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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X1章 勇者召喚
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x1-14.後日談のようなもの

 俺達が異世界へと召喚され、そして無事こっちへと戻ってきてから約一ヶ月が経ち、やっと俺達の生活も落ち着いてきた。

 こちらの世界へと戻ってきた際、俺達が異世界へ行っていた間に起きた問題を解決する必要があったのだが、ユノさんはマジで出来ないことはないんじゃないかってくらい、俺達のために色々なことをしてくれた。


 まず、俺達は一ヶ月以上もこの世界では存在していなかったため、俺達四人で色々なところを旅行していた、という記憶を近しい人達に刷り込んでくれた。これで俺達が一ヶ月以上の間、行方不明になっていたという事実がなくなったというわけだ。「記憶操作とかマジ怖ぇ」なんてことを思ったりもしたが、流石にユノさんでも余程のことがなければこんなことはしないとのこと。まあ、人の記憶なんて簡単にいじっていいようなもんじゃないしな。なんて思っていたら、記憶操作というよりは暗示のようなものだと補足された。まあ、どちらにしろ凄いことには違いない。今回は俺達が一ヶ月以上もいなかった理由が「異世界へ行っていた」なため、本当のことを言うわけにもいかなかったための処置だ。そもそも、そんなこと言われても信じろって方が無理だろうしな。

 ついでに俺達の捜索願なんてものも当然だされていたわけだが、それもなかったことにしてくれた。ユノさんが万能すぎて俺達の頭が上がらない。

 更に仕上げとして、日本中の観光名所へと転移魔法で飛び、様々なおみやげを買ってくれた。旅行していたことになってるんだから必要でしょ?とのこと。おみやげを買うのに中学生(見た目小学生)にお金を出してもらっている高校生、傍目からはどう見られていたんだろうか……考えたくない……。

 結構な量のおみやげを買ってもらったため、ユノさんに何でそんなにお金があるのかと聞いてみた所、この世界では魔法なんてものはないと信じられているから、やろうと思えばいくらでも稼げる、とのこと。法に触れるようなことはしてないからね、と付け足しもしていた。ユノさんの万能さがとどまるところを知らない。


 それからこの世界で気をつけないといけないことなんかを教えてもらったりもした。特に、身体能力が地球人離れしているため、喧嘩等をして間違って人を殺さないように、だとか、うっかり力の抜き方を誤って、運動で常人離れした活躍をしないようにだとか、主に力の使い方を間違えるなということだった。確かに、うっかりで人を殺したりなんかするわけにはいかないよな。力の加減をちゃんと考えないと色々と怖いことになりそうだ……。


 そしていよいよユノさんとお別れすることになり、ユノさんが向こうの世界へと帰る間際、爆弾が投下された。


「あと少ししか時間ないけど、頑張ってね」


 俺達はその言葉の意味がよくわからず、ユノさんにどういうことなのか訪ねてみると……。


「え?だって夏休みもう終わりでしょ?宿題やってあるの?」


 あ……。

 そうだよ。俺達が異世界へ召喚されたのって一学期の終業式が終わったすぐ後じゃん。夏休み入ったところじゃないか。すっかり忘れてたよ。

 んで、それから一ヶ月以上異世界にいたわけだろ?夏休みもう終わりじゃねーか。宿題なんてやってあるわけねーよ。


 他の三人の様子を確認してみると、みんな忘れてたって顔をしている。やべぇ、どうしよう。いっそ開き直ってぶっちぎるか?


「みんな、明日10時に宿題持って近重くんの家へ集合ね」


 俺が脳内で宿題を放棄する方向へと意思が傾きかけたところで、望がそんな提案をしてきた。

 ついさっき宿題のことは忘れようと思っていたところだったので正直少し面倒だなとも思ったが、結局のところ、最終的にはどうせやらなくてはならないのだろうからしぶしぶ同意する。つーか、後で必死になって一人でやるなんてごめんだ。


「まあ、君たちは体力も魔力もこの世界の常人以上にあるんだから、頑張ればなんとかなるよ」


 そんな俺達の様子を見ていたユノさんが励ましの言葉をくれる。

 しょうがないから頑張るか。

 しかし、体力はわかるんだが、魔力が高いのは宿題をやるのに何か意味があるのか?

 みんなも疑問だったらしく、望がユノさんに聞いていた。


「体力が、この世界で言うスタミナだとか持久力だっていうのは知ってるよね?」

「はい」

「魔力はね、この世界で言うなら気力だとかやる気に該当するんだよ。だから魔力を使い過ぎると倦怠感を感じるし、場合によっては気絶したりもする」


 へー、なるほど。魔力ってのは漠然と謎パワーか何かだと思っていたが、そういうものだったんだ。やる気を消費して魔法とか使っていたわけね。道理で魔法を使い過ぎた時なんかに、何もやる気が起きないような何とも言えない状態になるわけだ。


