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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X2章 異次元迷宮イグドラジル
52/116

x2-2.情報収集

 無事王都アルクハムへと辿り着いた僕達は、まず最初に宿を取り、冒険者ギルドへ行って新しいダンジョンの情報を集めることにした。

 相変わらず(と言える程頻繁に勘違いされるという事実が悲しいが)女性三人組だと思われて絡まれたりもしたけれど、さすが今話題沸騰中のダンジョンなだけあって、簡単にある程度の情報は手に入れられた。

 しかし、その情報の殆どは信じ難いものだった。とは言っても、嘘を吐かれたわけではないと思う。何故ならば、その情報は複数の人達から聞いたものだったからだ。


 曰く、異次元迷宮イグドラジルへと通じる洞窟を抜けると、目の前には天を衝く大樹がそびえ立っており、その周囲は底の見えない崖となっているのだという。

 曰く、迷宮への入口から先へ進むとすぐのところに階段があり、その階段を登って行くと新緑の森が広がっていて、更には空も見えるのだという。

 曰く、魔物が何もないところから突然現れ、倒すと一部の素材のみを残して消えてしまうのだという。

 曰く、各階層の階段を登り切ったすぐ近くに転移装置が設置されており、自分が到達した階層を自由に行き来できるのだという。


 ざっと挙げただけで信じられないことのオンパレードだ。

 そもそも王都近くに存在するダンジョンなのだから、天を衝く大樹が存在するというのならば王都からもその大樹が見えていないとおかしいし、ダンジョンはその大樹の中にあるわけなのに空が見えるというのもおかしい。更には魔物が何もないところから現れるというのも意味がわからないし、倒した魔物が一部の素材を残して消え去ってしまうというのも意味がわからない。挙句の果てに、ファンタジーなこの世界ですら転移装置なんて物は非常に希少で、現存しているのは古代遺物(アーティファクト)のみ。その古代遺物である転移装置も取り扱いが非常に難しい物だという話を以前聞いたことがあった。だというのに、それが惜しげもなく各階層に設置されており、誰でも簡単に使用することができるのだという。


 普通に考えればデマだと思ってしまってもしょうがないと思う。

 しかし、ここでダンジョンの名前を思い出してみる。

 異次元迷宮イグドラジル。

 そう、異次元迷宮(・・・・・)なのだ。

 言葉の通り、そのダンジョンが異次元に存在しているのだというのならば、さっき挙げた信じられないようなことでも納得ができてしまう。まあ、これは僕が日本人で、ゲームやアニメ、小説なんかのファンタジーなあれこれに慣れ親しんでいるため、「異次元」という言葉に対して、この世界に住む人達以上に理解があるからなんじゃないかななんて思ったりもするわけだけど。


 まあそれはともかく、異次元迷宮イグドラジルの情報は他にもたくさん手に入った。

 現在、迷宮の攻略は14層まで進んでいるらしい。とは言っても、そもそも迷宮が何層まであるのかがわからないのですごいのかどうかはわからない。ただ、14層あたりで出現する魔物の強さは、こちらのレベルが20もあれば問題なく倒せる程度とのことだ。

 しかし、それならもっと先にすすめるんじゃないか?だって今この迷宮へと挑戦している冒険者には、一流とも言われている、レベル40を超えているベテランの冒険者が何人もいるはずだ。そんな人達が未だ14層までしか進めていないというのには何か理由があるのだろうか?


 ふとそんなことを疑問に思ったのだが、いざ答えを知ってしまえば何てことはなかった。

 単純に、この迷宮の内部が異常に広いのだそうだ。一つの層を攻略するのに、大体10日前後かかるらしい。

 この迷宮が発見されてから四ヶ月と少し。確かにそれなら14層までしか攻略されていないのにも納得だ。

 余談だが、この異次元迷宮イグドラジルの入口のある大樹だけど、この大樹の周りを一周するのに歩いて半日程度かかるらしい。歩いて半日で一周できる大樹の内部を探索するのに10日かかるとか、さすがは異次元だ。


 しかし、四ヶ月で14層か……。思いの外時間がかかるようだ。果たして僕達のレベル上げに丁度良い階層に辿り着くまでにどのくらいかかるだろうか……。

 因みに、今現在僕のレベルが47、ノーティが30、ラエルが28だ。今ある情報から推測すると、20層くらいまで行けばレベル上げに丁度良い魔物が出てくるだろうか?そうなると、そこまで辿り着くのに半年くらいかかる計算かな?先が長すぎて考えるのが嫌になってくる。

