5-2.例を挙げてみようとすると、意外と思い浮かばなくないですか?
うん?肝心のミーナとの出会いが省略されすぎだって?よろしい。ならば語ってしんぜよう。
勇者たちを召喚したのは、偉そうにふんぞり返っている王様 with 術者の皆さん and 魔力タンクにされているその他大勢の人たちでした。まあ当然のことながら、術の行使者としての立場にいたのは王様。そして、案の定クズでしたよ。まあ、召喚魔法に隷属の術式が組み込まれていた時点でお察しくださいってなもんだよね。
ミーナは『魔力タンクにされているその他大勢の人たち』の中にいました。
他の人たちと明らかに毛色の違う人物が混ざっていたため、気になって鑑定させてもらってみれば、まさかのこの国のお姫様。いやいやいや、お姫様にしてはちょっと扱い悪すぎじゃないですかね?そんなことを考えていると、ここで入ってきましたきぃちゃん情報。どうやらこの国では、オッドアイは忌み子として扱われるんだとか。うん、そんな事実にもびっくりしたけど、それを知ってるきぃちゃんにもびっくりですよ。いや、確かにさ、きぃちゃんは何でも知ってるさ。ちゃんと私自身、そう思ってるよ?信じてるよ?確信しちゃってるよ?でもさ、初めてきた世界の、初めてきた国の情報をさらっと教えられるとさ、さすがにびっくりするわけなんですよ。これは決して、きぃちゃんの知識を疑っているとか、そんなんではないのであしからず。
さて、そんな扱いの悪いお姫様が気になってしまったため、さらにきぃちゃんに色々と聞いてみました。
結論、この国の人間は馬鹿しかいないんじゃないのかな?
まず、オッドアイが忌み子とされる理由が、人族と敵対している魔族にオッドアイがたくさんいるらしく、オッドアイを持って生まれると「もしかして、魔族の生まれ変わりなんじゃね?」っていうことで嫌悪されるらしいのです。まあ、ここまではまだ理解できなくもない。敵対種族の象徴ともいえるような特徴を持って生まれた子供がいて、そうなった理由が全くの不明であるというのならば、それは確かに警戒するのでしょう。未知のものっていうのは、ただ知らないと言うだけの理由で、恐怖にもなり得るからね。
でもね?でもさ、それは理由がわからなければしょうがないよね、っていうだけのことなんだよ。
だってさ、オッドアイが生まれる理由が謎だった昔ならばともかくさ、今では『膨大な魔力を持って生まれるがゆえにオッドアイになるのではないか』という説が広まってきているというのに、未だ迫害されているというのは愚かとしか言いようがないじゃない?実際、オッドアイで生まれてきた子供は例外なく膨大な魔力を持っていたらしいし、かなり信憑性のある説だよね?普通に考えれば、忌み子どころか超優良物件じゃん。
え?魔族の生まれ変わりだから膨大な魔力を持っているんじゃないのかって?うん、でもね、魔族だからって必ずしも魔力をたくさん持っているわけじゃないってのは、周知の事実なわけなんですよ。つまり『膨大な魔力、イコール、魔族』とはならないということは、すでに世間に広まっていることなんですね。それに、そういった魔族にオッドアイが生まれないということも、知っている人は知っている事実。それらの話をまとめると、人族魔族にかかわらず『膨大な魔力を持った者がオッドアイで生まれてくる』という説が一番有力になるのは自明の理。それでも納得ができないというのであれば、それはただの無能の証左。自分の信じる説以外を信じたくないと言うだけの、ただのわがままに過ぎません。
そもそもの話、極論を言ってしまえば『魔族の生まれ変わりだから、膨大な魔力を持ち、オッドアイで生まれてくる』ということが成り立つのであるとすれば『魔族の生まれ変わりだから、あまり魔力を持たず、普通の目で生まれてくる』という暴論も成り立ってしまうんですよ。だって、そういう魔族だってたくさんいるんだし。こんな簡単なことにも気づかない(気づいていないふりをしているだけかもしれないけど)と言うんだから、自分の信じたい事以外を信じたくない人の視野の狭さってのにはあきれるよね。まあ、だからこそ自分に都合の良いことを盲信するんだろうけど。
てかさ、人族は魔族と戦争しているらしいのですよ。戦争。まあ、敵対してるんだから別に驚くようなことじゃないんだけどさ、戦争、してるんですよ。
つまり、戦争しているわけなんだから、当然優秀な戦力が欲しいわけですよね?
