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殲滅の魔法少女  作者: A12i3e
X3章 まおうが あらわれた! コマンド?
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x3-13.『くんれんする』

 ユーノン達と王都の冒険者ギルドへ行き、そして登録もせずに帰ってきた翌日、私達はユーノンの家の訓練室に集まっていました。曰く、冒険者として登録するしないに関わらず、あの世界を旅するのならば戦闘力は必須だよね、とのこと。まあ、当然のことといえば当然のことなのですが、どうやら私は『みんなで冒険者登録』という甘言に思いの外浮かれていたらしく、そんな当然のことすら頭から抜け落ちていたようです。事実として、私は戦闘能力皆無ですしね。これでいったい、どうやって冒険者として活動するつもりだったのでしょうか……。我ながら、本当に間抜けとしか言いようがないです。


「さて、まずはミーナを鍛えるのが急務だとは思うんだけど、ミーナは自分がどんな風に戦いたいかとか、希望はあるかな?」


 確かにこの中で戦うことができないのは私だけですので、私を鍛えることが最優先になるというのには納得ですね。このまま旅をしたとしても、皆の足を引っ張ることは目に見えていますから。せっかくあの愚王との縁が切れ、自由に生きられるようになったというのに、皆に守られながらしか旅ができないような、そんなお荷物になるなんて言うのは、まっぴらごめんです。

 しかし、どんな風に戦いたいか、ですか……。今までそんなことは考えたこともありませんでしたし、そもそも、私の人生の中で戦闘に身を置くようなことがあるなど思いもしませんでしたので、自分が戦っている場面すら想像できませんね。


「いえ、特にはありません。強いて言うのであれば、私が一番強くなれる戦い方を希望します」


 なので、私の答えはこれです。私には、自分がどういう戦い方が向いているのかなんてこともわかりませんし、まず大前提として、戦い方自体がわかりません。戦うこととは無縁の生活をしていましたので、当然ではあるのですが。

 であれば、そういうことがわかっていそうな人に丸投げしてしまえば、一番良い結果が生まれるのではないでしょうか?なんてことを考えてしまったわけなのです。またもやお世話になりっぱなしで心苦しくはあるのですが、ここで遠慮しても良い結果には繋がらないでしょう。そんなことを気にするくらいならば、その分私が強くなったほうが、お互いに満足できると思うのです。

 まあ、これは相手がユーノンだからこそ、そんな風に考えることができるのですけれど。


 ユーノンであれば、どのような無茶振りにも対応してくれそうな、そんな安心感があるのですよね。

 普通に考えれば『会ったばかりの他人にどのような戦闘スタイルが向いているか』なんてことは察することなど無理でしょうし、仮に察することができたとして、それに合わせた指導ができるかどうかはまた別の話でしょう。

 しかし、ユーノンであれば、私に何が向いているのかを理解し、指導してくれると、なんの根拠もなく思ってしまうのです。そしてそれは、やはり真実でした。


「うーん、そうだねぇ……ミーナはやっぱり魔術師向きかなぁ。身体能力はあまり高くないようだから、固定砲台として鍛えるのが無難だと思うんだけど……どうかな?きぃちゃん」

「そうですね。まずはその方向で良いと思います。ただ、確かに現在の身体能力はあまり高くはありませんが、素質自体はそれなりにあるようですので、ある程度経験を積んでからそちらを鍛えるのも悪くはないかと思います」

「マジで?身体能力も鍛えられるのなら鍛えておいたほうがなにかと便利だよね。ただ、まずはやっぱり魔法の訓練かな」

「それで良いと思いますよ」


 そしてメイさんも同様に、そういったことがわかるのですね。しかも、メイさんの方が詳しくわかっているようです。流石は魔王様の保護者です。……いえ、これは『流石』と言って良いのでしょうか?どうやら、ここ最近の出来事のせいで『保護者』という肩書きを過大評価しているような気がしてなりません。メイさんが異常なのだということを心に留めておかないと……。




 私への教育方針が決まると、すぐに魔法を教えていただけることになりました。先生はメイさんです。

 ユーノン曰く「魔法のことならきぃちゃんに教えてもらうのが一番なんだよ。まあ、魔法のことじゃなくても、きぃちゃんに教えてもらうのが一番なんだけどね。なんてったって、きぃちゃんはなんでも知ってるから」とのこと。事実として、ユーノンは魔法も武術も、全てメイさんに仕込まれたそうです。挙句、ユーノンはメイさんと模擬戦を今までに何度もしているそうですが、一度も勝てたことがないそうです。なるほど『保護者』とは『魔王』よりも強いのですね。……いえ、流石に冗談ですよ?そんなことを言ってしまっては『保護者』の肩書きを持つだけの普通の人達に、風評被害だと怒られてしまいます。


 しかし、レベル四百超えの魔王様に全勝ですか……。まさかのメイさんの強さに、驚きを禁じえません。そんな人に教えてもらえることを幸運だと思えば良いのか、それとも大変そうだと思えば良いのか……。ここはやはり幸運だと思っておきましょう。ユーノンが言うには、メイさんは教えるのも優秀らしいので、強くなるためにはこれ以上ない教師なんだそうですので。その後にボソッと「訓練についていければね」という言葉を極小さな声で呟いていましたが……。そんな恐ろしいことを私に聞こえる大きさの声で呟くのはやめていただけませんかね?これから始まる魔法の訓練にワクワクドキドキしていましたけれど、今度は違う意味でドキドキし始めたのですが……。いったい、どれほどハードな訓練を課せられるのでしょうか……。




