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第四話

「ぼく、お名前は?」

「レグルス……」

「……かっこいい名前なの」

 小さな男の子は自分のことをレグルスと名乗った。

 イザベラはカノプス国リギル都市に住み続けて○年を超える。その間、リギル都市で生きている人たちの名前と顔を、一度は見聞きしているつもりだった。しかしイザベラは、レグルスという名前を聞いたことはなかった。しかも、男の子の姿は高貴な身分であろうことが窺える恰好だった。まるでどこかの公爵、もしくは小国の王族の可能性が頭に浮かぶほど。

 まだ幼いため将来は分からないが、今の容姿は整っており、将来有望な顔つきだ。

「レグルスくん、どうしてあそこに一人でいたの?」

「分からない……。……おか、……お母さぁぁぁ~~~~ん」

「……よしよし、いい子だから泣かないの」

 イザベラたちは広間通りまで戻ってきていた。現在は昼すぎ。広間通りでは多くの露天が並んでいる。

 アクセサリー類の小物を販売する店や、午後の英気を養うための肉汁滴る魔物肉。他にも旅商人が風呂敷を広げ、異国の品を販売したりもしている。

「……そういえばヒルヒル」

「ん? なんですか?」

「……レーくん、お昼まだじゃないの?」

「あぁそうかもしれませんね。レグルスくん、お昼ごはんまだ食べてないよね?」

 レグルスは鼻を詰まらせながらも僅かに頷く。

「でしたら衛兵さんたちのところに行く前に、少しご飯を食べて行きましょうか」

「……さんせーい、なの」

 三人は近くの露店に近付く。

「ぃらっしゃ――ってうおっ! 姉ちゃん色っぺえな!」

「ふふふ、ごめんなさいね」

 露出過多なヒルダは露店の椅子に座ると同時に、店主に驚きの声をあげられる。

 ここの店は水に溶いた小麦粉を生地として、様々な具材を乗せて焼き上げる食べ物を売っている。

「……おじさん、ハッスルグリズリーの肉を使ったのをお願いなの。……三枚」

「はいよ。ちょいとお待ち、嬢ちゃん坊ちゃん」

「…………」

 店主は誰かさんの無言の視線に気付くことなく、手際の良い手さばきで具材を混ぜた生地をひっくり返していく。

 そうして待つこと数分。

「ほら出来たぞ。しっかり食って大きくなれよ、二人共」

 店主はニカッと男らしいスマイルを浮かべるが、イザベラは美味しそうな料理を食べる元気がすっかり萎んでいた。

 自分は大人だと言えばいいだけなのだが、イザベラは基本口数が少ないため、毎回言われることを訂正してまで直してほしいとは思っていない。そのため、勝手に自分一人で気分を悪くしているだけなのだ。

 ヒルダも流石に○年もイザベラといると、イザベラの考えも分かる。そのため、お世話好きなヒルダもこのことに関しては口を出さない。また、ヒルダがイザベラに変わって注意することも過去に沢山あったため、もう流石に疲れたと、今では完全に無視している。

「おいしぃー!」

「そうかそうか、うまいか! その一言が料理人としては最高だぜ! 沢山食えよ坊ちゃん。おかわりがほしいならニ枚目はサービスだ。食べるか?」

 レグルスはいつの間にか泣き止み、口の周りを汚しながら美味しそうに頬張っていた。ヒルダはまるで母親のように、レグルスの口の周りを拭いてあげる。

 レグルスが食べている料理の大きさは一人前の半分サイズだ。店主が気を利かせてサイズを小さくしたものを出してくれていた。もちろん料金も半額だ。そのため2枚目がサービスとなると、実際には一人前サイズの半額で提供されることとなる。

