アプリノ中身
“人間が嫌い”という訳じゃないけど……たまに人を信用出来なくなるというか……つい、疑ってしまう時かある。
幾ら仲が良い“親友”でも……ね──
しかし、祓賢稔夜は何故“人間が大嫌い”なのだろうか……?
何か嫌いになる、出来事でもあったのだろうか……?
翌日の放課後も、僕は一人で下校した。
嗣良は、用事があるとかで先に帰ってしまった。
そして僕が、学校を出て帰り道を歩いていたら……
「やぁ、奇遇だね~颯斗くん♪」
あの、神出鬼没の探偵屋・祓賢稔夜──
「稔夜さん……こんにちは」
「あっれ~?どうしたの?そんな顔して」
神出鬼没らしく、いきなり現れて偶然を装うから、ビックリしたんです、とは言えない。
「いや、あの~……」
「何、何だい?颯斗くん」
「僕のこと……待ち伏せしてませんでした……?」
すると、祓賢稔夜は僕の予想とは全く違う反応を見せた。
「ぇえ!?俺、そんなことしてないよぉ!颯斗くん、酷いよぉ!!」
「……!?」
ぇえ!?稔夜さんって、そんなキャラだったの!?
「あっははは!」
僕の驚きを隠せなかった顔を見て、祓賢稔夜は爆笑した。
「いやいやいや、俺そんなタイプじゃないから(笑)」
「あ、はい……(笑)」
一瞬でも、祓賢稔夜をそんなキャラだと思ってしまったのは内緒だ。
「ああ、颯斗くん……」
「はい…?」
そして、祓賢稔夜は僕の思っていることを見透かしたようにこう言った。
「俺がキミを待ち伏せしていて、偶然を装いながらキミの前に現れた、とでも言いたげだね?」
……図星だ。
といっても、普通は人間皆、そう怪しむだろう。
「はい……そう思ってました…」
「俺は、キミに用があるんだ」
「僕に、ですか?」
「ああ、そうさ」
そして、これこそ自分の耳を疑う予想外の発言が起きた。
「颯斗くん、キミ。俺が作ったアプリのお試し版に登録か何かした?」
キミのことなら、なんでも知っているよ。とでも言うような顔で、僕の反応を楽しんでいる。
「な、なんで……稔夜さんが、そんなこと……」
「だって、俺の作ったアプリだもん。知らない、分からない方が可笑しいデショ?」
これは、マズい……
嘘は言えないし、誤魔化しも出来ない……
「………」
「やっぱりね」
「すみません……」
「いや?謝られることしてないよ?」
「いや……でも、興味本位とは言え、お試し版でも登録したのはちょっと……」
「ああ、お試し版は良いの、良いの♪」
「……へ?」
「あれは、俺の暇つぶし専用だから♪」
僕は今まで緊張していた力が、一気に抜けてしまった。
「なんだ……ビックリした……」
お試し版は、祓賢稔夜の暇つぶしの為に作られたらしく、いろんな人の情報を仕入れるのに便利なのだとか。
「颯斗くんも、気軽にメッセ送ってね~♪」
「あ、はい……」
僕が今まで、悩んで緊張していた時間と体力、返せ!──
「ああ……やな空気だな~」
「?」