表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X3章 まおうが あらわれた! コマンド?
104/116

x3-16.『たたかう』

「たーのもーー」


 そしてやってきました魔王城。いえ、流石に城門前へとやってきて「たのもう」という声かけはどうなのでしょうか……。しかしそれよりも、門番をしていた(いか)つい魔族達は、私達をすんなりと通してしまいました。門番の存在意義とは一体……。え?人族がやってきたら通して良いことになっている?……これはどう取ったら良いのでしょうかね?人族に友好的?それとも、人族ごときが城内に侵入したところで、何もできないだろうという過信?まあ、普通の人族であれば問題ないのでしょうけれど、ここには人族の皮を被った規格外の魔王様がいらっしゃるわけで、ちょっとセキュリティが甘いと言わざるを得ないですね。とは言っても、ユーノンが相手となっては抵抗した所で無意味ではあるのですけれど。


 何の抵抗もなく玉座の間へと通され、あっけなく魔王とご対面。更には側近らしき魔族が四名(はべ)っております。これが正しい四天王ってやつですよね?

 そこで私達が魔王の前へと連れてこられた理由が語られます。どうやらこの魔王、人族をいたぶって遊ぶのが大好きなようで、私達はそのためのおもちゃということなのだそうです。私の聞いた魔王の話は、ありのままのことであり、誇張されたものではなかったようです。


 魔王はまず、四天王(向こうは四天王とは言っておりませんでしたが、勝手に私がそう思っております)を私達にけしかけてきましたが、こちらは何故か私一人で相手をすることに。ユーノンからは「ちゃんと手加減するんだよー」という声援をいただきましたが、言葉よりも物理的な応援が(一緒に戦って)欲しいです。切実に。

 なぜ私が一人で戦わなくてはならないのかと聞いてみたところ「え、だってアイツら弱すぎるんだもん。それなら、ミーナに戦闘経験積ませるのに戦わせたほうがいいじゃん?ミーナは私やきぃちゃんばっかり相手にしてたからさ、普通の相手とも戦っておいたほうがいいと思うんだよね」との回答をいただきました。確かに私は、ユーノンやメイさんに訓練を手伝っていただいた関係で、それ以外の相手との戦闘経験が乏しいということは否めません。一応、訓練室の機能で魔物とも何度か戦ってはみましたが、それでもやはりメイさんに相手をしていただいたことのほうが圧倒的に多いため、戦闘経験が偏っているとも言えるのかもしれません。

 しかし、これだけは言いたいです。魔王の四天王相手に『普通の相手』というのは違うのではないのでしょうか?確かに、ユーノンやメイさんと比べれば普通なのかもしれませんが、常識的に考えて、魔王の四天王は『強敵』に該当しますよね?え?弱いから強敵じゃない?あ、そうですか……。




 結局私は、ユーノンの意見を(くつがえ)す言葉を持ち合わせておらず、一人で戦うこととなりました。そしていざ対峙してみれば、どうやら相手はお怒りの様子。私とユーノンの会話が筒抜けだったようです。それは魔王の四天王たる面々が、弱い弱いと散々言われてしまえば怒るのも当然というものです。……これ、本当に私が一人で戦わなくてはならないのでしょうか。




 勝負はほんの一瞬でした。私がとりあえず牽制(けんせい)で放った魔法に飲まれ、四人とも戦闘不能に。……弱すぎじゃありませんか?流石のユーノンもこの結果は想定していなかったようで、驚いた顔をしていました。戦闘経験を積むために私が一人で戦ったというのにも関わらず、戦闘にすらなっていないというまさかの結果です。これでは、ユーノンに弱いと連呼されても仕方がありませんよね。


 そして向こう側の魔王は、自分の側近達の不甲斐なさにお怒りの様子。今度は魔王と私の一対一です。本当であれば、ここで『また私が一人で戦わなくてはならないのですか』と不満を漏らすところなのですけれど、先程の四天王戦があまりにもあんまりな結果だったため、私も少しやる気になってしまいました。

 あまり自分の力を過信するつもりはありませんが、四天王があの程度であれば、魔王だってなんとかなるんじゃないか?と思ってしまったのです。


 そして始まった対魔王戦ですが、とりあえず私は様子見をすることに。流石にないとは思いますが、四天王戦のように一瞬で終わってしまう様子が脳裏に浮かんでしまい、攻撃をすることをためらってしまったのです。


 そしていざ魔王の攻撃を見た感想なのですが『え?これが魔王の攻撃?』でした。

 何のひねりも工夫もない、ただの力任せの魔法。

 それが魔王の主な攻撃手段でした。

 最初はたまたまそういう攻撃が続いているだけなのかと思い、しばらく様子を見ていたのですが、どうやら本当にそれだけのようでした。フェイントも駆け引きも牽制も奇襲もなく、本当に、ただ力任せに魔法を放つだけ。戦闘技術という点で評価するのであれば、お話にならないレベルです。比べること自体が間違っているのかもしれませんが、メイさんと比べると天と地ほどの差があります。だってメイさん、私よりも圧倒的に低いステータスを自身に設定して戦闘訓練をしてくれているというのに、私の攻撃は全く当たりませんし、メイさんの攻撃を私は避けたり防ぎきったりすることができません。メイさん曰く「行動を最適化しているだけ」とのことなのですが、どう考えても『だけ』で済ませることのできない難易度だと思うのですが……。正直言って、例えステータスが私の十分の一以下だったとしても、メイさんに勝てるビジョンが私には見えません。メイさんもユーノンも、勇者達ですら、私から見れば異常な戦闘能力を持っているのです。


