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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
2章 新しい生活
21/116

2-10.見えそうで見えないというのが素晴らしい

「つっかれたーーーーーーーーーーーーーーー」


 私は襲ってきた最後の魔物を倒すと、少し離れた場所へと転移し、そのまま仰向けに倒れた。

 え?なんで転移したのかって?さすがに魔物の死体が山積みになっているところへなんて倒れこみたくないっすよ。

 いや、マジしんどいっすよ。どう考えてもリハビリなんてレベルじゃないっすよ。

 結局2時間くらいぶっ続けで戦ってました。多分魔物500体くらいは倒したんじゃないですかね。王都からそれほど離れていないはずなのになんでそんなに魔物いるんだよ。普通、王都周辺の魔物なんて国の兵士が間引いておくものなんじゃないの?サボり?サボりか?サボっちゃってるのか?そのせいで私が大変な思いをしたの?

 いや、やめておこう。こんなことを言ったところで、どうせきぃちゃんにはちょうどいいリハビリになってよかっただとか言われるだけだろうし。それに、余計なことを言ってさらに過酷なリハビリを用意されても困る。マジでやるからね、きぃちゃんは。


 それよりも、今はやっと勝ち取った休憩を堪能するんだ。

 あー、風が気持ち良い。

 天気は良いし、気持ちの良い風は吹いてるし、今日はとても良い日だ。

 これできぃちゃんの地獄のリハビリがなければ最高だったんだけどな……。

 いや、もう考えるのはやめよう。考えるだけつらくなっていく気がする。

 私は念願の休憩に、だらけモード全開で寝転がっている。あー、心地良すぎて私もう立ち上がれないかもしれない……。


『ナハブ、はしたないですよ』

「ごめんきぃちゃん、無理、もう動けない。動きたくない。拙者、働きたくないでござる」

『またワケのわからないことを……。全くもう、スカートがめくれて下着が丸見えになっているじゃないですか。女の子なんですから羞恥心くらい持ってください』

「ありゃ?パンツ見えてる?まあいいじゃん、どうせ他に人なんていないし」

『そういう問題ではありません』


 そういう問題ではありませんとか言われてもさ、今はそんなことを気にしている余裕もなければ、スカートを直す程度の気力すらないわけなのですよ。いや、嘘だけど。

 でもさ、今の私はそんなことよりも、ただひたすらだらけたい。何もしたくない。いっそ地面と同化してしまってもいいのかもしれない。……いや、さすがにそれはないな。

 それとさ、羞恥心がないわけじゃないよ?私だってパンツ見られたら人並みには恥ずかしがるよ。でも、今は他に誰かがいるわけでもないし、パンツが見えてたところでなんでもないじゃん?ほらあれだよ、お風呂に入る時は裸だけど、別に誰かに見られているわけじゃないから恥ずかしくないのと一緒だよ。