「だから、体力があれば疲れにくくなるし、魔力があればやる気も持続しやすくなるってわけ。今から夏休みの宿題をやるのに必要なことってそれでしょ?」


 確かにそうだな。実際に俺達は四人共、問題の解答欄を埋めること事態はそれほど難しくはない。みんなある程度以上の学力はあるからな。

 しかし、それを短時間で一気にやるとなると話は変わってくる。ぶっちゃけた話、少なくとも俺を含めた幼なじみ三人は長時間勉強をすることが出来ない。つーか、長時間集中して勉強をするなんてことは苦行でしかない。しかも時間制限付き。夏休みも終了間近。タイムリミットはすぐそこまで迫っている。はぁ……考えるだけで気分が萎える。好きなことならいくらでも集中できるんだけどな。

 だがそうなると、以前と比べて疲れにくくてやる気が持続しやすくなっているという今の俺達の身体能力は、かなりありがたいものではないだろうか。宿題が面倒だと思う気持ちに変わりはないが、その面倒事を片付けるために有利な能力があることは歓迎すべきだ。


 とりあえずそんな話をユノさんから聞き、今度こそお別れを済ませた。

 その後俺達も解散し、家へと帰ってユノさんに買ってもらったおみやげを家族へと渡す。ユノさんからはちゃんと俺達がいなかった間の記憶も補完されているから大丈夫だと言われてはいたが、家族の反応に少し身構えていた部分もあった。しかし、家族の反応は驚くほど普通で、あっけないほどに今までの生活へと戻ることが出来た。やっぱりユノさん凄ぇや。


 そして翌日、俺達は夏休みの宿題を片付けるためにコノの家へと集まり、その後数日間地獄を見ることになった……となるかと思ったんだが、意外なことに宿題はあっさりと片付いてしまった。

 今までだったら始めて一時間もしないうちに宿題をやり続けるのが苦痛になって、漫画読みたいだとかゲームやりたいだとか、他のことに意識が向いてしまうはずなのだが、気がついたらいつの間にか夕方になっていた。宿題を数時間ぶっ続けでやっていたというのに、全く苦痛にも感じず、今まで集中していたというのだ。これには他のみんなもびっくりしており、特に望なんかは「こんなのありえない」なんて呟いていたりもした。それは俺も同感だ。

 しかし、これが魔力が高くなった効果というものか。レベルを上げて手に入れたステータスの恩恵がマジでヤバイ。


 結局、夏休みの宿題は2日で終わらせることが出来た。まさかこんなに余裕で終わるなんて、俺達の誰一人として思ってもいなかっただろう。残りの夏休みは宿題で潰れると思っていたから嬉しい誤算だ。

 せっかくだから、わずかに残った夏休みは小夜子とデートをして過ごすことにした。

 え?呼び方が変わってるって?まあ、俺達付き合ってるわけだし、お互いに「小夜子」「社君」と呼び合うことになったわけだ。本当は俺も小夜子さんと呼ぼうと思ったんだが、どうしても小夜子が呼び捨てで呼んで欲しいと折れなかった。なら小夜子も俺のことを呼び捨てでと言ったんだが、頑として君付けをやめる様子はない。何かこだわりでもあるのだろうか。


 そんな色々な意味で充実した夏休みも終わり、二学期が始まる。

 俺と小夜子が付き合っているという話はすぐに広まった。まあ、隠すつもりなんてなかったしな。俺はともかく、小夜子は男子生徒共から人気があったので、あっという間に話が広まったというのも納得だ。

 俺に対する男共のやっかみが凄かったが、所詮負け犬の遠吠えだと思ってシカトする。ただ、友人達にどうやって小夜子の心を射止めたんだと聞かれた際、正直に「顔が好みだったらしい」と答えた時に、皆一様に何とも言えない微妙な顔をするってのはどういうことだよコノヤロウ。俺だって自分がイケメンじゃないなんてことは知ってんだから放っといてくれ。


 そんなこんなでこちらの世界での生活に戻って約一月。やっと落ち着きを取り戻してきたのだが、その短い期間に、如何に自分が常人離れしているのかを思い知った。

 夏休みの宿題の時にも思ったが、集中力が異常に持続する。おかげで授業の内容が以前よりも理解できている気がする。

 体育の授業の時にかなり手を抜かないと活躍しすぎてしまう。恐らくうっかり力を使ってしまうようなことがあれば、あっさりと世界新でも叩き出せるだろう。

 持久力がありすぎて、何をやってもほぼ疲れることがない。本気で何かをやれば疲れるのだろうが、本気をだすのは色々まずい。本気なんて出してしまったら、この世界の常識なんて簡単に飛び越えてしまう。

 更に、当然と言えば当然なのかもしれないが、こっちの世界でも魔法が使える。まあ、普通に生活していれば使う機会なんてないんだが、使いたい誘惑に抗うのがなかなかに骨が折れる。

 ってな感じで、こっちの世界基準で、人間やめちゃってるよねってレベルの能力を持て余している。


 そしてそんな異常な身体能力を持ち、こっちでの生活が落ち着いてくると、欲が出てくる。

 戻ってきたことに後悔はないが、やはりまだ向こうの世界も楽しみたかった。


 いつかまた、行けたらいいなぁ……。

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