 まあ今後のことを考えれば、時間がかかっても迷宮を攻略していくということは間違いではないはずだ。僕達は今よりも強く、そして更にもっと強くなっていかなくてはならない。ならば、階層を進むごとに出現する魔物が強くなっていくという、この迷宮の先へと進んでいくことが僕達が強くなるための一番の近道なのだと信じている。


 ただ、20層やその先のことを目標にしている現在、こんなことは正直考えたくはないのだが、15層が最終層であるという可能性もないわけではない。

 最終層が何層なのかをまだ誰も知らないわけで、実は次が最終層だという可能性だって当然あるわけだ。

 しかし、このことに関しては僕はもう気にしないことにした。

 だって、本当に15層なんかで終わってしまったら、僕達がわざわざ王都までやって来た意味がなくなってしまう。レベル上げに最適なダンジョンを目指してここまでやって来たというのに、いざやって来たら僕達は対象外ですとか悲しすぎる。なのでここはもう開き直って、まだまだ先まで迷宮は続いていると信じ抜くことにしたんだ。


 まあ話は少し変わるけど、この迷宮では魔物が何もないところから現れて戦闘になるわけだが、数は少ないが迷宮内を徘徊している魔物も存在するらしい。

 そしてこの魔物が非常に厄介なのだという。

 何が厄介なのかというと、非常に強い。無茶苦茶強い。

 冒険者達の間では、この徘徊している魔物のことを「FE(フォーミダブルエネミー)」と呼んでいるらしい。

 どのくらい強いのかというと、本来1層で出現する魔物はレベルが3くらいあれば倒せる。それに対して、1層を徘徊しているFEは、レベルが15くらいないと倒せないのだという。そりゃあ確かに厄介だ。しかし幸いなことに、FEは数が非常に少なく、余程近寄らなければ襲ってこないため、レベルの低い冒険者はFEを避けつつ、魔物を狩ってレベルをあげるのだそうだ。


 そしてまたまた話は少し変わるけど、10層から11層へと続く階段を守るかのように、階段の手前の部屋には強力な魔物が待ち受けているらしい。この魔物はFEよりも更に強い上、次の階層へと辿り着くためには必ず倒さなくてはならないのだそうだ。そしてこの強力な魔物を見事打ち倒し、いざ11層へと辿り着いてみれば、そこは一面が朱に染まった紅葉の山だった。

 1層から10層まで続いてきた新緑の森が、ここにきて紅葉の山へと変わったのだ。

 そのため、10層の階段前の部屋で待ち受けていた強力な魔物のことを、景色が切り替わる前の階層で階段を守護していることから「FG(フロアガーディアン)」と呼ぶことになったのだという。


 さて、ここで重要なのは11層から景色が切り替わったということだ。

 10層にFGが存在しており、11層から景色が切り替わるという迷宮が、15層までしかないというのはなかなか考えにくい。と言うか、15層で終わりだというのなら、5層ごとにFGがいて景色が切り替わるとかいう方がしっくり来る。だから僕としては少なくとも20層まではあるんじゃないかと思っているわけだ。

 まあ、しっくり来ようが来なかろうが、15層だろうが16層だろうが、はたまた53層だろうが99層だろうが、終わる時は法則だとかも関係なしに終わるんだと言うのならば、それはそれでしょうがない。

 でもどうせだったら、自分に都合の良い推測を信じておいたほうが精神衛生上良いじゃないか。わざわざネガティブな考え方をして落ち込む必要はない。


 まあ、何だかんだ言ったって、結局のところは実際に行ってみなくちゃわからないんだし、考えるだけ無駄か。

 とりあえず情報収集はこんな所にしておこう。

 それよりも、さすがにお腹がすいたな。情報収集をしていたらいつの間にかお昼を過ぎてしまっていたらしい。

 迷宮の情報収集をするついでに美味しいご飯が食べられるところも情報収集しておいたので、早速食べに行ってみようか。

 旅の間は主に携帯食ばかりだったから、久しぶりのまともな食事だ。町や村に辿り着いた時の宿や食事は旅中での楽しみの一つだからね。しかもここは王都だ。きっと美味しいものもたくさんあるに違いない。

 仲間の二人にも食事を提案してみると、即座に了承を得た。二人も王都での食事を楽しみにしているようだ。

 ならば、早速行ってみようじゃないか。

 冒険者達がこぞって絶賛していた食堂へと向かって、僕達は歩き始めた。

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