第一章 1
「はぁっはあっはあっ」
こと切れ、元の人間の姿に戻った事を確認し刀を鞘に納める。
「これも違った」
小さく呟いて立ち上がり、呼吸を整える 体中が痛い。
今夜は少しばかりてこずった…。
今のツクヨミモドキに切り裂かれた肩を押さえながら、ヨロヨロと立ち上がる。鉛のように重く感じる体は動かすにも痛みが伴う。あの忌ま忌ましい月め。空を見上げると、ちょうど雲間から満月が顔を出す。降ってくるような月明かりが体の傷を癒し始める。この光景を見る度普通の人間でない事を思い知らされる。私もツクヨミと何も変わらない。化け物だ。『神倶弥』の血はそうやすやすと私を死なしてくれない。これ程忌まわしい血と月なのに、私は生かされている。幾分楽になった体で家路を急ぐ。満月は私の力を最大限高めるが
『ツクヨミ』
も同じように力が強くなる。でもあれはツクヨミではなかった。歩きながら今の戦いを思いだす。真っ黒な海を横目に、気配を感じ足を止める。誰かいる?。
そっと柄に手をかけ、気配がした方に足を向ける。波の音に混じり、今にも途切れそうな、細い息遣いが聞こえる。 黒くそびえたつ廃倉庫の隅に彼は居た。 寒い 体の熱が血液と共に奪われていく。死ぬのか…?
ふと意識が覚醒する。
眩しい日差しがカーテンのすき間からこぼれ顔に当たる。生きてる?でも…ここはどこだ?辺りを見回すが見覚えのない部屋だ
「目が覚めた?」
ふいにドアか開いて一人の少女が入って来る。スラリと伸びた手足、色白だが病弱そうには見えない。そしてなにもかも見透かすような力強い瞳が俺を見て微笑んだ
「三日間眠ってたんだよ」
苦笑いを浮かべなから少女がトーストとコーヒーの乗ったトレーを置く。
「体はまだ辛い?」