転校生
学校生活にも慣れ始めた、4月下旬。
僕のクラスに新しく、転校生がやって来た。
私立高校に転校生…?
珍しくないのか……?
と、僕は不思議に思っていたら、彼女と目が合った気がした。
青嵐学園高等学校は、中学~大学まである一貫学校で、僕たちのように高校から入学した生徒は“編入生”、中学から上がる生徒は“内部進学生”に分かれる。
その転校生は、自己紹介をした後に会釈をして用意された自分の席へと行った。
僕と同じように、大人しめで目立とうとしない女の子。
しかし、僕は他の生徒とは違う何か惹かれるものがあった。
黒髪でミディアムくらいの長さで、凛とした顔立ちで、奥床しさもある……
まさに“純粋な日本人”──
彼女の名前は……“立花 香里”
─昼食─
やはり、近寄りがたい雰囲気なのか、みんな声を掛けようとはしない。
すると嗣良が「なぁ、颯斗。お昼、誘ってみるか!」と、言い出した。
僕は驚き、迷惑じゃないか?と言ったが、誰も誘って来ないなら孤立してしまう。だから、少なくとも俺たちと一緒なら、それは防げるんじゃないのかと………
迷惑にならない程度にと言うと、嗣良は喜んで立花香里の元へ行った。
大丈夫かなぁ……嗣良、変なこと言ってないと良いけど。
暫くすると、嗣良は立花香里を連れて戻って来た。
「よ!颯斗!香里ちゃん連れて来たぜ♪」
「無理やり連れて来たんじゃないよね…?」
「あ、いえ……」
「そんなこと言ってない、言ってない!」
言い方も遠慮がちで、仕草も小さい。
“大和撫子”のような女性だ──
親の都合で転校して来たらしい。
全く知らない所に引っ越して来た為、学校の周りや、土地のことも知らないという。
最近、この街では物騒な事件が起きている為、僕は立花香里を家の近くまで送ることにした。
嗣良は、またも用事と言って先に帰ってしまった。
立花香里と僕は似たような性格だし、ちょっとした人見知りのせいで、会話が途切れ途切れで続かない……
話題をあれこれ考えていたら、立花香里の家の近くまで来ていたようだ。
「ありがとう……善遇神くん」
「あ、いや…気を付けてね!立花さん」
そして僕は、学生寮に帰った。