暗雲低迷
GWも終わり、再び学校生活が始まった。
結局、あれから祓賢稔夜に会うことは無かった。
というか、僕はあまり外出しなかったのだ。
連休だからこそ、情報集めに集中する。
最近、《青海七》の活動が活発になってきているらしい。
確かに、悪事を働かせる人間は減ったとは思うが、やり方が気に入らない。
これは明らかに……暴力、極まりない。
もっと他にも、相手を止められる術があったんじゃないのか?
どうして暴力や喧嘩で、事を終わらせようとするのか。
対等に話せば、解決する場合だってあるのに。
それをも、暴力や喧嘩で片付けるのか。
僕には、理解出来ない。
暴力や喧嘩だけでは、解決出来ないんだ。
暴力や喧嘩じゃない何かで制圧しないと……
大人しくて、目立とうとしない地味な僕が、まさかグループを作り上げたなんて知ったら……
両親は、驚くだろうか。
嗣良は、僕をどう思うだろうか。
中学の同級生たちは、僕を見る目が変わるだろうか。
高校生になった初っ端から“、祓賢稔夜”に出会った。
いや、正しくは《出会ってしまった》のだろう。
実感はそれ程無いけど、“非日常”に足を踏み込んでいるような気は、する。
じわりじわりと、本人が気付かないように。
ゆっくり、ゆっくりと自分のタイミングで。
そして、気付いたら……“非日常”の世界。
流石は“探偵屋・祓賢稔夜”だ。
実際のところ、会っては居ないが“やり取り”はしていた。
そして、僕は祓賢稔夜から情報を入手した。
《狂変乙女》という《伝説人間》が現れたと。
《狂変乙女》──
何だか、この街は“非日常”に包まれている。
正常な人間は、居ないのか……?
この街が、壊れていくのでは無いかと僕は思った。
《伝説人間》が2人。怪しげな探偵屋。
喧嘩嫌いな渋谷最強の暴君。何処か闇漂う医者。
暴力で制圧を試みる少年。両親の面影を未だに探している少女。
これだけでも、十分この街は荒れているように見える。
それに、この渋谷という1つの街だけでも爆弾たちが潜んでいるのかと思うと……
《トンデモナイジタイガ、オキルゾ》──
これから、僕は“dealer”のリーダーとして、慎重に活動をしなければならない。
そして……
祓賢稔夜に、僕が“dealer”の創立者であり、リーダーだと
気付かれてはならない──
何故ならば、僕は祓賢稔夜……あなたに、人間というものの素晴らしさを知って、また再び……
人間を信じて、生きて行って欲しいから──
僕は祓賢稔夜、あなたが人間という生き物を信じ始めた時──
心から、あなたを祝福したい。
だけど、それには時間がかなりかかりそうだ。
何だか胸騒ぎがするのは、気のせいなのだろうか。