「うん、もっとほしぃー!」

「おっしゃ、ちょっと待ってろよ!」

 店主もレグルスの笑顔につられて口元がほころぶ。これだけおいしそうに食べてくれると、やはり料理人として冥利に尽きるだろう。

「ほんと、美味しいですわね。焼き加減ととろみ具合が絶妙ですわ」

「へへっ、だろう?」

「……うん、美味しいの」

 ゆっくり時間をかけ、各々一人前を食べ終える。

 レグルスは気分ホクホクで元気よく椅子から飛び降りる。そして親に躾けられているのか、食後のマナーもしっかりこなしていた。

「ごちそーさまでしたー! 美味しかったですっ!」

「ごちそうさまでした」

「……ごちそうさまなの」

「おう! またいつでも食べに来いよ!」

 レグルスも機嫌を良くし、スキップをしながら先に道を行く。少し前まで一人路地裏で迷子になり、辺りに泣き声をまき散らしていた子とは大違いだ。

「レグルスくん! 一人で勝手に言ってはダメですよ!」

「……おじさん、はいお金」

「毎度! 気をつけてなあ!」

 再び三人仲良く手を繋いで歩き始める。昼を少し過ぎた時間帯なため、午前中よりかは人通りが若干少ない。そのため三人で横に並んで歩いても他人に迷惑はかからなかった。

 因みにレグルスを真ん中に右手はヒルダ、左手をイザベラが手をとっている。イザベラも流石にレグルスよりかは背が高いが、それでも顔一つ分程度だ。周りの人から見ると三人は、顔の見た目はともかく、仲の良い母親と姉弟の関係に見えることだろう。

 露店に寄り道しながら歩くこと三十分。目的地である詰所までやっとのこと辿り着いた三人。昼ごはんを食べたせいか、途中レグルスを眠気が襲い、今ではヒルダの背中でお昼寝中だ。

「……すいませーん、なの」

「……んぐっ、失礼、何でしょうか」

 少し遅めの昼食だったのか、口にご飯が入ったまま急いで出てきた様子だった若い衛兵。入り口から見る限りここには一人しか居なく、恐らく他は巡回中といったところだろう。

「……ご飯中ゴメンなの。……迷子の男の子がいたから連れてきたの」

「あぁそうでしたか。えぇっと、その背中の子ですか?」

「はい。今は疲れて寝てしまっていますけど」

「了解しました。ではこちらの……こちらのソファにでも寝かせといてください。おそらく分相応かもしれませんが、あいにくこんなものしかありませんので」

 衛兵は少々薄汚れたソファを指し示す。確かにレグルスの身なりを見る限りだと、その薄汚れたソファでは似合わないだろう。

 ヒルダはレグルスを保護した経緯を衛兵に説明し、イザベラはレグルスが眠るソファの前で椅子に座り、ぼーっとしていた。

 そうすること十数分。にわかに詰所の外が騒がしくなる。

「来たかな」

 衛兵はそう呟く。どうやら巡回中の仲間に無属性魔法の《念話(テレパシー)》を使い、仲間へ迷子の連絡を既にとっていたようだ。

「アルデ! まだ迷子の子は――」

「レグルス――ッ!」

「……ん~……あ、お母さぁぁぁん!」

「……痛いの……」

「まぁまぁイザベラちゃん、ここは我慢して下さい」

 巡回から帰ってきた衛兵は一人の女性を連れていた。その女性はソファに眠るレグルスを見つけると、一緒に来た衛兵を突き飛ばし、椅子に座るイザベラを押しのけ、もう二度と離さんとすべく、レグルスに強く抱きついた。

 レグルスは無事に親との再会から再び涙を(こぼ)していた。

 レグルスの母親はイザベラとヒルダに何度も頭を下げ、再会の喜びから瞳を涙で(にじ)ませている。

 イザベラとヒルダはようやく落ち着きの時間を取り戻すことが出来、遅くなったが衣服店へ水着を買いに、再び出発するのだった。


 読んで下さりありがとうございました。

 出来れば一話ごとに作品評価や感想をしてくださると嬉しいです。次作に向けて、作者はどこがダメなのか、読者はこれを読んでどう感じたのかなど、文章作成スキルを上げるためにも評価してもらいたいと思ってます。よろしくお願いします。

 第五話は明日の十二時に投稿予定です。

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