表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
1章 プロローグ的なもの
3/116

1-3.プリンセス・サクライ

『だから待てと言ったじゃないですか』

「ごめんなさい」


 転移で元の場所へと戻って来るや否や、きぃちゃんのお小言が始まってしまった。


『まったくいつもいつも考えなしに余計なことばっかりするんですから』

「ごめんよぅ。でもさでもさ、私がいかなかったらあの人たち死んじゃってたかもしれないじゃん?結果オーライじゃない?」

『だからといって自らを危険に晒すのは別問題です。あなたはまだこの星へ来たばかりで何も知らない状態なのです。何が危険なのかもわからない状態で興味の赴くままにあっちこっちへふらふらされては私がたまったものじゃありません』

「……ごもっともです」

『だから普段からちゃんと考えて行動するようにと――――――』


 それからきぃちゃんのお小言は1時間程続いた。

 私、もう、疲れたよ……。




『では、説明の続きをしますね』

「うん」

『まず地球への帰還についてですが、現状では出来ません』

「ふーん」

『ふーんてあなた……。まぁ、あなたにはもう必要のない情報なのでしょうけれど』

「まあねー」

『しかし、これを聞いても同じ態度でいられるでしょうか?』


 きぃちゃんが勿体つけながらそう言う。

 ?なんだろう。


『条件さえ満たせば、地球とこの星とを行き来することが可能となります』

「行き来って、まさか!」

『そう、地球へ戻り、必要な物を持ってこちらへ戻ってくる、なんてことも可能です』

「すごいよきぃちゃん!私の大事なレトロゲーコレクションをこっちへ持ってくることが出来るんだね!」

『この状況でゲームってあなたは……電気はどうするのですか』

「あー、やっぱりこの星って電気通ってない?」

『通ってませんね』


 希望を打ち砕くその言葉にガクリと肩を落とす。

 異世界で冒険者やって、ゲームでも遊べたら最高だったんだけどなぁ。

 あ、ゲームやる時だけ地球に戻ってなんて意見は却下ですよ?

 そんなことしたらゴミと顔合わせる機会が増えちゃうじゃないですかやだー。

 ちなみにレトロゲームなのは安いから。小中学生のお財布に優しいのです。

 新作を買うお金があったらレトロゲーム10本とか買ったほうが幸せじゃないですか?

 レトロゲームと言っても今でも十分に楽しめる名作とかたくさんありますし。迷作も多いですけどねー。


「はぁー、残念。なんとかならないかなぁ」

『何とかする方法はありますよ?』

「まじで!!」


 きぃちゃんの希望あふれる言葉に食い気味で反応する。

 やった!きた!電気きた!これで勝つる!

 だってきぃちゃんの言うことに間違いがあるわけがないもの。


『魔力を電気に変換するための道具を作ればよいのです』

「そんなのあるの?」

『そもそも魔法で電気を生み出すことが出来るのに、道具に出来ない道理もないでしょう』

「そうなの?」

『出力を日本の家庭のコンセントの規格に合わせてあげれば、家電製品を動かすことに問題はないでしょう。』

「おおっ」

『作製するのが非常に簡単な道具ですので、ナハブでも簡単に作ることが出来るでしょう』

「素晴らしい、素晴らしいよきぃちゃん。さすが私の最高の相棒だよ!」

『何故でしょう、普段より私の評価が高いような気がします。まぁそれは置いておいて、先程も言いましたが地球へと帰還するためには条件をクリアする必要があります』

「なにしてるんだいきぃちゃん。早く、条件早くプリーズ!!」


 私は身振り手振りで早く情報をよこせとアピール。

 どことなくきぃちゃんが呆れている気配を感じられる。


『……まったくもうこの子は。クリアするべき条件は2つあります。まず1つめですが、私が完全な状態ではなく不安定な状態であるということに問題があります』

「そういや最適化中に魔力暴発させて転移しちゃったんだよね」

『その通りです。作業途中で余計なことをしてくれたものですから、より念入りに最適化を再実行しなければなりません。最適化に1ヶ月、その後完全に私に定着するまでに4ヶ月といったところですか』

