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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
1章 プロローグ的なもの
2/116

1-2.日本語が通じる…そんなふうに考えていた時期が私にもありました

『――ブ、―――――事――か!――――してください!』


 うるさいなぁきぃちゃんは。もう少しくらい眠らせてくれてもいいじゃない。

 ……ってあれ?別にそんな眠くないや。たまにはスッキリ起きてみるのも悪くないか。

 そう思いゆっくりと目を開ける。


『ナハブ!無事ですか!意識はちゃんとありますか!』

「ん?おはようきぃちゃん。どしたの?そんな慌てて」


 何故かきぃちゃんが慌ててこちらへ話しかけてくる。

 あれ?何できぃちゃん杖になってるの?あれ?私変身してる?


『……はぁ、どうやら無事のようですね。いつまでも寝ぼけていないで現状を把握してください』


 ん?あぁ、そうか、フラスの魔術師が最後にちょっかいかけてきたんだったか。

 っていうか日が昇ってる?そんな時間経ったの?いつの間に?

 それより、こうして話をしているということは死んではいないということだよね。

 とりあえず私もきぃちゃんも無事なようでよかった。


「で、どうなったの?」


 無事らしいことはわかったけど、結局あの魔力の塊のこととか、あの光の後のこととか、わからないことだらけなのできぃちゃんに尋ねる。きぃちゃんに聞いとけば間違いないしね。


『私に魔力の塊が打ち込まれたのは覚えていますね?』

「うん」

『あの時、私は情報の最適化中で不安定な状態でした。そこへ高濃度かつ大量の魔力が私へ打ち込まれた。そして起こる現象、それは魔力の暴発です』

「……魔力の暴発って、あの?」

『はい。私がフラス=パモンより地球へと転移したあれです』

「うわぁ……」

『結果、私達は星を越え無作為に転移をし、この地へとやってきたというわけです。あなたの好きな言葉で言うと異世界転移というやつですね。因みに、私達は別々の星へと転移してしまう可能性もあり、こうやって揃って転移できたのは本当に運が良かったです』


 異世界転移という言葉で一瞬テンションが上がりかけたが、その後に続いたきぃちゃんの言葉で息を呑む。それまじで笑えない……。きぃちゃんと別れていたらきっと私の人生そこで終わってたよ。まぁ、この星が私が生きていける環境にあるのかという問題はあるけど、きぃちゃんがいればきっと大丈夫な気がする。


「きぃちゃんが一緒で本当に良かった」


 心の底からそう思い、呟いた。


「ところできぃちゃん。私たちは地球へ戻ることは出来るのかな?」


 私がきぃちゃんにそう確認すると、しばらく沈黙した後、ゆっくりと私へ語りかけてきた。


『そのことも含め、現状の説明をさせていただきます。よろしいですね?』

「うん、お願い」

『まずこの星についてですが、名前はミスレティア。地球から約7億光年程離れた星です』

「7億光年っ?光年って確か光が1年で到達する距離だよね?むっちゃ遠い?」

『むっちゃ遠いですよ。そしてこれ、とても重要な事なのですが、この星には文明が存在します』

「?……それがどしたの?」

『この星には人間に類する存在が居り、生活をしているということです』

「っ!それって」

『私達がこの世界で生活するための土台が既に出来ているということです』

「おおっ、それじゃぁもし帰れなかったとしても、この星で生きていくことは可能なんだね?」

『そうなります。そしてそんなあなたに更なる朗報です。』

「ん?何?」

『この星は、あなたの好んで読んでいる本に出てくる、異世界というものとほぼ同じ存在と言ってもいいでしょう』

「!!!!!まじで!!!」

『まじですよ』

「あの!冒険者とか!魔物とか!魔法とか!出てくる異世界!?」

『冒険者も存在しますし、魔物も存在しますし、……魔法は今までもあったじゃないですか』

「うぉぉぉぉおおおお!!まじか!まじっすか!まじですか!」

『ナハブ、少し落ち着きなさい』

「あ、はい、ごめんなさい。……ねぇねぇ、きぃちゃんきぃちゃん」

『何ですか?』

「この星は魔物がいるんだよね?私でも冒険者として生計を立てて生きていくことが出来るんだよね?」

『可能です』

「じゃぁさ、じゃぁさ、……地球に戻る必要なくない?」

『はぁ……、ナハブならそう言うと思ってました』

「だってさ、だってさ、地球に戻ってまたあのゴミどもの相手するよりも、異世界でひゃっほうする方が楽しいじゃん?それにきぃちゃんいれば魔物なんかに負けないでしょ?」

『当然です。私に勝る存在などこの世に存在しません』

「じゃぁ問題ないよね。私、魔物と戦ってみたい!どこかにいないかなっ」


 言うが早く私はきぃちゃんを手に適当な方向へ走り出す。

 きぃちゃんが何か言っているような気がするが気にしない。レッツ魔物ハンティング!


『ちょっと、ナハブ、待ちなさい!』


 アーアーキコエナーイ。


『ナハブ!まだ話は終わってませんよ!』


 せっかくの異世界。私は冒険者になって魔物を倒すんだ。


「私が冒険者だ!」

『ナハブ?何を言っているの?』


 そんな不毛なやりとりをしていたところ、前方に何かいるのを見つけた。1km先ってところかな?

