神出鬼没
入学式も終わり、新しいクラスでの自己紹介も、帰りのHRも終わった、放課後。
「なぁ、颯斗……」
「何?嗣良」
神妙な面持ちで、嗣良は口を開いた。
「神出鬼没の……あの男の話は知ってるか?」
僕には一体、何のことなのかサッパリ分からなかった。
嗣良は昔からやんちゃで、中学でも良く夜遊びや先生に指導されたことのある、ちょっとしたチャラい感じの男の子。
僕とは外見も性格も正反対なのに、仲良くしてくれている。
互いに信頼し合っている、“親友”──
なのかも知れない。
「僕は知らないし、聞いたこともないけど…?」
「そうか…そうだよな~!知らないよな……」
嗣良の様子や言い方で、良い話ではないのは分かる。
が、その「神出鬼没なあの男」とは、一体──
今日、嗣良とは学校を出たところで別れた。
今日は入学式やら、クラス紹介やら何やらで疲れたな~…と思いながら、帰り道を歩いていると──
「キミ、青嵐学園の生徒……?」
「え…?あ、はい……」
「……その顔だと、新入生かな?」
「は、はい…そうですけど……」
「ふぅん……」
僕は、その男を見ただけで嗣良の言っていた、“神出鬼没のあの男”だということが分かった。
確かに、怪しげで何か企んでいるかのような顔だった。
「ねぇ、キミの名前を教えてよ。俺は祓賢 稔夜。」
「ぼ、僕は……善遇神 颯斗です。」
「善遇神……へぇ~、良い名前だね。」
「あ、いえ……祓賢さんもかっこいい名前……」
「あはは、ありがとう。」
またね。と言われて、祓賢 稔夜は何処かへ去って行った。
「もうすぐしたら、キミの日常は……“非日常”になるよ──」
去り際に言った、祓賢 稔夜の言葉に
僕は、恐怖を感じた。