似て非なる海人くんたちの話3(連載小説にするか)
前回までのあらすじ。
聖女さんマジ聖女。
あやめちゃん…
>>>おしまい<<<
同一作品の短編二作品を読んでから見ましょう。
「ピッピピッピーン!!死体アンテナが反応している!!……これは白雪……?」
青い王子服を着た少年が言う。漆黒の髪、前髪は左わけ後ろ髪はひとつに縛ってある。鮮血の赤の瞳。物騒なことを言うのは白雪姫の王子さま。それが彼だ。彼の名は亜妄。別の世界では女の子である。彼は方向音痴であり、かれこれ森のなかに三時間はいる。三人のお供はヘトヘトだが、王子は息切れすらしていない。むしろ今、興奮状態だ。死体愛好家の彼は元死体である白雪を愛している。白雪もまた彼のことが大好きだった。
彼のレーダーが反応すると、深い森の植物たちが道を作る。変態を避けるように……また彼を誘うように……。
その道を辿ると邸が見える。
「今日のレーダー反応はいつもと違うんだよなぁ…もしや…新たなる美しい死体を察知したのか!?」
知るか。と心のなかで呟く従者たち。彼らは優しいのだ。王子がおかしいのだ。
邸の外でメールと聖女が子供のように遊んでいた。花がたくさん咲いている場所にある硝子の棺に聖女が座り花冠を作っている。メールも花を摘んで一緒にやっていた。
そこに出くわしたのは王子だった。
「う…」
「??」
メールはその姿を見ると聖女を守るように動き始める。聖女は王子の方を向くとニコリと微笑み、自分の作業に戻った。
「美しい…」
聖女の姿を見て思わず言葉にした。「これはこれは亜妄王子。どうなされたのです?白雪なら中に居ますよ?」
メールが皮肉っぽく言うが彼は聞いていないようだ。
「これは……また素晴らしい!!死体としても人間としてもこんなに美しい人は見たことがない…」
誘われるように一歩一歩聖女に近づいていく王子。彼女以外眼中に無いようだ。
「おい、話を聞け」
明らかにメールの怒りが限界を越えそうになっている。彼は後ろに突っ立っている従者三人を見つけた。
「お前ら、邸の中に白雪がいるから連れてこい!!今すぐにだ!!」
今までに見られなかったメールの真剣な表情と貴族のような気品に逆らえず、彼らは「御意」と彼女を探しに行った。 最初は落ち着いていた聖女も、あの日の少女に似た王子の視線が怖くなって、腕で顔を隠し始める。少女によく似た顔なのに、視線の意味が違う。彼のは、こう、下心に溢れているのだ。
「逃げないでくれないか」
「無理!!」
「もう一度微笑んではくれないだろうか」
「嫌!!」
完全に嫌われている。メールのイライラも溜まっている。しかし王子は足を止めない。聖女の目の前に立って、顔を隠す手を取り少女漫画の少年のような笑顔で彼を見つめた。
「今度一緒にお茶でもいかがかな?勿論貴方の空いている時間で構わn……クッ…」
「王子のバカァァァァァ!!」
勢いの良い跳び膝蹴りをしながら白雪が飛んできた。後ろからついてきたあやめは「お母さん!?……違った」と小さく呟いていた。
「これは、白雪!!君か!!」
「さっきのは何かしら?」
「勿論デートの誘いなわけだが…嫌われてしまってね…これだからこの時空は……グフッ…」
今度は顔面に拳で殴る。好きな人の浮気と継母には容赦無いのだ。
「美しいから罪なんだ!!」
流石にこれにはメールも頭にきた。白雪と共にアッパーを決めた。
やはりこの二人が同一人物だと信じ込める。息がピッタリだったのだ。
「何してるわけ?」
そこに現れたのはお嬢だった。片手にはハードカバーを持っている。この花畑は静かで絶好の読書場だった。お嬢は今までずっとここにいて誰にも見つからなかったのだ。
しかし王子が二人に乱入してから騒がしくなり、おちおち本も読めないくらいに煩くなっていた。
「すまなかった…」
王子が謝罪するほど怖かったらしい。
その頃の他の海人は何をしていたのだろうか。
いつ海美は帰ってくるのだろうか。
哀音が逃げていった先とはどこだろうか。
オリジナルと神は真面目にどこへ行っているのか。謎はまた他の話になりそうだ。
ああ…変態王子。
殺されている聖女。
そしていたのかお嬢。
続け!!