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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X1章 勇者召喚
36/116

x1-8.美少女って言ったって、ピンからキリまであるよね

 昼時を少し過ぎたくらいの時間帯、俺達は冒険者ギルドからほど近い場所にある食堂、満月堂の前に来ていた。

 昨日の夜の話し合いで、最強の冒険者と言われるユノさんに、魔王討伐の手助けをしてもらえないかを相談してみようということになったのだ。

 強い人に仲間になってもらえれば、魔王を倒すということも早く実現できるかもしれない。俺達の今の実力じゃ、魔王を倒すための力を手に入れるのに、何年かかるのかわかったもんじゃないしな。

 そして、そんな今の俺のステータスはこうなっている。




 名前:ヤシロ・タカバネ

 種族:人族

 年齢:15

 レベル:25

 体力:2,871

 魔力:2,344

 筋力:44

 耐久:41

 精神:38

 抵抗:37

 敏捷:39

 器用:42

 幸運:18


 称号:異世界人、勇者


 スキル:言語理解、鑑定、武器適正[剣]、魔法適正[風]、探索術




 他のみんなも数値は似たような感じだが、白井さんだけは筋力や耐久よりも、精神や抵抗の値が大きいようだ。魔法特化ってことなのかな?スキルもそんな感じらしいし。

 他の三人のスキルは、コノは武器適性が拳で魔法適性が土、望は武器適性が槍で魔法適性が火と光、白井さんは武器適性が無くて魔法適性が火、水、風、土、光、治癒となっており、探索術は全員が取得している。普通、こんな簡単にスキルは手に入らないようなので、これも勇者の称号の力なのだろうか。

 因みに、適性がない武器や魔法は使えないというわけではない。適性があればそれを使用した場合に、より高い効果を見込めるというだけであり、適性のない武器でも使用することは出来るし、ちゃんと勉強をすれば適正のない属性の魔法だって使用することはできる。ただ、やはり効果を考えると適正があるに越したことはないんだけどな。実際、スキルを手に入れたおかげで魔物を倒す効率が上がり、かなり助かっている。


 まあそんなわけで俺達もそれなりに強くなってはいるんだが、それでもまだまだ魔王には敵わない。魔王のレベルは推定80っていう話だからな。強い人が味方になってくれれば俺達としては非常に助かるわけだし、もし無理だったとしても、完全に無駄足にはならないだろうとは思っている。

 俺達のレベルは約一ヶ月という短い期間で25まで上がったわけなのだが、最近はレベルの上がりが悪くなってきていた。レベルは高くなれば高くなるほど、次のレベルに上がるために多くの経験が必要となってくるので、今後は更にレベルアップに時間がかかるものと思われる。そこで、わずか14歳でレベル50は確実に超えているであろうと思われるユノさんと話ができれば、レベル上げのコツなんてものも、もしかしたら聞けるかもしれないという気持ちもあるわけだ。


 既に昨日の内に、ユノさんのいると思われる場所は聞いておいた。流石に泊まっている宿は教えてはもらえなかったが、罰ゲームで働いているという店と、いるであろう時間帯を教えてもらったのだ。

 色々と教えてくれた受付のお姉さんとディレスさんには感謝しなくちゃな。まあ、その時の会話は酷いものだったんだが……。


「ああ、そうそう、もしユノに会ったとしても、ファンクラブの存在は話すんじゃねぇぞ」

「本人はファンクラブの存在を知りませんからね。知られたら絶対にやめてくれと言われますので」

「そんなことになったらファンクラブは解散になっちまうからな」

「ええ、ユノさんにお願いされて断るなんてことは、ファンクラブ会員には出来るわけがありません」


 そんなことを帰る間際に言われたのだ。これが王都の冒険者ギルドの職員だとか、ユノさんが来るまで王都最強の冒険者だった人だとかは思いたくないんだが……。


 まあそれはともかく、午前中は高確率でいないと言われたため、昼過ぎに、更には食堂ということもあり、昼時に来ては迷惑になるかもしれないので、少し時間をずらしてやって来たというわけだ。

 ついでに言うと、食堂にやってきて何も食べないなんてことは出来るわけがないので、俺達はまだ昼食をとっていない。正直言ってお腹が空いている。まずは昼飯を食いたい。

 俺達はコノを先頭に、満月堂の中へと入っていった。




「いらっしゃいませー」


 店の中へ足を踏み入れると、店員さんから声をかけられる。

 席を案内してもらおうかと、その店員さんの方を向いた瞬間――俺達は全員固まった。


「こちらの席へどうぞー」


 店員さんが席を案内してくれるが、俺達は誰一人として動くことが出来ない。


「あれ?」


 誰も自分の後をついてきていないことに気づき、店員さんは不思議そうに首を傾げた。


 あー、正直甘く見てたわ。身内びいきだとか、小さい子をかわいがるだとか、そういうのだと思ってた。

 しかし違った。自分の認識が甘かった。だってそこには、店の中には、信じられないレベルの美少女がいたのだから――。




 少しして、なんとか再起動することに成功した俺達は、店員さんの案内で席についた。

 とりあえず適当に料理を頼み、今は出来上がるのを待っているというところだ。


「アレがユノさん、なんだよな?ちょっと想像以上、というか、想像すらできないレベルだったんだが」


 コノが一つ一つ単語を確かめるかのように、ゆっくりと口を開いた。


「アタシ、人に見惚れて動けなくなるなんて、初めて」

「私も」

「アレは美少女ってレベルじゃねーな」


 コノに続いて俺達も次々に感想を言い合う。

 俺達が店に入った時に声をかけてきた店員さんが恐らく、というかほぼ間違いなくユノさんだろう。

 可愛いってのはあの二人から耳にたこが出来るくらい聞いていたわけだが、正直想像以上だった。ファンクラブがあるのも納得だわ。実は女神です、とか言われても信じるぞ俺は。

