阿附雷同
僕は中学生の頃、《自分》というものをあまり持たなかった。
どうしてかって?
人と違うことをするのが……怖い。
人に否定されるのが……怖い。
自分を出して、避けられるのも……怖い。
全てにおいて、僕は自分を出すのを躊躇った。
だから、僕はなるべく人に合わせるようにして自分を隠した。
しかし、自分がこんな風に自分のグループを作り上げ、率いているなんて……
今でも、信じられない。
そして、dealerの数はどんどん増える。
クラスの奴らがdealerに入っていると知って、嬉しくもあったが、それよりも僕は……
このクラスの人間をも操ることが出来るという、優越感や錯覚に陥ってしまっていた。
“dealer”は“青海七”とは違い、どのグループとの兼任……というか、他のグループとの二重入会を可能としている。
情報は日々、溢れている。
僕はその情報を見逃さないように、把握する必要がある。
もう、中学の僕とは……違う。
とは言いたいが、表立って堂々と言う自信が……僕には、まだ無い。
人と合わせることに、慣れてしまったのかも知れない。
小学校で嗣良が転校し、メールやチャットでのやり取りをしていたし、自分というものを出せていたが……
それでも僕は、自分というものを出すのが怖くなった。
だからこそ、せめてネットの時だけでも《別人》になりたかったのだ。
人に意見する勇気が、僕には無い。
人に否定されたら……
人にふいをつかれたら……
僕は強く、反論出来るのだろうか。
僕は頭が特別、ずば抜けている訳でも無い。
喧嘩が強い訳でも無い。
人より出来ることなんて……僕には無い。
だけど、僕にはネットの力がある。
ネット上なら、僕は強くなれる。
ネット《だからこそ》、なのかも知れない。
しかし、僕は決して《強い》人間では無い。
現実世界では今も尚、僕は人の意見に合わせてしまうのだから。
今はまだ、ネットの世界で“dealer”の創立者として、リーダーとして……強くなりたい。
そしていつか、現実世界でも強くなれたら…と思う。
人に合わせてばかり居ると、自分という芯の部分が見失ってしまいかねない。
自分の意見、自分の芯の部分はブレないようにしないと、人に《自分》という存在のアピールが出来なくなってしまう。
でも、未だに僕は臆病で自分を出せずに居る。
そして、今日も僕は自分に仮面を着けて、生きている──




