彼女ノ能力
シンディ・アフィルヴィンは、まだ高校生。
だから、夜遅くまでの勤務はさせていない。
俺が彼女を探偵事務所に雇わせているのには、理由がある。
彼女の才能を俺は買った。
それは、“スリ”だ──
よく、財布のスリ事件が起きてるらしいが……
俺の目的は金銭じゃない。
“情報”だ──
スパイのように上手く、自然に人間たちや組織に紛れ込み、ありとあらゆる情報をスる──
俺も出来るけど、彼女は比べ物にならない程の才能だ。
シンディの力が必要だと深海や深海の父に伝え、了解を得て働かせている。
彼女はとても優秀で、素晴らしい人材だ。
頼りにしているし、業務もそつ無くこなしてくれてくれている。
でも、《信用》はしていない。
あ、“人間として”だからね。
仕事をする上では、信用しているさ。
しかし、なかなか人間として信用することは出来ない。
人間なんて、みんな裏切る。
「裏切らないよ!」
「キミの味方だから」
中には本当に裏切らない人間も居るみたいだけど……
裏切る人間って、一体なんなの?
中途半端に首、突っ込んで来る奴もなんなの?
だから、人間は嫌いだ。
人間観察をする程、人間に興味はある。
けれども、人間を好きになることはない。
ちょっとは、好きになろうと思ったけど……
やっぱり、無理だった。
俺は、自分自身を……
そう、孤独を愛する方が安心する。
自分自身は裏切るようなこと、しないからね。
人間について、少々語り過ぎた気がする。
人間についてはまた、今度ということで。




