第1章4
「まぁそんなことはどうでもいいけどなんか用があって来たんでしょ?」
先生がコーヒーを入れながら手近な椅子をすすめる。
「うん…二つ程ね」
目の前に兎の付いたマグカップが置かれる。
「で?」
「まずは昨日のツクヨミだけどまたモドキだったわ」
「モドキって」
先生が苦笑いを浮かべコーヒーを飲む。
「しかもよりツクヨミに近いツクヨミモドキ」
動きといい反射神経も残虐性も ツクヨミと違わない ただ根本的に違うのは元は人間という事…
「ここ半年、物凄い勢いで増加してる。この前先生が調べてくれた薬が原因なんでしょ?」
「んー原因かどうかは、わからないけどね」その薬は<クレイジー ムーン>という名の血のような真っ赤な色をした錠剤に黒い三日月が描かれている小さな薬。話によると相当入手困難で ちまたにいる幾多のバイヤーの間でも幻と言われる程の物だという。
「でもね原因とまでは行かないけど、関わりはあると思うの」
先生がくるりと椅子の向きを変え、デスクのバソコンをかまいだす。「ちょっとこれ見て」
と、手招きをする。除き込んでみると、それは問題の薬の写真が大きくアップされ、 その横に何やら沢山文字がかいてある。
「あんたが三日前倒したツクヨミ−−というか、死んで普通の人間に戻った男がもってた物なんだけど」
「バッチリBMじゃん」
「そう。んで警察が調査機関にBMを出したのよ」
「それで何が解ったの?」
「ん?ほとんど何もわからなかったみたいね」
満面の笑みを浮かべる先生。
「意味ないじゃない」
それにつられて私は苦笑い 「薬には覚醒剤等の反応はまったくないって。だけど一つだけ不思議な事が…」
「何?」
「これは何らかの血液で出来てるんだって」
血液…
「それで私なりに色々調べてみたんだけど、あんたが倒したツクヨミ、どうやら血液型が違うらしいの」
「どういう事?」
「本当はB型なんだけど、体内に残っていた血液はBじゃない血液。それも今あるどのタイプにもあてはまらない型なの。」
そう言い切った唇が意味深な笑みを浮かべる。
「じゃ、仮にこの未確認の血液をΩ型としましょう。Ω型の血液はこの他に27件発見されてるの」