彼女ノ秘密
シンディ・アフィルヴィン、彼女には知らない秘密がある。
それは、彼女が 《クローン》 であるということだ。
それは彼女以外の人間は知っているが、彼女は未だに知らない。
いや、知られてはいけない──
彼女が“また、傷付く”からだ。
彼女が声帯を奪われた理由は、この美しい魅力的な声を、悪い集団に付け狙われ、悪用される可能性がある為に切除手術したのだ。
声帯そのものも、とても美しく正常なものだったという。
そして、声帯切除手術した後、一度は回復したものの、容態が急変し帰らぬ人となった。
彼女の細胞の一部を 《クローン》 に移植し、細胞を増やす。
そして、特別な機械にセットして彼女を亡くなった、6歳に──
そして、今の17歳の彼女に至るのだ。
荒川深海の言った通り、6歳で荒川深海の父の元で暮らし始める。
何故、自分が両親の元ではなく、荒川深海の父の元で暮らしているのか理由を知りたいが、何か……聞いてはいけないことのように思えてしまい、今でも理由や本当の話を聞けずに居る。
そして、彼・深海にも何度も聞こうとしたが、急に恐怖が襲って来て、聞くことさえも出来ない。
信用は勿論しているが、その質問をしたらこの関係が、一瞬にして壊れてしまうのではないか。
そう思うと、理由を聞かずにこうして生きていることの方が幸せなのではないかと思うのだ。
不自由なく暮らせているし、人も良い。
最愛の人も傍に居る──
不満など、何処にあるのだろうかという程に大切にされ、幸せな生活を送ることが出来ている。
しかし、本当の自分を、本当の理由を知らずに生きていることは本当に幸せなことなのだろうか……?
彼女もまた、複雑に入り組んだ気持ちの中で“生きている”──