 訓練を開始してから五時間。私は未だ、簡単な魔法すら発動させることができずにいました。

 メイさんに魔力操作を教えてもらい、なんとか多少は魔力を操ることができるようになったまでは良いのですが、とても簡単だと教えていただいた術式すら、発動するまでに至っておりません。どうやら、私の魔力操作が未熟なため、上手く術式を構築できていないようなのです。メイさんが言うには、今の私の技術でも、ギリギリ術式を構築できなくはないレベルには達しているとのことなのですが、その『ギリギリ』というのは『最大限のパフォーマンスを発揮した上でのギリギリ』ということなのでしょうか?あまりにもできなさすぎて心が折れそうです。

 あまりにも魔法を発動できる気がしないので、メイさんにもっと魔力操作の訓練をしてからのほうが良いのではないのかと提案してみれば、速攻で却下されました。今のようにできるかできないかギリギリのラインの術式を構築する練習をした方が、効率よく魔力操作を習熟できるそうなのです。なるほど、きちんと理にかなった訓練法なのですね。ならば私に否やはありません。少し心は折れかけておりましたが、頑張ります。しかし、やはり『最大限のパフォーマンスを発揮した上でのギリギリ』ということだったのですね……。まあ、ユーノンのあの呟きがあったので、何となく察してはおりましたが。


「おぉー、ミーナがんばってるねー」


 私が術式の構築に苦慮していると、ゾミーがやってきました。どうやら勇者達は休憩中のようです。


「苦戦しているようだねぇ。ならばこのアタシが、魔法を使うコツというものを教えてしんぜよう!」


 現状、行き詰まっておりますので、その申し出はとてもありがたいです。勇者達は全員が魔法を使えるようですし、コツというものがあるのならば、それをきっかけに術式の構築が上手くいくかもしれません。


「魔法はね、イメージが重要なんだよ!こうね、魔法が発動したときの結果を具体的にイメージしてね、ぐわっと魔力を流すとね、魔法の威力が上がったりするんだよ!」


 なるほど、イメージですか……。確かに、術式を構築することに手一杯になってしまい、どのような結果をもたらすのか、というイメージを頭の中に描いたりはしませんでした。結果を思い描きつつ術式を構築する、というのはそれはそれで難しく思いますが、やってみる価値はありますね。……なんてことを思っていたのですが。


「ゾミー、ミーナは今真剣に訓練しているのです。嘘を教えないでください」

「えっ?」


 メイさんからはそれは嘘だという否定の言葉が。


「いやいやいや、イメージなんかで魔法の威力が上がったら、世の魔法を研究している人たちは苦労してないよ。確かにあっちの世界の小説なんかではそういう設定が多いけどさ、現実はそんな甘くないよ」

「えっ?……え?あれ?」


 ユーノンからも否定の声が上がりました。しかし、ゾミーは嘘をついたというわけではなく、本気でそう思っていたようです。メイさんとユーノンから否定されてうろたえていますからね。


「ねぇゾミー、その『魔法はイメージで』ってのは誰かにそう言われたの?」

「え、あ、うん、私達に魔法を教えてくれた王城の魔術師の人に……」

「あー、うん、理解した」


 ユーノンはゾミーに質問し、その回答から何かを察したようです。


「ねぇゾミー、勇者の称号の効果って鑑定したことある?」

「え?……うん、ステータスに大きく補正がかかるんでしょ?」

「実はそれだけじゃなくてね、鑑定結果に『望む未来を掴み取る者』って説明文があるでしょ?」

「うん、確かにそんなことが書いてあるけど……」

「それね、言葉通り」

「へっ?」

「言葉通りにね、自分の思い描いた結果を誘引する効果があるんだよね。だから、魔法を使うときに『こうイメージすれば効果が上がるはず』と信じて発動すれば、実際にそれに応じて魔法の効果が変わったりするんだよ。まあ、それほど大きな力じゃないんだけど、それでも多少なりとも影響はあるの」


 思い描いた結果を誘引する効果があるということは『こうなればいいな』と考えたことが、実現してしまうということなのでしょうか?極端な例を挙げれば、死んで欲しいと願った人が、実際に死んでしまう、というようなことですよね?まあ、ユーノンの言葉からしてそこまでの力はないようですけれど、それでもかなり有用な能力ということには間違いないでしょう。流石は勇者の称号ということでしょうか。


「恐らくね、過去に召喚した勇者がそんなことを言い出して、で、実際に勇者の魔法の威力が上がったことから、王城の魔術師たちがそれに納得しちゃったんだろうね。自分たちの魔法の威力が上がらないのはイメージが足りないからだって勝手に自己完結しちゃってさ」


 確かに、結果が出ているのならばその言葉に納得してしまうのかもしれません。実際、私も先程、ゾミーの自信満々な言葉を、何の疑いもなく信じてしまいました。そして、それで自身に結果が伴わなかったとしても、自分のイメージに問題があったのだと、自己完結してしまった可能性は大いにあります。


「ってことでね、確かに勇者であればイメージしだいで魔法の威力は多少変わるけど、それは恐らくかなり歪な術式になってる可能性があるから、勇者たちもきぃちゃんにちゃんと魔法教わったほうがいいかも」


 そんなユーノンの言葉で、勇者達も私と一緒にメイさんの訓練を受けることになりました。勇者達は私なんかよりも沢山の訓練を積んでいるはずなので、すぐにメイさんからの訓練を終えてしまうかと思ったのですが、どうやらメイさんは個々人にギリギリの課題を与えているようで、勇者達もかなり苦戦しているようです。不謹慎かもしれませんけれど、仲間が増えたようで少し嬉しいです。


 しかし、魔王よりも強く、魔法や武術に精通しており、更には個人の能力を正確に把握し、それぞれに合った課題を作成するメイさんという人物は、一体何者なのでしょうか……。

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