平穏田蓮利
「やな空気……?」
僕は最初、稔夜さんの言っていることが分からなかった。
「稔夜……やっと見つけたぜ……」
「見つけなくても良いのに~、そんなに俺のこと好きなの、蓮たん♪」
「は?俺は……」
「お前が嫌いなんだよぉぉ!!」
その男は怪力の持ち主で、ゴミ箱を片手で投げて来た。
「よっと♪」
「うわあぁ!!」
「てんめぇ……軽々しく避けやがって……」
「だって、それ避け飽きたんだもん」
「だったら、大人しく当たれよ!」
「やだやだ、当たったら痛いじゃ~ん」
僕は、一向にこの状況が読めなかった。
「あ、あの……」
「あん……?」
そして、祓賢稔夜が丁寧にその男の紹介をした。
「彼は渋谷で、ホストをしている平穏田 蓮利。「蓮たん」って呼んであげてね♪」
「ああ!?誰が「蓮たん」だ、気持ち悪ぃ……後はホストじゃねーよ!」
「え?じゃあ、何やってんのさ?」
「おま…知ってんだろ!俺の仕事!」
「え?何?♪」
「この野郎……」
「はぁ~……蓮たんは、学校の先生をやってまーす♪」
「非常勤でな……週2日ほど……」
「後は?」
「ちょっとしたBarで、働いてる……」
「後は見たから、知ってるだろうけど……」
「“馬鹿力の怪力男”だよ」
「馬鹿力は余計だろ……!!」
「は、はぁ……」
「んで、こちらは善遇神颯斗くん!青嵐学園の新入生だよ」
「へぇ……善遇神って言うのか」
「あ、はい!」
「宜しくな、颯斗」
「はい!宜しくお願いします、蓮利さん!」
「んじゃ、俺はこれで……♪」
「オイ!てめ…逃げんなぁ!」
「鬼さんこ~ちら、手の鳴る方へ~♪♪♪」
笑いながら走り去って行く稔夜さんの後を
「待てごらぁ、稔夜ぁ~!!」
と、蓮利さんが追いかけて行く。
二人は知り合い……みたいだけど、どんな関係なんだろう……?
僕は再び、寮に向かって歩き出した。