第一章3
学校に着いて、まず最初に向かったのは保健室。簡素な白い引き戸をノックしようと手を伸ばすと同時に ガラッとドアが開く。
「あ…!」
と声を上げたのはクラスメートの雨戸 陽介だ。保健室から出てくるのは別に不思議な事ではないけど、彼の様子が少しおかしい。小さく息をあらげ、顔が赤い。
「おはよ雨戸君」
とりあえず声をかける
「あっあっ…おはよ」
おどおどしながら彼が口を開く。
「どうしたの?顔赤いけど風邪?」
額に触れようと手を伸ばす
「なっなんでもない!」
彼が耳まで赤くし脱兎の如く走り去って行く。まったく意味がわからない。首をかしげながら改めてドアをノックしようと思ったけどもうドアが開いてる。そのまま入っちゃえ。
「おはよ那岐先生」
「おはよ美羽」
にっこりと聖母のような笑みをくれたのはこの学校の保健医で、私の後見人でもある人。黒い長い髪を後ろで団子にし、いかにもという薄紅色の三角フレームの眼鏡。唇は薄く、赤い紅がドキッとする程いろっぽい。
「っていうか先生今うちのクラスの子いたよね?」
「いたわよ」
「風邪?」
私は彼の赤くなった顔を思い出す。
「ううん、彼は部活の朝連で怪我したから来たのよ」
「ふーん」
じゃなんであんな挙動不信だったんだろ?
「まぁちょっと特別な治療してあげようかと思ったんだけど逃げられちゃったんだよね」
あぁやっぱり。ニヤニヤしている先生の顔を冷ややかな目でみる
「…変態」
「失礼な」
「女装好きで、男女問わず好みの子に手を出す人は変態で充分です」
私の言葉にすねたようにみせるが、この人はこれすらも自分を美しくなおかつ可愛いらしく見せる演出だ。那岐 晶 <ナギアキラ>これは先生の本名で 学校では那岐朱美という事になっている男だと言う事は私しか知らないはずだ……多分。