み込むまでに時間がかかるのだろう。その点、ハンバーグは材料が挽き肉ということもあり、とても食べやすい。肉好きなラエルがハンバーグを気に入るのは必然だったのかもしれない。


 そしてカレー。

 しかし、このカレーは僕のよく知るカレーとは違うものだった。色が白っぽいというか緑っぽいというか、そんな色だったのだ。これはいわゆるグリーンカレーというものだろうか?当然茶色っぽいカレーが出てくると思っていた僕としては少しびっくりしてしまったが、よくよく考えるとこれはこれでしょうがないのかもしれない。なんと言ったって、カレーの見た目はちょっとアレだ。カレーが大好きな日本人ですら見た目を揶揄するなんてことはよくあることだった。そんな見た目の悪い食べ物が、カレーを知らない人達に受け入れられるわけがない。ならば、違った色のカレーから攻めてみるというのもアリかもしれない。

 そんなことを考えながらもカレーを食べてみると、僕は再度びっくりした。これ、普通のカレーじゃん。

 色が違うことから、グリーンカレーなのかな?どんな味なのかな?なんてことを思いながらも口に入れてみれば、それは僕のよく知るカレーの味だった。違っていたのは色だけかよ。色は違うのに味は同じだとか……美味しいことは美味しいんだけど、違和感がものすごくて素直に喜べない。

 カレーに対して先入観のないノーティは、普通に美味しくいただいているようだった。更には「このカレーって料理は辛くて美味しいですね。あ、だからカレーって言うんですか?」なんてことを呑気に言っていた。うん、そう思いたくなる気持ちはわからないでもないけど、違うからね。

 逆にラエルなんかは口に入れてからすぐに吐き出し「ご主人様、お姉ちゃん、これ、毒が入ってます」なんて涙目で言い始めた。うん、ラエルには辛すぎたのかもしれないけれど、それ、毒じゃないからね。毒じゃないということを説明されたラエルはやっと安心し、ハンバーグで口直しをしていた。……君はやっぱり肉だよね。


 そしてついに本日の目玉であるプリン。

 それは恐らく日本で一番有名なプリンの、その容器の裏にある突起を折って皿にあけたかのような佇まい。これだけで僕の心はワクワクしてしまう。

 世間では口の中でとろけるような、なめらかなプリンなんかが人気だったりするみたいだけどさ、僕としてはある程度の硬さのあるしっかりとしたプリンの方が好きだ。確かになめらかなプリンも美味しいんだけどさ、やっぱりプリンはぷるぷるしてこそプリンだと思うんだよね。あの弾力もプリンの楽しみの一つだと思うんですよ。なめらかなプリンってさ、皿に移したら自重で崩壊しそうじゃない?いや、やったことないから想像なんだけどさ。

 まあ、とりあえず見た目は僕好みだ。さて、味はどうだろうか。

 早速僕はプリンとカラメルソースを一緒にすくって口へと運ぶ。

 ……。

 あぁ、これ、これだよこれ。これが食べたかったんだよ僕は。

 味は残念ながら僕の愛する「容器の突起をプチッとできるプリン」には敵わないが(思い出補正かもしれないけど)それでも十分に美味しい。

 ノーティも気に入ったようで、美味しそうに食べている。しかしラエルは「美味しいけど、ハンバーグのほうが美味しいなぁ」などとのたまっている。ぶれないな君は。

 しかし、久しぶりに食べたプリンは本当に美味しかった。他の料理もちゃんと美味しかったし、何度でも通ってしまいそうだ。


 しかし、これは素晴らしい店を知ってしまったな。レベル上げのために王都までやって来たはずなんだが、僕はもう王都から離れられないかもしれない……。

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