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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X1章 勇者召喚
32/116

x1-4.無双はロマン

「鷹羽君の、えっち」


 目が合った瞬間、白井さんは両腕で自分の胸を隠し、恥ずかしそうな顔でそう言った。

 ぐはぁっ、やばい、可愛すぎる。何だこの可愛い生き物は。

 正直、学校で見ていた時は、美少女だな―、眼福だなー、くらいにしか思っていなかったんだが、ここまで心を鷲掴みにされるとは思わなかった。

 つーかこれって、胸を見てたのがバレたんだよな?くっそー、望の奴め余計なことを教えやがって。

 白井さんに軽蔑されただろうか?前までだったら、まあしょうがない、で済ませたかも知れないが、今はヘコむ。無茶苦茶ヘコむ。


「もー、アタシの小夜ちゃんをいやらしい目で見ないでよね」


 誰がお前のだ。相変わらず望は余計なことばかり言いやがる。

 とは言え、そういう目で見てたことは事実なわけで、白井さんには謝っておくことにする。


「あー、白井さん、ごめん」

「ん、大丈夫」


 まだ少し恥ずかしそうな顔をしているけど、どうやら許してくれるらしい。

 ……許してくれてるんだよね?これって。


「あー、会話が弾んでいるところ申し訳ないんだが、いい加減話を進めないか?」


 そんな俺達のやり取りを眺めていたコノが、若干呆れの混じった声でそう言う。

 そういえば今後のための話し合いをするってことで集まってたんだよな。白井さんの可愛さにやられてすっかり忘れてた。


「そーいやそーだったっけ。えっと、何話してたんだっけか?」

「異世界召喚の、テンプレ、について」

「ああ、そーだそーだ、で、君達、何が聞きたいのかね?」


 望も何を話していたのか忘れていたようで、白井さんに確認していた。

 そして相変わらずイラッとくる言い方だが、一応こちらは教えてもらう立場なので我慢する。

 とりあえず何を聞こうかと考えようとしたところで、コノが早速質問をしていた。


「さっき、望と白井さんの二人で話していた、巻き込まれた、だとか、白井さんが一人で出て行く、だとかいうのはどういう意味なんだ?」


 おおっ、そうだよ、それ、俺も気になってたんだ。


「あぁ、それね。これも異世界召喚物のテンプレなんだけどね、勇者じゃないのに勇者召喚に巻き込まれて、異世界に召喚されるってパターンがあるのよ」

「勇者が、召喚される、時、近くにいた、本来、勇者じゃない人間が、巻き込まれて、一緒に、召喚されてしまう、という話」


 ほー、なるほどなるほど。勇者召喚の現場に居合わせてしまったために一緒に召喚されてしまうのか。とんだ災難だな。


「でね、その場合なんだけど、仲の良いグループに一人巻き込まれて召喚されるっていうのがお約束と言っていいくらいにおきまりのパターンなのね」

「私達の場合、望ちゃん、達の、三人が、幼なじみの、仲良しグループ。そして、私は、一人部外者」


 部外者って言い方はアレだが、言いたいことはわかる。望の言うテンプレに当てはめれば、俺達幼なじみ三人の召喚に、教室に一緒にいただけの白井さんが巻き込まれて召喚されてしまったという可能性もあったということか。

 うわー、そっちのパターンじゃなくてよかったー。教室に一緒に残っていたというだけで巻き込むとか、白井さんに申し訳無さすぎる。いや、俺達も被害者なわけだから責任を感じる必要はないんだろうが、それでも巻き込んだなんてことになったら、やっぱり申し訳ないよな。しかも……。


「なあ望、その巻き込まれていたって場合は、一人だけ勇者じゃないんだろ?」

「うん、そう。他のみんなが勇者として強力な能力を手に入れているのに、一人だけ平凡な能力だったりするの」

「巻き込まれた上に勇者みたいな力もないとか、踏んだり蹴ったりじゃないか」

「でもね、実は巻き込まれただけの人のほうが最強なんだよ!」


 はぁ?意味がわからん。勇者でもないし能力も平凡なのに、何で最強?


「巻き込まれた、だけのはず、なのに、勇者、よりも、強力な能力を、手に、入れる。そして、始まる、無双」

「そう!勇者なんか目じゃないくらいにチートなんだよ!!」


 あれー?おかしいな、言葉は通じているはずなんだが、この二人が何を言っているのかがよくわからん。

 二人共、説明足りなくないですかね?


「なあ、望、チートって何?」

「えぇーっ!チートって言ったらチートなんだよ。最強なんだよ!」


 いや、だからわからんって。説明を放棄しないでくれ。


「チート、とは、ズル、イカサマ、不正、などを、指す言葉。元々は、ゲームで、データの改竄を、することなんかに、使われた。転じて、ラノベ等では、ゲームの、データを改竄した、かのように、本来、ありえないほどの、異常な、強さをもつ、人や、能力に、使われたりする」


 要するにチートってのは、反則くさいほど異常に強いってことなのか。


「その巻き込まれただけの人ってのがチートってやつなのか?」

「そう、勇者召喚に、巻き込まれた、人には、勇者以上の、チート能力を、持って、いるというのが、お約束」

「そうなんだよ!勇者なんてまとめてかかっても相手にならないほどのチートを持っているんだよ!最強なんだよ!」


 いや、望お前もう黙ってろよ。な?正直白井さんがいてくれれば、望に説明して貰う必要ないしさ。つーか、むしろ話の邪魔だから。説明する気がないなら静かにしていてくれよ。