 そこまで考えて、ふと、理解しました。なるほど、これが『普通の相手』と戦うということなのですね。

 メイさんは当然のことながら、ユーノンも私よりもステータスの低い魔人形を操って、訓練を行っていただけることが多々あり、今までは特に何とも思っていなかったのですが、よくよく考えてみれば、これは明らかに異常なことなのですよね。

 以前、一般教養の本を読んでいたときに目にした記憶がございます。基本的に、ステータスの差は絶対であると。多少であれば戦闘技術でカバーすることも可能ではありますが、ステータスに大きな差がある場合、技術で差を埋めることはほぼ不可能であると。しかし、その不可能をあっさりと可能にしてしまうのがメイさんやユーノンという、異常な戦闘能力を持った人達なのです。そんな異常な人達ばかりを相手に訓練をしていた私から見れば、確かに魔王や四天王は『普通の相手』だと言えるのでしょう。

 それはつまり、技術でステータスの差を覆すような行動を取ってこない、何とも退屈な対戦相手であるということ。この時点で、私の勝利はほぼ確定したと言えるでしょう。なぜならば、ステータスを比べてみれば、私の負ける要素が見当たりませんので。




 名前:カルナス・グレイヴマイン

 種族:魔族

 年齢:64

 レベル:133

 体力:129,109

 魔力:190,669

 筋力:316

 耐久:281

 精神:388

 抵抗:362

 敏捷:257

 器用:242

 幸運:23




 名前:ルミナ・エテ・グラディエル

 種族:人族

 年齢:16

 レベル:105

 体力:48,244

 魔力:186,218

 筋力:202

 耐久:196

 精神:478

 抵抗:419

 敏捷:311

 器用:302

 幸運:33




 これが魔王と私のステータスです。筋力と耐久は圧倒的に負けておりますが、有名な言葉を借りれば『当たらなければどうということはない』というやつです。戦闘技術はメイさんとユーノンのおかげで、圧倒的にこちらの方が勝っているようですので、万が一にも負けはないでしょう。

 さて、私のステータスがレベルの割に高いと感じるかと思います。本来、これだけのレベル差があれば、どれか一つのステータスですら勝ることのできない数値差となります。特に、高レベル帯ではその差も絶大です(ユーノンのレベルを見たあとでは、私や魔王のレベルなど高レベルには見えないとは思いますが、それでも一般的に見れば高レベルなのです)。しかし、そうならないのには理由があります。具体的に言えば、スキルの効果です。そのスキル名は『魔王ナハブの加護』。魔王となったユーノンが、任意の相手に与えることのできる加護なのだそうです。このスキルの効果は『ステータスの補正と成長率の補正』という非常に有用なものなのですが、ユーノンの加護はそれだけに留まりません。なんとこの加護というものは、与えた本人が強ければ強いほど、効果が高くなるそうなのです。当然ユーノンはものすごく強いわけで、加護を与えられた私は、ものすごい強化を受けているというわけなのです。結果、レベル差を覆すほどのステータスを与えられ、今目の前にいる魔王ですら、軽くあしらえるほどの強さを有することとなったのです。

 因みに、そのユーノンのステータスを先日見せていただいたのですが、正直言って、意味がわかりませんでした。だって……なんなのですかこのステータス?




 名前:ユノ・ナハブ

 種族:人族

 年齢:17

 レベル:455

 体力:37,341,522

 魔力:519,417,231

 筋力:7,956

 耐久:7,778

 精神:9,924

 抵抗:9,583

 敏捷:8,130

 器用:8,567

 幸運:100




 これは……確かに国が滅びますね。余裕で滅ぼせますね。数十のステータス差で『ステータスの差は絶対』などと言っているところに、数千のステータス差を持ってこられて、何かができるわけがありません。こんなステータスの人間と敵対なんてしてしまえば、絶望以外の感情は消失することでしょう。


 余談ではありますが、私と同じ数値のステータスを設定した魔人形を操り、本気のユーノンと引き分けたメイさんは、正真正銘の化物だと思います。結果としては引き分けとなりましたが、あれは明らかにメイさんの勝ちであると、私も、勇者達も、ユーノンですら認識しています。

 だって、メイさんの攻撃は百発百中。ユーノンの攻撃はカスリもしない。単純に、私と同じステータスではユーノンに有効なダメージを与えられなかったための引き分けであるため、引き分けだと思っているのはメイさん以外にはおりませんでした。なんでこれだけのステータス差があって、こういう結果になるのでしょうか?本当に意味がわかりません。


 さて、メイさんの理不尽さは考えるだけ無駄ですので、今は目の前の魔王に集中しましょうか。……とは言っても、集中するほどの相手でもないのですよね。


 結局魔王は、私の魔法一発で膝をつくこととなりました……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