狂変漆黒
俺は、《狂変乙女》の前に姿を現した。
いきなりの展開でも、物怖じしないなんて。
流石は《狂変乙女》だ。
「何?あんたら、グル?」
「まさか(笑)」
こんな単細胞とグルになんか、死んでもやだね~と嫌みったらしく言うと《狂変乙女》は笑い出した。
意味が分からない。
笑うところ、あったかな?
ますます、不気味で狂っている。
「単細胞なんだ?面っ白い!」
ああ、単細胞で笑うとか相当笑うツボ、ズレているな~と思った。
そして彼女は、いきなり俺にもナイフを出して刺そうとした。
「あら、残~念♪」
「危ないじゃない。そんな物、持ち歩いちゃ」
「護身用だから、危なくないわ」
俺は「護身用なら、むやみやたらにナイフなんて危ない物、出さないデショ?」と、突っ込むと
「うるさいな、別に良いだろ」
言葉遣いが荒い上に、図星か。
近くで、彼女を見てみると……
確かに全身黒ずくめで、髪の長さはセミロング程。
右の上唇の近くには小さなほくろがあって、小柄で体型は普通かなぁ。
可愛いかと言われれば、可愛いかも知れない。
俺は、タイプじゃないけどね。
するといきなり、彼女はこう言い出した。
「みんな、みんーな狂ってしまえ♪滅茶苦茶な人生をお見舞いするわ♪」
「いきなりなんだい?新しい呪いかな?」
と、少し馬鹿にしたように言うと、彼女は
「裏切った、騙した奴らは全員、死ねば良いわ」
と一瞬にして、顔色を変えて睨むようにして言った。
そして、その睨んでいる彼女の瞳は何処までも黒く、暗かった。
“漆黒の黒”とでも、言うべきか。
「なぁ、なんでそんなこと言うんだ?」
と、単細胞馬鹿の蓮たんが突っ込んで来た。
「裏切った、騙した奴らなんて生きる価値無い」
と即答で彼女は答えた。
へぇ、そんなにも人間が嫌いなのか。
久々に人間観察で、アタリを見つけた気がした。
そして、彼女は「家に帰る」と言って足早にバイクで走り去って行った。
最後に興味深い台詞を残してくれて、有り難う。
“また、会おうね”──
そして、俺も蓮たんも各々、自分の帰る場所へと帰った。




