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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X1章 勇者召喚
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x1-3.男なら見るよな?

 その後も細かい説明だとか質問だとかを経て、王様への謁見は終了した。

 そして俺は今、自分にあてがわれた部屋で頭の中を整理している。


 しかし、仮面の魔王か……。

 18歳くらいの女性だって?なんだそれ。

 俺の中の魔王のイメージっつったら、魔族という人間に近い形をした種族の王だとか、強大な魔物が知性を持って魔物をまとめ上げているだとか、異形の怪物が力で君臨しているだとか、そういうのだ。まあ、ゲーム知識だけどな。

 なのに、18歳くらいの女性だって?なんだそれ。

 さっぱり強そうなイメージが湧かない。いや、話からすると無茶苦茶強いんだろうけどよ。


 ……。

 なんかこう、一人で悩んでても全然考えがまとまらないよな。

 こういう時は誰かと話をするのが一番だ。よし、コノの部屋にでも行くか。

 俺は早速部屋を出て、コノの部屋へ向かおうとしたところで声をかけられた。


「あっ、社くん」


 そこには望と白井さんがいた。


「ん?望に白井さんか。どうしたんだ?」

「ちょうど今、社くんの部屋に行こうとしてたんだよ。みんなで近重くんの部屋に集まってお話しない?」

「ああ、俺もちょうどコノの部屋へ行こうと思ってたんだ」

「おおっ、それはグッタイミンッ(グッドタイミング)。一緒に行こー!」

「いや、一緒に行こうっつったって、すぐそこじゃねぇか」

「細かいことは気にしない!さあ、ゆくのです勇者よ!」

「いや、意味わかんねぇよお前」


 つーか、今現在勇者の称号持ちな俺達には洒落になってねぇよそれ。




 そんな望のアホ話をシカトしつつ、みんなでコノの部屋へ入り、各々適当なところへ座る。

 そして話し合いを始めようと思ったところで、またまた望が勝手に喋りだした。


「アタシさ、自分の人生の中でね、異世界に召喚されるなんてことがあるとは思いもしなかったよ」


 ああ、俺もだよ。つーか、みんな思ってるだろそれ。

 まったく、わけのわからんところへ呼びだされて、あげく魔王を倒せだとかとんだ災難だ―――


ちょー()ラッキーだよね!!」


 はぁ!?

 この状況がラッキーだ?何言ってんだこいつ。


「ええ、私も、そう思うわ」


 ええっ!?白井さんもまさかの同意!?


「惜しむらくは、私も勇者だった、ということ、かしら」

「ええー、いいじゃん勇者」

「でも、このメンバーなら、私は巻き込まれただけ、という展開もあった、わけじゃない?」

「あー、なるほど、そのパターンか。確かにそっちの方がおいしそうだよね」


 え?えぇ?この二人何言ってんの?


「でも、勇者だったからこそ、こうして、みんなと一緒に、いられると思うと、こっちも、悪くないわ」

「だよねー。巻き込まれただけだった場合、小夜ちゃんが一人で出て行くというのが王道だもんね。そして最強になってアタシ達の前に現れる!」

「ええ、確かに、それも悪くないんだけど、その場合、こんな風に、望ちゃんと仲良く、なれなかったかも、知れないじゃない?」

「それはやだな」

「ええ、私も、嫌ね」


 そしてお前ら、いつの間に仲良くなったの?しかもお互いに名前呼び?

 なんか今俺、異世界に召喚された時くらい混乱してるかもしれない……。

 どういうことだよこれ。つーか、お前ら二人で話してないで説明しろよ。

 そんな俺の願望も届くことはなく、いつまでも二人は意味不明な会話を続けている。


「あー、望さんや、いつの間に白井さんと仲良くなったんだ?あと、お前らの話してる内容がさっぱりわからんのだが」


 二人の会話がいつになっても終わりそうになかったので、話をぶった切って望に問う。

 俺と同様に意味がわからず唖然としていたコノも、俺の言葉に何度もうなずいていた。


「あー、そっか。実はね、さっき社くんのお部屋に行く前に、小夜ちゃんの部屋に行ったんだよね」

「うん、望ちゃん、来た」


 まあそうだよな。俺のところに来た時には二人一緒だったし。


「でね、異世界にやってきた、たった四人の仲間なんだし、これから一緒に行動する事になるわけじゃない?小夜ちゃんとは今まであまり話したことなかったからね、少しお話することにしたの」

「お話、した」


 まあ確かに一緒に行動するなら相手のこともある程度知っておいたほうがいいよな。

 全く知らない相手と一緒に行動することになったとして、うまくいくとは思えないし。


「そしたらね、アタシはソウルメイトを手に入れたんだよ!!」


 ……え?すまん、ちょっと意味がわからんのだが。


「望ちゃん、流石にその説明は、ないと思う。鷹羽君も、近重君も、意味がわからないって、顔してるわよ」

「あれ?そう?おっかしーなー、これほどわかりやすい説明ないと思うんだけどなぁ」


 白井さんもあの説明が意味不明だと思ったのか、俺達の代わりに望に文句を言ってくれた。

 そして望よ、あの説明で俺達に通じると思っていたのなら、本気でお前の頭ヤバイぞ?