「うわー、そんなにかかるんだ。まぁ、しばらくは冒険者稼業を満喫する予定だから時間に関しては問題ないかな」

『とにかく、まず私が完全な状態にならなくては完全な転移魔法が使えないというのが1つ目の条件です』

「わかった、2つ目は?」

『2つ目の条件はあなたが頑張らなくてはならないことです』

「私?」

『そうです、2つ目の条件として、地球へ帰還するためには超長距離転移をするための魔力が必要となります』

「そういえば、むっちゃ遠いんだったよね」

『現状では地球とミスレティアを移動するためには魔力が不足しています。なので、ナハブには転移に耐えうる魔力を保持できるよう鍛錬してください』

「そう言われても魔力を鍛錬する方法なんて心当りがないんだけど」

『レベルを上げれば良いのです』

「レベル!あるの!?」

『ありますよ。むしろ地球にいた頃から存在していましたが』

「なんでそんな大事なこと教えてくれないんだよぅ。確認とか出来るの?」

『地球人はレベルが上がったところでほぼ能力の上昇がありませんので、言う必要性を感じませんでした。確認をしたいのでしたら能力確認の魔法を使えば出来ますよ』


 よしきた!

 早速私は自分のステータスを確認する。




 名前:プリンセス・サクライ




 おぉぅ……。

 名前を見た瞬間、私は崩れ落ちた。

 絶望した!ファーストネームが前にきたことでより酷くなった自分の名前に絶望した!

 どうしてくれるよこの名前。どう見てもお姫様です。本当にありがとうございました。

 これさ、地球に戻った時、両親ぶち殺しても許されるよね?


 ……いや、まてよ?

 この星では私のことを知っている人なんていないわけで、偽名を名乗っても大丈夫じゃないか?

 うん、そうだよ。偽名だよ。何も馬鹿正直にあんなふざけた名前名乗らなくてもいいじゃん。

 よし、この方針で行こう。

 後はステータスを誰かに見られたりしないかだよね。


「ねぇ、きぃちゃん?」

『何ですか?ナハブ』

「ステータスってさ、他の人のも見れたりするの?」

『可能です。能力確認の魔法、もしくは鑑定系のスキルを対象に使い、レジストされなければ確認することが出来ます』


 ……。

 終わった。何もかも終わったよ……。

 魔法で見られちゃうんじゃ偽名名乗っても無駄じゃん。


『どうしたのですか?そんなこの世の終わりみたいな顔して』

「んとね、この世界ってさ、私のこと知っている人いないじゃん?」

『そうですね』

「じゃあさ、偽名名乗っても誰にもわからないじゃん?って思ったのね」

『なるほど。確かに本名を名乗りたくないあなたには悪くない手ですね。しかし、何故そんな暗い顔をしているのですか?』

「でもさ、魔法でステータス確認されちゃったら意味ないなって……」

『ああ、そんなことですか』

「そんなことじゃないよ!きぃちゃんはこの名前のせいで苦労してきたことを知っているはずなのになんでそんなこと言うの!」

『あら?ごめんなさい。そういう意味で言ったのではないのよ?それなら改名すればいいだけの話だったから』


 改名すればいいだけとか、そんな簡単に出来たら……。

 あれ?改名?出来るの?