 まあ、それをきぃちゃんに言うとまたお説教が始まりそうだから言わないけどね。


「ねえ、きぃちゃん。さすがにこれさ、リハビリにしては激しすぎない?」

『ナハブのだらけきった根性を叩き直す意味もありますので、これで良いのです』

「えー、なによそれ。確かにしばらく引きこもってたかもしれないけどさ、別にだらけていたわけじゃないじゃん」

『ゲームばかりの生活をだらけていると言わないのであれば、どういった行為をだらけていると表現すればいいのかを私は知りません』

「いや、確かにゲームばっかりしてたけどさ、そこはこう、ほら、ちゃんとゲームに向き合って真剣にやっていたわけでさ」

『あら、まだそのような言い訳を続けるのですか?根性の叩き直し方が足りなかったのでしょうか?』

「ごめんなさい!だらけてました!もう大丈夫なので勘弁して下さい!」


 速攻で謝った。これは危険だ。これ以上なにか言ったらさらに過酷なリハビリを強要されるかもしれない。マジでやるからね、きぃちゃんは。


『それよりも、いつまで周囲に下着を披露しているのですか?いい加減にスカートを直しなさい』

「いや、披露って……、なんかそれだとわざわざ私が見せてるみたいじゃない?」

『何か違うのですか?』

「これはあくまでも見えてしまっているだけで、私がわざわざ見せているわけじゃ……」

『何か違うのですか?』

「いや……」

『な・に・か・ち・が・う・の・で・す・か?』

「ごめんないさい、すぐに直します」


 怖えぇー。きぃちゃん怖えぇー。有無を言わさぬ圧力を感じるよ。

 正直言って、心地良い疲労感であまり動きたい気分ではないのだけれど、ここはきぃちゃんの言うことに従おう。

 いや、きぃちゃんに恐れをなしたから言うことを聞くわけではないですよ?ええ、決して違うのです。

 だって、私女の子だもん。パンツが見えちゃってるなんて恥ずかしいじゃないですか。

 だからスカートを直すのは当たり前なんです。決してきぃちゃんが怖いからスカートを直すわけではないのですよ。

 ……うん、自分に言い訳してみたけど、ものすごく白々しいよね。


 まあ、どう言い訳しようときぃちゃんの言うことを聞くことには変わりはないんだけどね。

 だって、ここで反論なんてしようものなら、地獄のリハビリパート2が勃発する気がしてならないから。

 私にとってはこっちの問題のほうが切実だ。

 そんなことになったら死んでしまう。私の心が。

 私の心の平穏のためにも、きぃちゃんに従うことは決定事項なのだ。


「これでどうよ」

『威張って言うことではありません。そもそも言われる前にやりなさい』

「……はい」


 スカートを直してからきぃちゃんに報告したらさらに怒られた……。

 言われたとおりにしたのに……。いや、きぃちゃんの言うことはもっともなんですけどね。


『そういえばナハブの私服はスカートばかりのようですが、何か理由があるのですか?』

「ん?ズボンとかはいたほうがいい?」

『そんなことは言っていません。ナハブの可愛らしさはスカートをはいてこそより輝くのです。むしろスカート推奨です。ただ、スカート以外の私服を見たことがなかったので何か理由があるのかと思っただけです』


 ああ、確かにズボンなんて体操着くらいでしかはかなかったしなぁ。

 こっちの星に来てからも当然スカートをはき続けているし。


「理由ってほどでもないんだけど、ズボンとかってさ、自分にどんなのが似合うのかわからないんだよね」

『ナハブならどんなものでも似合いますよ?』

「いやいや、そう言ってくれるのはありがたいんだけどさ」


 きぃちゃんはなんというか、私びいきのような部分があるからそう言ってくれるんだろうけど、自分ではどんなズボンをはいても似合う気がしないんだよね。


「これを口にするのは非常にしゃくなんだけどさ、私の親ってさ、服を選ぶセンスはあるんだよ」

『確かにナハブの私服は、とてもよく似合った可愛らしい服が多かったですね』

「そうなんだよ。そのセンスを名づけの時にも発揮して欲しかったけどね。でね?私の名前を灰被姫(プリンセス)なんてつけるくらいじゃない?買ってくる服も当然スカートばかりなわけですよ」


 私をお姫様に仕立てて着せ替えがしたかったらしく、買ってくる私服は当然スカート、寝間着ですらネグリジェという徹底ぶりだった。小さい頃は、女の子はスカートしかはいちゃ駄目なんだと思っていたくらいだ。


「そうするとさ、スカートなんかははき慣れているんで結構どんなデザインのものでもはけるんだけどね、ズボンをはくのってなんか恥ずかしい。普段はかないから、自分がズボンをはいているのをイメージすると違和感がすごい。自分でそんな風に思っちゃうから、周りの人から見てもおかしいんじゃないか?って思っちゃう」


 実際、小学生になって初めての体育の授業の時に、体操着のズボンをはいた時の違和感がものすごかった。

 体操着は全員が着るわけで、似合う似合わないとかはあまり関係ないはずなのに、どこかおかしくないだろうかとか、変じゃないだろうかとか、ものすごく気になったのを覚えている。


「まあ要するにさ、ずっとスカートをはいていたからだとは思うんだけどさ、スカート以外のものをはくのに抵抗があるというか、違和感があるというか、ぶっちゃけるとさ、スカート以外のものをはいている自分を誰かに見られるのがものすごく恥ずかしい」

『なるほど、親の教育の賜物というわけですね。少しナハブの両親を見直しました。ナハブはスカートをはいている姿が一番可愛らしいのです』

「いやいやいやいや、そんな事であのゴミ共を見直さないでよ」


 服のセンスが良いのは本当で、見る目が養われたという点では感謝しなくもない。

 しかし、親にスカートばかりはくように仕向けられた感はあるし、それが気に入らない。

 別にスカートが嫌いというわけではない。むしろ好きだと思う。ただ、あの親にそう仕向けられたと思うとすごく嫌な気持ちになるというだけだ。

 私にフザケた名前をつけた両親が、名前のせいでいじめられていることを相談したら逆ギレをおこすような両親が、死ぬほど嫌いなのだから。


『ナハブはスカートをはいていれば良いのです。ズボンなどはく必要はありません』

「まあ、多分余程のことがなければズボンははかないと思う。本当に恥ずかしいからね。ズボンをはいているのを見られるくらいならパンツ見られた方がましだと思うくらいには」