 このまま望に説明を続けさせても俺達が困惑するだけだと思ったのか、白井さんが説明を引き継いでくれた。


「望ちゃんが、私の、部屋に来て、お互いの、ことを話した。そうしたら、私も、望ちゃんも、同じものが好き、だとわかったの」

「そう!ソウルメイトなんだよ!!」


 いや、望お前黙ってろよ。しかし、これでソウルメイトの意味がなんとなくわかった。同じものが好きだからソウルメイトだとか言ってるのか。だが、望の好きなものっていったら……。


「私も、望ちゃんも、異世界物のラノベが、好き。いつも読んでる、って言ったら、ソウルメイトよっ、て言って、抱きつかれた」


 オイッ、望、お前なにしちゃってんの?友達でもないのにそんなことしたら、普通ドン引きだからな?


「少し、恥ずかしかったけど、同じものが好きって、言ってくれる友達、とかいなかったから、私も、嬉しかった」

「そうなんだよ!同級生の女子で、この手のラノベ読んでいる人なんていないんだよねー。私も嬉しくて、思わず小夜ちゃんに抱きついちゃったよ」


 白井さんが引かないでくれてよかったな、望よ。つーか、白井さんに抱きつくとか羨ましすぎるぞ。

 しかし、白井さんもラノベとか読むのか。少し意外だ。難しそうな本ばかり読んでいるイメージだったしな。

 あ、そういえばラノベと言えば……。


「そうそう、望、前お前に渡されたラノベあったじゃん。あれ、すげーな」

「へ?何が?」

「あの異世界召喚の話、今日俺達が体験したこととすげー似てたじゃん」

「あー、……読まない人だとそういう風に思うのか」


 俺が小説の内容と今日の出来事が似ていたという話をすると、何故か望と白井さんが苦笑いをする。

 あれ?俺なんか変なこと言ったか?


「あのね、鷹羽君。今日みたいな、やり取りは、異世界召喚物のラノベでは、わりと王道」

「うん、そうなんだよ。勇者召喚のテンプレと言ってもいいくらいだよね。こういう出だしで始まるラノベなんて、それこそ星の数ほどあるんだよ」


 え、マジで?星の数ほどあるというテンプレ相手に、俺は心の中で賞賛していたというのか?うおー、やべぇ、ちょっと恥ずかしい。あの時の心の声を口に出してなくてよかった。

 でも、それならそれで疑問に思うこともある。


「しかし、星の数ほどって言うが、そんなに同じような話の本が出てるのか?同じような話の本で売れんの?」


 同じような話だったら一冊読めばそれで良くね?他の本読む意味ないよな?それとも、俺が本を読まない人間だからそう思ってしまうだけなのだろうか。

 すると、望が得意気な顔でそれを否定する。


「チッチッチ、甘い、甘すぎるんだよ社くん。それはもう、ヨウカンに練乳入りのあんこをまぶして食べるくらい甘いんだよ!!」


 うわぁ、こいつクソうぜぇ。つーか何だよその胸焼けしそうな例えは。


「同じような内容なのはテンプレの部分まで。その後のお話をどうするのかが作者の腕の見せ所なんだよ!」


 言いたいことは理解できるし納得もできるんだが、望の態度が小憎らしい。何あの表情、ムカつくわ―。ちょっと一発小突いてやりたい。よくコノはあんなのと男女の付き合いが出来るよな。俺には絶対無理だわ。


「一丸となって、魔王に、挑んだり、仲間割れを、したり、召喚された、国と敵対、したり、その話の、展開は無限大」


 そしてその得意顔な望に追従するかのように、白井さんも胸を張りつつ、満足気な顔で補足する。

 まあなんだ、導入部分が似ていても、その後の展開で全然違う話になるということはわかった。しかし、今はそれよりも大事なことがある。白井さんの程よい大きさの胸部が、胸を張ることで強調されているのです。いや、別に俺はおっぱい星人というわけではないのですが、美少女が無防備にも胸を突き出してるんですよ?そりゃ男なら見るでしょう?ありがとうございます。堪能させていただきました。


 ……あまりのありがたさに脳内台詞が丁寧語になっていた。


 しかし、白井さんが胸を張って得意気に話すなんていう、お茶目な行動を取るとは思わなかったな。学校内ではあまり感情とか出さなかったし、誰かにつられて得意気になるなんてことももちろんなかった。

 こんな白井さんを見ることができたのも、望のおかげなんだろう。ただ、こいつのおかげかと思うとなんか微妙な気持ちになるけどな。

 まあそれでも、あの素晴らしい光景を見られたわけだから、一応感謝しておこう。非常に遺憾だが。

 ただ、あまり望に感化されすぎないで欲しい。せっかくの美少女が残念な美少女になってしまうからな。


 そんなことを考えていたら、望が白井さんになにか耳打ちをしているのが目に入った。すると、何かを望から聞いたらしい白井さんが俺の方を向き、目が合った。

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