「ねぇ、きぃちゃん?」

『何ですか?ナハブ』

「改名ってさ、できるの?」

『出来ますよ』


 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。


「言ーーーえーーーよーーー。それ早く言ーーーえーーーよーーーーーーー。どれだけ私があの名前嫌いなのか知ってんじゃん!」

『ごめんなさい。あなた最近名前のこと何も言わないから気にしていないのかと』

「諦めてただけだよ!日本じゃ改名したくても出来ないしさ。でもさ、心機一転別の星にやってきてさ、名前がプリンセス・サクライじゃ萎えんじゃんさぁーーーーーー」

『あー、はいはい、ごめんなさいね。そこまでのことだとは思わなかったのよ』

「いやさ、別にきぃちゃんが悪いわけじゃないってのはわかってるのよ。でもさ、長年の悩みをさ、いざ解決できるとなるとさ、なんかこう、あーーーーわかんない!」

『はいはい、ちゃんと聞いているから落ち着いて話しなさい』

「なんかね、こともなげに改名できますよなんて言われてもね、気持ちの整理がつかないというかね、混乱しているというかね、……なんか声でも出さないとすっきりしないっ」


 しばらく思いのままにわめき散らしていると、次第に心が落ち着いてくる。

 どうみても子供の癇癪だ。いや、子供だけどさ。我ながらみっともない。


『落ち着きましたか?』

「うん、ごめん。八つ当たりして」

『そんなこと構いませんよ。それよりも、新しい名前を決めましょう?』

「え?改名ってすぐ出来るの?」

『出来ますよ』

「まじかー。なんだかなー。いや、嬉しいには嬉しいんだけどさ、なんか納得いかないというか。いや、そんなことが言いたいんじゃないんだよ。あ、名前、実はもう決まってるんだ。ずっとね、名前変えられるならどんな名前がいいかなぁって妄想してた。由乃ってどうかな」

『ええ、いい名前だと思いますよ。では、ユノ・サクライでよろしいですか?』

「うん、それで……あ、駄目だ、気持ち悪い」

『違う名前にしますか?』

「いや、そうじゃないんだよ。名前はそれでいいんだけどね。名字が気に入らない。ねぇきぃちゃん、名字も変えることって出来る?」

『可能ですよ』

「じゃぁ、名字も変えたい。せっかく名前を変えることが出来るんだし、あいつらとの繋がりを残したくない」

『そうですか、では何にしますか?』

「うーん、そうだなぁ……」


 困ったな。全然思い浮かばないや。

 名前はずっと考えていたけど、まさか名字を変える機会が来るとは思ってなかったしなぁ。

 佐藤とか鈴木とかはありきたりだよね。


『どうしました?ナハブ』

「ごめん、ちょっと思い浮かばない。考える時間をください」

『構いませんよ。存分に考えてください』


 うーん、どうしよう。

 かといって、一ノ瀬とか長谷川とかもしっくりこない。

 あーーーー、いくら考えても何も思いつかない。


「ねぇねぇきぃちゃん」

『何ですか?ナハブ』

「なにか思いつかない?」

『知りませんよ。あなたが好きな様につければいいじゃないですか』

「その好きな名前が思いつかないから困ってるんじゃないかー」

『これからずっと使っていく名前になるのですから、納得のいくまで考えればいいのですよ。後悔はしたくないでしょう?ナハブ』

「それはそうなんだけどさぁ」


 とはいってもずっと考え続けるのもなんか不毛だしなぁ。

 何かびびっとくる名前が思いつかないものか。

 ……ってあれ?よく考えたらこれでよくね?

 私にぴったりな名前があったじゃん。

 と言うかこれしか考えられなくね?


「きぃちゃんきぃちゃん、決まった」

『あら?もう決まったの?後2時間位考えるのかと思っていたのに』

「なによそれ」

『ゲームの主人公の名前をつけるのにいつもそのくらいかけているでしょう?』

「うぐっ……そ、そんなこともあったかもしれないけど、とーにーかーくー、名前、決まったの!」

『はいはい、それで?』

「ユノ・ナハブ」

『ユノ・ナハブ?』

「うん、っていうかさ、きぃちゃん私のこといつもナハブって呼ぶじゃん?じゃぁ、ナハブでいいんじゃね?って。そう思ったらもうナハブ以外考えられなくなった」


 さすがに日本でだったら躊躇するけど、此処は異世界なわけで、日本的なファミリーネームにこだわる必要もないしね。


『そうですか、では、ユノ・ナハブへと改名するということでよろしいですね?』

「うん、よろしく」

『では、始めますね』


 するときぃちゃんが淡く発光しはじめ、そのままその光が私を包み込む。


『はい、完了しましたよ』

「え?もう?」

『確認してみたらどうですか?』


 そう言われ、私は早速能力確認の魔法を使ってみた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