『何ですかそれは』

「だってさ、パンツ見られる時って大体が不可抗力じゃない?風でスカートがめくれてみえちゃったりさ。それに、見られるにしてもほとんどが短い時間でしょ?恥ずかしいには恥ずかしいけど、あー見られちゃった恥ずかしい、で終わりじゃん?でもさ、ズボンの場合はさ、自分で恥ずかしいと思いながらそれをはいて人に見られるわけじゃん?その格好を見られること自体が恥ずかしいわけで、あー見られちゃった恥ずかしい、で終わらないじゃん?」


 ズボンは他の人に見られるのが当たり前なんだから、私がそこにいる限り見られ続けているわけでしょ。

 つまりさ、不可抗力で誰かにパンツを見られて恥ずかしい思いをするのは短い時間だけどさ、ズボンをはくという恥ずかしい格好をして出歩くことは短い時間じゃすまないのですよ。


『それは流石に発想が飛躍しすぎていると思うのですが……』

「そんなことないよ、パンツは見えても隠すことができるけど、ズボンは隠しようがないんだよ。どうせ恥ずかしい思いをするのなら、隠せるほうがまだましなんだよ。長時間恥ずかしい格好を周囲に見せ続けるほうが嫌なんだよ」

『そもそも、下着とズボンを見られた時の恥ずかしさを同列で語っていることに疑問を覚えるのですが』

「だって、結局恥ずかしい思いをするのは一緒じゃん?だったら短時間で済むほうが気持ち的には楽じゃない。そもそもズボンをはくのもさ、見られることが前提なのに恥ずかしがるのなら、最初からはくなって思うでしょ。だから私はズボンは恥ずかしいからはかないんだよ。体育の授業なんかはしょうがないからズボンはいてたけどさ」

『……そうですか、あなたがそういうのならばそういうことにしておきましょう』


 まあ、体育の授業の時は強制的にズボンだったわけだし、周りも同じ格好だったわけなので、さすがにパンツを見られるより恥ずかしいなんてことはなかったけどね。


『まあそれはもういいとして、ナハブは比較的短めのスカートをよくはいていると思うのですが、それにも何か理由が?』

「あー、それは単純に好みだね。短いスカートのほうが可愛いのが多いんだよ」

『流石ナハブ、よくわかっています。ナハブには短いスカートが至高なのです』


 えー、私そういう意味で言ったんじゃないんだけどな。スカートのデザインが可愛いと言ったつもりなのに、私に短いスカートが似合うという話になっていた。

 あれ?私ときぃちゃん話通じてるよね?なんかたまにきぃちゃんって、私のことになると話が通じない時がある気がする……。


『ところでナハブ、スカートが短いと激しく動いた時に下着が見えてしまうと思うのですが、何か対策等はとらないのですか?先程の戦闘中も盛大に見えていましたが』

「いや別に。見えちゃったら見えちゃったでしょうがないんじゃない」


 別にわざわざ見せるつもりはないけれど、見られちゃったのならばそれはそれでしょうがないじゃない。それにさっきの戦闘だって、次から次へと襲い掛かってくる魔物の相手をするのに精一杯でそんなことを気にしている余裕はなかったよ。


『それではいけません。スカートの中は見えそうで見えないくらいが一番美しいのです』

「いや、そんなこと言われても……。人のいるところで見せびらかしているわけじゃないんだし、別にいいと思うんだけど」

『人が見ている見ていないの問題ではないのです。常日頃から心がけておくことが重要なのです。今日のあなたの言動で確信しましたが、あなたは人より羞恥心が薄いようなので、より注意するべきなのです』

「えー、あー、はい」


 え?なんで私注意されてるの?

 てか、なにこれ?なんできぃちゃんが私のスカートとパンツについて熱く語ってるの?

 それと、きぃちゃんの話している内容が所々でおっさん臭いと思ってしまうのは私だけだろうか。いや、きぃちゃんの思念通話は私にしか届かないから実際私だけなんだけどさ。

 私、この話聞かなくちゃ駄目なのかな?パンツくらい見られたところで少し恥ずかしいだけで、別に不都合があるわけでもないし、私としてはどうでもいい話なんだけど……。


『ナハブ!ちゃんと聞いていますか!』

「はい!聞いてます」

『全くあなたは――――――』


 あー、これ逆らっちゃ駄目なやつだ。

 なにか余計なことを口にしたら話が長くなるやつだ。

 これはきぃちゃんの機嫌をそこねないように話を聞いておくしかないよなぁ……。

 私今休憩時間だったはずなんだけどなぁ……。

 これ、いつ終わるんだろう……。

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