深海ノ考エ
僕は、平穏田蓮利の紹介で荒川総合大学病院に来ている。
そう、祓賢稔夜の唯一の親友・荒川深海に会いに来たのだ。
「やぁ、キミが善遇神颯斗くんかい?」
「あ、はじめまして!善遇神颯斗です!」
「まぁ、そんなに緊張しないで」
そして僕は早速、本題に入った。
すると、荒川深海は
「キミは、稔夜が本当に“人間嫌い”の《人間不信》に見えるかい?そう思うかい?」
僕は、正直を言うと……
祓賢稔夜は、ただ寂しいだけなんだと思う。
孤独という名の鍵を自分に掛けて、寂しくならないように練習し、感情も封印した。
孤独が……怖いんだと思う。
僕の思っている、考えていることをそのまま荒川深海に伝えると
「確かに、それは僕も思うよ」
祓賢稔夜が《人間不信》の“人間嫌い”だと言うのは、自分の精神を落ち着かせる為に言い聞かせているだけなのであって、本当の《人間不信》の“人間嫌い”ではない。
そして、荒川深海の顔は何処か寂しげだった。
「カウンセリングをたまにするんだけど、頑固として治そうとしない、昔からの癖さ」
荒川深海は祓賢稔夜に、あの頃の稔夜に戻って欲しいと思って、カウンセリングを積極的に行おうとしているが、なかなか難しいらしい。
もう日が暮れて遅くなり、荒川深海も仕事がある為に、今日はこれで帰ることにした。
「時間があったら、また話そう!」
「はい、お邪魔しました!」
荒川深海。優しそうな人だったなぁ……
でも“親友”である、荒川深海にも手に負えないなんて……
《何が》彼を、祓賢稔夜を“人間嫌い”にさせているのだろうか──
僕は益々、祓賢稔夜に興味を持った。