だというのに、膨大な魔力を備えた優秀な戦力となる可能性の高い人たちを、なんでオッドアイというだけのくだらない理由で、迫害なんてしてるんですかね?本当に魔族を倒したいと思っているんですか?と問い詰めたいところですよ。
あげく、自前の優秀な戦力を自分たちで潰しておいて、よそから戦力をかっさらってきて隷属させるだとか、無能な上に自己中ですと喧伝しているようなもんじゃないですかね?え?無能どころか売国奴のレベルだって?うん、私もそう思う。
さて、お姫様はそんな忌み子の象徴であるオッドアイを持って生まれてしまったため、お姫様という立場にもかかわらずかなり冷遇されて生活していたのではないか、というのがきぃちゃんの推測です。まあ、あの扱いを見れば、きっとそれが正解なんだろうなと思わざるを得ないよね。
だってさ、ありえないでしょ。一国のお姫様が魔力タンク扱いだなんて。仮にお姫様の魔力量が尋常でないくらい多くて魔力を供給してもらったのだとして、……いや、仮にじゃないね。私はお姫様のステータスを確認しているから知ってるけど、確かにお姫様の魔力量はかなり多い。勇者召喚なんていう、魔力を馬鹿食いするような儀式に、魔力量の多いお姫様が駆り出される、というのはまだ理解できる。でもさ、それでも普通は、特等席を用意されるとか、他の人よりも扱いが良いとか、あるじゃない?間違っても、その他大勢と一緒に放り込まれて良いような存在じゃないでしょ?そんな扱いをされている時点で、普段の扱いがうかがい知れるってもんだよね。
さて、途中経過はすっ飛ばそうか。いや、だってさ、国王の無能っぷりを懇々と語ったとして、何の面白みもないでしょ?いやホントものすごい無能っぷりだったわけなのですよ。言葉にするのもアホらしいくらいに。
ということで、結論として、愚王の相手をさせられた代償としてお姫様をもらっていくことにしたのです。向こう側としても誰一人とてお姫様を守ろうとなんてしなかったし、お姫様だってそんなところにいたくはないだろうしね。まあ、どうしても帰りたいというのであれば、お姫様を返すことも視野に入れなくはないですけれど。
ここで重要なのが、私が魔王で、ミーナがお姫様ということ。
うん、やっぱり魔王って言ったらさ、お姫様をさらうってイメージ、あるじゃない?具体的に例を挙げろと言われても、パッとは出てこないんだけどさ。
……いや、だってさ、すぐに思い浮かぶのって、さらってったのが魔王じゃないヤツばかりなんだよね。有名所で言えば、竜退治なゲームでは竜の王様がお姫様さらっていったし、桃姫様をさらっていったのはでっかい亀だし。ああ、そういえば『あの世で俺にわび続けるRPG』では、魔王にお姫様がさらわれたという体で話は進んだけど、結局の所、逆に魔王様がお姫様さらわれてたね。親友(一方通行)に。まあ、あれはさらわれたっていうよりも裏切られたと言うべきなのか……。。
……あれ?マジで魔王がお姫様をさらう作品が思い浮かばないぞ。なんで私には『魔王と言えばお姫様をさらう』というイメージがあるんだろうか……。
ん?なになに、きぃちゃん。え?でっかい亀は大魔王様だって?マジっすか、知らなかったよ。それと、お姫様の名前がタイトルになって伝説になってるゲームとか、パンツ一丁で延々と槍を投げ続けるゲームとかがあるって?ああ、なるほどね。でもさ、やっぱり思ったよりも少ないよね。とっさに思い浮かばないし。
……それよりもさ、なんできぃちゃんはさらっと私の思考をジャックしてるんですかね?え?思考がダダ漏れになってるのが悪い?マジっすか。ダダ漏れになってましたか。それはそれは失礼しました。
いや、それでもきぃちゃんくらいしかそんなことはできないよね?さすがきぃちゃん。さすきぃ。
魔王がお姫様をさらっていくシチュエーションのある作品がさっぱり思い浮かばないというトラブルはありましたが、ここはあえて開き直ります。いや、だってさ、せっかく魔王になったんだし、お姫様さらってみたいじゃん?実際にそういう作品が思い浮かばなかったとしても、イメージって大事じゃん?まあ、究極的に言ってしまえば、私がやってみたかったからっていう、ただそれだけのことなんだけどね。
というわけで、お姫様一名、マイホームへごあんなーい。ついでに、勇者四名もごあんなーい。