黄泉の青龍
レィファの誘導で鳴門海峡からワープ走行で黄泉に来た戦艦大和。軍港に船を止め一路、陸地を進むのだった。赤熱の様な赤き大地とどこまでもそびえ立つ万里の塔。そこが黄泉の世界だった。パトリックが有賀艦長に耳打ちする。
「大丈夫ですかね?俺達」「ここまで来たら全てを任せるしかなかろう」「ようやく奴の狙いが掴めて来たぜ」ヒビキが二人に寄り添う。「奴はその王蛇とか言う魔物を解き放って四国を壊滅させたいんだ。イヤ、それどころじゃない!日本を、下手したら世界を王蛇の手の中に………」「まだ、そんな疑いを?全て聞こえてますよ」「………ナア、レィファ。1つ聞きたい。お前は何者なんだ?俺と隼人があんたに話をしにいった時もだ。あれは五キロ、イヤ10はあったぞ。ナゼそんな位置にいる我々が見えた?」「千里眼ですよ。修業を積めば誰だって出来ますから。無心になって大地の波動を感じる。そのぐらいですかね?」「その…………弘法大師か?それが教えたのか?その能力を」「後は個人で聞いてください。着きましたよ。この扉の奥です。くれぐれもそそうが無いように。私は警備してますから。どうぞ」
塔の中の1つの扉を指差した。
「艦長。お先に」ヒビキが足早に扉を開ける。四人は中の様子を伺う。
「カッカッカッカッ………ヒーッヒーッ………苦しい!何だね?コリヤー」ヒビキの笑い声が聞こえる。隼人は首を傾げる。「特に異変は無いようだな。行くぞ」有賀艦長が四人を促す。「待って!貴方は?会わないの?」美香が不思議そうに聞く。「だって、おかしいじゃない?その弘法大師に話をしてくれたのは貴方なんでしょ?」「確かに。普通は紹介するわな」パトリックも思いとどまりレィファを見た。「君達。立ち止まっている暇は無いはずだ。行くぞ」有賀艦長が二人の肩を叩いた。
奥ではヒビキが腹を抱えて笑っていた。「ヒビキさん。どうしたんです?弘法大師様は?」「フン。とんだ茶番だ。アイツだとよ」ヒビキが指を差す。「アイツ?」隼人は指差した先を見た。
座布団に座り扇子で扇ぎ、大きめの兜を被る猫がそこにいた。「アラッ?可愛いー。センスの良い猫ちゃんね。扇子だけに。おいで!おいで!写メ録って良い?」美香が嬉しそうに近寄った。「ひょっとして…………貴方が………違いますよね」
「ムキーッ!ナンニャ!お主ら!失礼ではニャイかね?私は………ちょっと待つニャ…………これニャ!」「エーット……………コウボウタイシさんね。初めまして。僕はソノ〜………隼人です」「カッカッカッカッ…………まだ判らんか?隼人。そいつだよ弘法大師様は!アーッおかしい!魚でもくれてやれ」「エ〜…………貴方が弘法大師!」
「フム。君らかね?戦艦ニャーマトのクルーは?」「アッ…………有賀です。大師様で?」「ウンニャ。王蛇を打ち破る勇気はあるかニャ?」「ハア。マア。どうすれば?」「イカーン!君は艦長としての気質に欠ける!そんな気持ちでは打ち破る事など出来んニャ!」「貴様!猫の分際で!ペットの分際でバカにしおって!まったく、弟子が弟子なら師匠も師匠だな」ヒビキが食ってかかる。「待て!ヒビキ!貴方、何故、私の考えが読めた?確かに迷っていた。それを何故?」「誰が弘法大師を人間だと言った?限らないではないか?動物の方がセンスや勘が働くだニャ。それからヒビキ君」「何だ!猫!」「君は疑惑を抱えている。我々がニャに者なのか自分の器で量ろうとしている。違うかニェ?隼人君、君は…………」「君は美香さんを愛している。美香さんは無関心だ。違うかニェ?」「………一瞬で見えたのか?僕らがこの部屋に入る瞬間に」隼人は弘法大師の才能に驚いた。「そうなの?隼人君。好きなの?私の事」「いずれにせよ、弘法大師様!時間が………」「無いんじゃな。君らがここに来た理由がわかるかニェ?」「王蛇を…………」「隼人君。そんな簡単な事ではニャいのだよ!簡単ニャら、とっくに王蛇の呪いなど消えている。今だ誰も達成した者がいニャい!わかるかね?」五人は黙り込んだ。「宜しい。わかったかニェ?事態が。フーム。ミルクはあるかニェ?この世のミルク一杯で取引するニャ。着いてきニャさい。ヒョット。イテテテ…………どうも歳を取るといかんニャー。毛玉が詰まって。カーッ!ペッ!」
続く