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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
2章 新しい生活
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2-5.キモい

 準備が整ってから少し待っていると、扉が開けられ、何人かが部屋へと入ってくる。

 私をここへと連れてきた、自称プロの誘拐犯と同類だろうか?粗暴な雰囲気が感じられる。

 また誰かさらってきたのだろうか。

 そんなことを考えながらも観察していると、その中に身なりの良い豚と、趣味の悪い豪華な服を着た豚がいた。


「フヒヒヒヒヒヒヒヒ、今回もなかなかの品揃えじゃないか」

「ありがとうございます。ワイルブ様のお力添えのおかげで、安定して良い商品を仕入れさせていただいております」

「フヒ、僕はパパにお願いしているだけだよ。パパなら何でもお願いを叶えてくれるからね」

「はい、ダーウニック公爵様にも便宜を図っていただき、感謝しております」

「フヒヒヒ、僕の可愛い可愛いお人形さんを手に入れるためだからね。協力は惜しまないよ」


 二匹の豚がこちらを眺めながら会話を始める。

 なるほど、身なりの良い豚が違法な奴隷商人で、悪趣味な豚がゴミクズ貴族ってところかな?

 他は従業員兼誘拐犯ってところだろうか?まあ、下っ端でいいか。

 しかし、やっぱり貴族が絡んでいたんだね。しかも公爵だなんてずいぶん大物が関わっていたなぁ。


 それにしても、パパって……。お前何歳だよ。えーと……27歳っ!?

 え?27歳?30後半くらいかと思ったら27歳?

 ないわー。まじでないわー。

 醜くブクブク太ってて、趣味の悪い変な服を着て、脂ぎったその顔で、27歳?しかも父親のことをパパ?

 その歳で、その顔で、ついでにその重量級の体型でパパとか言っちゃうの?うあーーー、キモい、すごくキモい。存在自体がキモい。生理的に無理。何でこんなのが存在しちゃってるのよ。

 そう、そうだよこれ、この世に存在しちゃいけないたぐいのやつじゃないですか?え?いいの?存在してもいいの?こんなにキモいのに存在しちゃってもいいの?

 いや、駄目だよ。どう考えても駄目だよ。100歩ゆずって、存在してもいいことにしてもさ、こうやって女の子たくさんさらっている時点で駄目だよ。存在自体が気持ち悪いのに、言動も気持ち悪いとか、生きている価値がないよ。消されたとしても文句は言えないよ。そもそも、犯罪者のゴミクズだし。


 しかしあの二匹、私たちがいるのによくもまぁ喋ってくれること。

 色々と情報が手に入れられて大助かりですよ。正直言って捕まった後に、どうやって後ろで力を貸している害虫を特定しようかと悩んでいたんですよね。手間が省けました。

 ここにいる奴ら全員とダーウニック公爵家とやらの当主を駆除すれば良いわけですね。わかります。

 そんなことを考えていると、ふと会話が途切れていることに気付く。

 ちらっと横目でうかがってみると、どうやら悪趣味で気持ちの悪い豚がこちらの方を眺めている様子。品定めでもしているのだろうか?視線も気持ち悪いとか、本当に救いようがない。


「フヒッ、あの子っ、あの子いいねっ」


 どうやらお目当ての子がいたようで、鉄格子を指差してはしゃいでいる。いや、さらわれてきた女の子の誰かを指差しているのか。変態豚貴族のご指名入りました―。選ばれた子はご愁傷様です。だって、変態豚貴族好みの容姿ってことですよね?ないわー。

 さて、ご指名の入った可哀想な子はどの子だろうか。大丈夫だよ、ちゃんと私が助けてあげるからね。あんなキモ豚の餌食になんてされてたまるもんですか。

 そして豚が指差した行方を確認する。あるぇー?何か指先が私に向いているような気がするんですが?

 って、え?私?

 ご指名私?

 まじで?


「フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、すごく僕好みだよっ」


 変態キモ豚貴族好みの容姿でしたか私。……ないわー。

 向こうのテンションは上がりまくっているようだが、私のテンションはだだ下がりだよ……。


「すごくいい、すごくいいよ、胸が平らなのは残念だけど、それ以外は最高だよっ」


 平らじゃねーよ!ちゃんと膨らんでるよ!失礼だなこの豚。

 てか、はしゃぎ方がキモい。ものすごくキモい。この上なくキモい。

 なにぴょんぴょん飛び跳ねてるんだよ。

 27歳キモ豚がなに無邪気な少年のようにはしゃいでるんだよ。


「それとあの子っ、あの胸の大きい子っ」


 うわー、あの11歳巨乳さんも目をつけられちゃいましたか。

 あ、自分のことだと気付いちゃったみたい。泣いちゃってるよ。

 あとちょっとの我慢だよ。ちゃんと助けるからね。


「あと、あそこにいる小さい子と、そこの肌の黒い子と、赤い髪の子と、黒い髪の子、あっちの緑の髪の子と、紫の髪の子がいいね」


 おいおいおいおい、どんだけ選ぶんだよ。

 指名された子は絶望的な顔をしているか、泣いているかのどちらかだ。大丈夫、君たちもちゃんと助けるから。

 そして、指名されなかった子はどこかホッとしたような顔をしている。いや、君たち助かったわけじゃないからね?あの豚貴族に選ばれなかったことは助かったといえば助かったのかもしれないけれどさ、結局奴隷として商品となっているという事実には変わりはないからね?いや、ちゃんと助けるけどさ。


「以上でよろしいでしょうか?」

「フヒヒヒヒヒヒ、今回はこれでお願いするよ」

「今回は随分とお選びになりましたね」

「フヒッ、今回は実に僕好みの子がたくさんいたからね。特にあの子。僕が最初に選んだ黒い髪のあの子。実にいい。ものすごくいいよあの子。フヒッ。フヒヒヒヒヒヒ」


 うわぁ……。

 大絶賛だよ私……。

 豚に絶賛されてもなぁ……。


「毎度ご利用ありがとうございます。お選びいただきました商品は全部で8人となります。本日お持ち帰りになられますか?」

「フヒヒヒ、今日は予想以上に購入してしまったから準備ができていないなぁ。後日届けてもらえるかい?」

「かしこまりました。それでは、準備の都合もあるでしょうから二日後に納品という形でどうでしょうか?」

「フヒ、それでお願いするよ。それと、一人だけ今日持って帰るから、手続きを頼むよ」

「承りました。お気に入りの黒髪の少女ですね?」


 うわー、私、お持ち帰り決定しました。なんで私そんなに気に入られてんの?

 いや、むしろ都合がいいんだけどさ。ダーウニック公爵家の場所なんて知らないし。連れて行ってくれるのならそのほうが楽だし。

 でも、そういう問題じゃないんですよ。豚にお持ち帰りされるという事実が私の心をなえさせるんですよ。

 この件に関わってから心にダメージを受けてばかりいるような気がする……。ご飯もおあずけされるし、いいことなしだよ……。


「そこのお前、出ろ」


 豚二匹と一緒に部屋に入ってきて今まで待機していた下っ端が、鉄格子の檻の鍵を開け、私に出るようにうながす。

 私が言われるままに檻の外へと出ると、豚貴族が近づいてきて、顔を寄せてきた。

 近い!近いよ!キモいから近寄ってくるなよ!なにニヤニヤしてんだよ!フヒフヒ言ってんじゃねぇよ!余計にキモいって!

 私が早く離れろと念じていると、豚貴族は何かを思いついたかのように私から離れた。


「フヒ、フヒヒヒヒ、危ない危ない。楽しみは僕の部屋に行くまでとっておかなくちゃね。ここで遊んじゃうのはもったいないよね。フヒヒ。それまで我慢しないと」


 うおぉぉぉぉ、私何かされそうになってたの?

 危なかったーーーー。何かされていたらたぶん無意識にそのまま消し飛ばしていたよ。ここまで我慢したのにそんなあっさり殺っちゃったら気が済まないどころの話じゃないよ。


「それでは、別室にて手続きいたしましょう。そこのアナタもついてきなさい」


 言うが早く、奴隷商人は部屋の外へと出て行った。

 豚貴族もその後をついていき、私も周りを下っ端に取り囲まれながらも部屋の扉をくぐって、豚二匹の後をついていく。

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