 一応ウチも綺麗どころを連れているとは思うが、ユノさんを美少女っていうのなら、望なんて美少女(笑)ってところだ。あ、念の為言っとくが、それでも白井さんはちゃんと美少女だぜ。流石にユノさんには負けるが。


 しかし、見た目10歳って聞いてたけど、12歳くらいはいってないか?来年中学生ってくらいには見える。やはりこの世界の人達と俺達の感覚は違うのだろう。俺達も年齢より若く見られたしな。

 とまあ、そんなことを話したり考えたりしているうちに、注文した料理が運ばれてきたのでまずは食事にしようか。お腹がペコペコだ。




 食事も終わり、ひとまず落ち着いたところでユノさんに声をかける。

 話をしたいと伝えたら、今は暇な時間だからいいよ、と快諾してくれた。

 とりあえずは拒否されなくてよかった。話は全てコノに任せることにしているので、俺達は話を聞くだけだ。楽でいいな、うん。あいつをリーダーにしといてよかったぜ。


「あの、ユノさん、でいいんですよね?」

「うん、そうだよ」


 そんなことを考えていたら、既に会話が始まっていた。

 まずは名前の確認だな。まあ、確認するまでもなくわかってはいたんだが、一応聞いておかないとな。


「ユノさんは『仮面の魔王』って聞いたことがありますか?」

「え?仮面の魔王?」


 ユノさんは少し驚いたような感じで声に出す。やはり知らなかったのだろうか。そもそも俺達も、街中で魔王の話だとかを聞いたことがないんだよな。国の上層部のみに伝えられている情報だとかなのだろうか。国民に魔王の存在を公表するとパニックになるからとかか?

 そんなことを考えていると「えー、いつの間にか魔王とか言われてるの?」なんていう小さな、呟くような声が聞こえた気がした。かろうじて聞こえてきただけなので自信は持てないが、あれはユノさんの声だったと思う。どういうことだろう、なにか知っているのだろうか?

 その呟きについて少し疑問に思ったため、俺も質問してみた。が、結局、なにも知らない、とはぐらかされただけで、教えてはもらえなかった。まあ、ついさっき会ったばかりの俺らに何でもかんでも話せるわけはないよな。


 その後も色々と話をしたが、結局ユノさんには俺達の仲間になってもらうことはできなかった。まあ、人にはそれぞれ都合ってもんがあるんだからしょうがないよな。

 強くなる秘訣なんかも聞いてはみたんだが、ひたすら強い敵と戦え、という至極当然な答えが返ってきた。やっぱり楽して強くなる方法なんてないか。

 ユノさんの勧誘は残念な結果に終わったが、話ができただけで良しとしよう。俺達はユノさんにお礼を言って店を出た。




「なあみんな、ユノさんのステータスは確認できたか?」


 店を出てすぐにコノがそんなことを言ってきた。


「駄目だった」

「私も」

「俺もだ」


 ああ、やっぱりみんな駄目だったのか。俺だけじゃなかったんだなと安堵するとともに、誰も見ることが出来なかったのを残念にも思う。一人でも見ることができていたら教えてもらえたのになぁ。

 最強と言われているユノさんのレベルに興味があったので鑑定のスキルを使用してみたんだが、何度やっても鑑定に失敗してしまい、ユノさんのステータスを見ることは結局出来なかったのだ。


「鑑定を妨害するスキルとかがあるのかなぁ」

「でも、そんなスキルが、ある、なんて、聞いたことがない」


 望の推測に白井さんが否定的な意見を口にする。

 だよなぁ。この世界に召喚され、戦い方を教えてもらうことになった時に、鑑定のスキルを持っているのならば、戦う前に相手のステータスを確認するようにした方がいい、と教わった。相手の戦力を知っていたほうが、戦いを有利にすすめることが出来るに決まってるんだから当然だろう。そして鑑定を妨害するようなスキルがもしあるのならば、そういうスキルがあるということをこの時に教えてもらっているはずだろうが、俺達はそんな話は聞いていない。

 しかし、鑑定のスキルは習得している人の少ないレアスキルだという話も聞いているし、それを妨害するスキルが更にレアなスキルで、知っている人があの場にいなかったという可能性も考えられなくもない。


 とまぁ、んなこと考えたって、結局ユノさんのステータスを見ることが出来ないという事実は変わらないんだから、時間の無駄なんだろうけどな。ステータスを見れなかった原因が分かったとしても、ユノさんのステータスを覗けるのかといえば、それはまた別問題なわけだし。

 それよりも、ユノさんの勧誘に失敗してしまったわけだから、やはり俺達四人で魔王に挑まなければならない。より一層レベル上げに励まなくちゃならねーな。

 俺達は今後のことを話し合いつつ、城へと向かって歩き始めた。

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