 よしきた、早速魔物発見!ってあれ?誰か襲われてる?

 おおっ!これは異世界名物の魔物に襲われている馬車を助けるってやつですね?なんというイベント回収。


「よしっ、いくよきぃちゃん」

『はぁ、しょうがありませんね』

「きぃちゃん形態変化(モードチェンジ)(ソード)


 きぃちゃんが光に包まれ、一瞬で杖の形態から剣の形態へと変化する。当然中二心をくすぐる素敵デザインだ。

 そう、きぃちゃんは魔法少女の杖でありながら、あらゆる武器の形態へと変化することが出来る万能な武器なのだ。

 当然ながら各形態には意味があり、杖形態はあらゆる魔法の力を増幅し、弓形態は貫通力のある遠距離攻撃が得意で、斧形態は一撃の威力重視、等々の得意攻撃や威力増幅の機能があったりする。

 剣形態はバランスが良く、斬撃と魔法による近距離遠距離を無難にこなす、突出したところはないがある意味万能な形態だったりする。


 まぁ、いろいろごちゃごちゃ言ったけど、そんな細かいことはどうでもいいのよ。

 やっぱり異世界での魔物とのファーストアタックは剣だと思わない?

 いや、最近の異世界物のお話はそうでもないことはわかってるよ?

 でもさ、ゲームだとか、ファンタジーだとか、やっぱ基本は剣じゃん?

 基本は大事じゃん?


 そして距離を詰める傍らで相手を観察する。

 馬車3台に護衛らしき人が15人、そして犬っぽい魔物が7匹。って魔物でかっ。1匹2mくらいないあれ。

 護衛は死人こそ出ていないが形勢はかなり悪そうだ。これなら魔物倒しても横殴りとか言われないよね?

 そしてとうとう魔物の下へと辿り着く。


 一番近くのワンコに剣を横薙ぎに一閃。

 その一撃で魔物は上下に別れ、絶命する。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……えっ?


『ねぇねぇきぃちゃん!』


 向こうに人がいるので思念通話できぃちゃんに話しかける。


『どうしました?ナハブ』

『あのワンコの魔物、一撃で死んじゃったんだけど』

『それがどうかしましたか?』

『……弱くない?』

『……はぁ、ナハブ、確かにあの魔物は強くはありません。しかし、この星基準では決して弱い魔物というわけでもありません。私達が強すぎるだけです。私がどういう存在なのかを思い出しなさい』

『あー、きぃちゃん最強だものね』

『そうです。むしろそんな私達を相手にまともに戦いになっていたフラスの魔術師達が異常だということを知りなさい』

『あー、はい、じゃぁさくっと魔物殺っちゃいますか』


 私たちが思念通話で会話していた間、護衛も魔物も呆然とこちらを眺めているだけだった。

 私が剣を構え直すと魔物たちは我に返り、私に敵意を向けてきた。

 これはむしろ都合がいい。

 魔物たちは標的を私に変更すると、一斉に襲いかかる。


「オーダー:ソードレイン」


 私はそう呟き、剣を下から上へと振り上げる。

 すると、その刃の軌跡を残像のように無数の魔力の刃が埋め尽くす。

 そのまま魔力の刃は上空へと勢い良く飛び上がり、数瞬後、魔物の下へと降り注ぐ。

 全ての刃が地上へと降り注いだ後、残ったのは地面に縫い付けられるように刃に貫かれ、絶命している魔物たちだった。


 これがきぃちゃんが剣形態の時に使用できる広域殲滅魔法。広範囲へと剣の雨を降らせることの出来る、私もよくお世話になった魔法。

 まぁ、今回はそんな広範囲ってわけじゃなかったけどね。

 うーん、たった6匹相手に使うのはもったいなかったかな?

 まぁ、あれが一番手っ取り早かったからいいか。


 そ・れ・よ・り・も、魔物との戦いの後は異世界人との交流ですよ!

 きっと助けてくれたお礼にって街まで馬車で連れて行ってくれたりするんですよ!

 やっぱり異世界に来たら馬車の旅ですよ!

 ヘイ!カモーン!異世界交流……ってあれ?

 皆さん何やら警戒してます?

 あー、そういえば私今、変身中ですよね。仮面とかつけた怪しい人ですよね。

 ……どうしよう。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「■■■■■■■■■■■■■」

「■■■■」

「■■■■■■■■■■■■■■■■」

「■■■■■■■■■」


 え?何?何語?

 護衛っぽい人たちがこちらに向かって何か言っているけど、さっぱりわからない。

 これはあれだ、きっとそうだ。


『ねぇねぇきぃちゃん』

『何ですか』

『やっぱりこの世界じゃ日本語って通じないんだよね?』

『むしろ通じると思っていたナハブにびっくりです』

『ですよねー』


 うん、異世界人とのファーストコンタクト失敗。

 言葉がわからないんじゃ交流したところでいい結果になんてなるわけないよね。

 これは三十六計逃げるに如かずというやつだ。

 とりあえずはこの星に来た時に最初にいた場所へ帰るか。

 そう考え、私は転移の魔法を使用した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何処ぞの「剣」の技みたい ???「貴様はこれを「剣」と呼ぶのか!? 否! これは、夢に向かって羽ばたく「翼」!! 貴様の哲学に、翼は折れぬと心得よ!!」
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