 望はまだ色々と勝手に喋っているが、まるっと無視して白井さんに話しかける。


「因みに、巻き込まれただけの場合、どうやってそのチート能力ってのを手に入れるんだ?」

「不明。と言うか、作品ごとに、設定、があるから、一概に、言えない。物語の序盤、では、何故か、チート能力を持っている、としか描写、されないことが、多い」

「細けぇこたぁいいのさ!そこに最強の力がある。その胸の高鳴りはプライスレスなのだよ!!」


 ……。


「なあ、コノ」

「なんだ?社」

「あれ、お前の彼女だろ?なんとかしろよ」

「なんとか出来るんならとっくにしてるよ……」


 投げ出すなよ、彼氏。気持ちはわからないでもないが。


「とりあえず、巻き込まれた人がチートってやつだってのはわかった。わかったんだが、それと白井さんが一人で出て行くってのはどう関係があるんだ?」


 コノも望に聞くことを諦めたのか、白井さんに質問していた。

 おい、あれお前の彼女だろ?かまってやれよ。


「ふっふーん。その質問にはアタシが答えてしんぜよう!」


 そして白井さんに向けられた質問が、何故か望にインターセプトされる。

 好き放題勝手に喋っているだけかと思ったら、意外にちゃんとこっちの話も聞いてるのな。

 だったらちゃんと質問にも答えてくれませんかね?望さんや。


「大きく分けるとね、二つのパターンがあるんだよ」


 おお?今度はちゃんと説明する気なのか?


「まず一つ目は、勇者召喚なんていう身勝手極まりない、拉致とも言えるような行為をした国に対して、利用されるなんてまっぴら御免だと、自分が勇者ではないことを理由に自分から出て行くパターン」

「自分は、勇者じゃない、から戦えない。元の世界に、帰れ、ないのなら、自由に生きたい、と言って、一人で、出て行く」


 あー、確かに拉致といえば拉致だよな。こっちの同意を得ているわけじゃないんだし。

 しかし、自分が勇者じゃないとわかっているのに、よく自分から出ていけるよな。生きるためなら残ったほうがいいと思うんだが。


「ちなみに、このパターンは自分のチートをあらかじめ自覚していることが多いね」

「冒険者に、なって、チートで、無双」


 ああ、なるほど。自分がチートだと知っているから、一人で出て行っても大丈夫だと思っているのか。

 しかし、強いのと生きるのとはまた別問題だとは思うんだが、そこはまだ俺の知らない何かがあるのだろうか?正直言って、仮に俺がそのチートとやらだったとしても、出て行くという選択肢を選ぶのは難しいだろうなぁ。日本という平和な国でぬくぬくと育ってきた俺に、何も知らない世界で生き抜くための生活力があるとは思えないしな。


「そしてもう一つのパターン!勇者じゃないと判明した結果、追い出される」

「勇者で、ないのなら、いらない、とポイ捨て」


 はぁ!?何だそれ。自分達の都合で勝手に召喚しといて、勇者じゃないとなったら要らないだ?フザケてる。


「何だよそれ!自分で呼び出しておいて、望む力を持っていなかったら放逐するというのか?フザケてやがる」


 コノも俺と同じ気持ちだったらしく、声に出して怒っていた。

 いや、望が言っているのはフィクションだということはわかってはいるんだが、もしかするとそうなった可能性があるのかも知れないと思うと、どうにも怒らずにはいられなかった。


「まあ結局はさ、勇者が束になってかかっても相手にならないほどのチートを持っているわけなんだけどね。国はそんなことも知らずに追い出しちゃうんだよ」

「冒険者に、なって、チートで、無双」


 結果としては、勇者よりも強力な戦力を逃してしまうわけか。まあ、そんなろくでもない国に残るよりは、追い出されて好きなように行きたほうがマシなのか?とは言っても、こうやって話を聞いているだけじゃ実感もわかないし、どっちがマシかなんて考えるだけ無駄か。

 それよりも、もし白井さんが勇者じゃなかったとしたら、この国はどういう態度をとっただろうか。……まあ、これも考えるだけ無駄だよな。この国の人間の考える事なんて俺にわかるわけがないしな。


「しかし、どっちのパターンだったとしても、冒険者になってチートで無双するのは変わらないのか」

「まあ、必ずというわけではないんだけど、それがこの手の話の肝だったりするわけだしね」

「無双は、ロマン」


 とりあえず、一番聞きたかったことは聞けたかな。

 とは言え、しかしなぁ、これってさぁ、ただ単に望と白井さんが話していた内容がある程度理解できただけであって、俺達の現状には全く関係ないよな?無駄な話だったとは言わないが、もっと話すべきことはたくさんあるはずだよな。

 まあ、まだ時間はたっぷりあるし、これから話していけばいいか。


「望と白井さんへの質問はそれくらいにして、俺達のこれからの行動方針を決めないか?」


 俺はそう提案し、眠くなるまでみんなで話し合った。

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